今年も頂点を争う戦いで左腕が見事なピッチング。サウスポーたちの日本シリーズ快投録

パ・リーグ インサイト 藤原彬

2017.11.6(月) 00:00

日本シリーズ第4戦で横浜DeNAの濱口遥大投手が見せた8回1死までのノーヒットピッチングは、今シリーズのベストパフォーマンスとして記憶されることになるのではないだろうか。この試合で投げ合った福岡ソフトバンクの和田毅投手も、5回に2点を失うまで許したのは散発2安打のみとベテランの意地。横浜DeNAの今永昇太投手は2試合連続2ケタ奪三振と力強い投球を見せた。そこで、ここに過去20年間の日本シリーズで披露された、サウスポーたちの珠玉の快投を集めた。

※選手名の前の☆はシリーズの最高殊勲選手賞、◇は優秀選手賞で、○は勝利投手、スコアはホーム - ビジターで表記

【1997年】
◇石井一久氏(ヤクルト) 第1戦 対西武(西武ライオンズ球場) 0-1 完封○ 9回 116球 3安打 3四球 12奪三振 無失点
1995年の日本シリーズを制した後に石井一氏は左肩を手術し、8試合の登板にとどまった翌年オフにも再び同じ箇所にメスを入れた。迎えた1997年も前半戦はリハビリに費やし初登板は6月4日まで遅れたが、9月2日の横浜戦でノーヒットノーランを達成するなど防御率1.91の大活躍。同年の日本シリーズ初戦の先発マウンドに上がると、招いたピンチも代名詞の奪三振で刈り取り続けた。打者3巡目以降はパーフェクト、終わってみればシリーズ記録の1試合12奪三振の記録を樹立して、終盤8回に得た虎の子の1点を守り切っている。

【1999年】
◇工藤公康氏(福岡ダイエー) 第1戦 対中日(福岡ドーム) 3-0 完封○ 9回 116球 6安打 1四球 13奪三振 無失点
福岡ダイエーの工藤氏と中日の野口茂樹氏。パ・セ両リーグMVP左腕2人の投げ合いで幕を開けたシリーズは、野口氏が3回まで走者を出さず、中日のペースでイニングが進む。ところが6回、ともに常勝西武在籍時にチームの黄金期を支え、短期決戦の戦いを知り尽くした秋山幸二氏が先制のソロアーチを放って均衡を破る。工藤氏は走者を出しながらもシリーズ新記録となる13奪三振を記録して完封勝利。中日のキーマンに挙げられていた関川浩一氏とゴメス氏を4打数無安打に封じ込め、球団35年ぶりの日本一へ道筋をつけた。

【2000年】
◇高橋尚成氏(巨人) 第5戦 対福岡ダイエー(福岡ドーム) 0-6 完封○ 9回 123球 2安打 無四球 12奪三振 無失点
「老獪さ」と「肝っ玉」。大型補強に成功した巨人で開幕先発ローテーションの枠を勝ち取り、新人離れしたマウンドさばきを披露していた高橋氏が、日本シリーズデビュー戦でそれまでとは別の姿を見せつけた。低めからさらに低く沈むシンカーを武器に、右打者を6人(両打ちも1人)並べた福岡ダイエー打線を寄せ付けず、終わってみれば散発の2安打のみ。シーズン最多でも7奪三振だった技巧派レフティーが12個の三振を記録し、ルーキーでは初のシリーズ完封勝利、史上14人目となる無四球でのゼロ封で球史に名を残した。

【2001年】
◇石井一久氏(ヤクルト) 第1戦 対大阪近鉄(大阪ドーム) 0-7 先発○ 8回 143球 1安打 5四球 12奪三振 無失点
石井一氏が大舞台で無類の強さを発揮するイメージを確固としたゲームだったのかもしれない。シーズン中と同様に四球でランナーを出しながらだったが、速球とスライダーの切れ味が抜群で打たれたヒットは7回の単打1本だけだった。特にシーズンタイ記録となる55本塁打をマークしたローズ氏から2三振を奪い、46本塁打を放った中村紀洋氏を3打席連続三振に仕留めるなど(水口栄二選手には2四球)、211発打線をものともせず。4年ぶりの日本一を置き土産に、プロ野球史上屈指の奪三振マシーンはメジャーリーグへ挑戦する。

【2003年】
☆杉内俊哉投手(福岡ダイエー) 第2戦 対阪神(福岡ドーム) 13-0 先発○ 8回 106球 5安打 無四球 5奪三振 無失点
交流戦がなかった当時、杉内投手は決め球のカーブを交えながら、オープン戦でも対戦がなかった阪神打線のタイミングをうまく外すピッチングで手玉に取る。初回、4回、5回は先頭打者にヒットを打たれたが、いずれも無失点で切り抜けた。味方の大量援護もあって余力を残したまま8回限りで降板すると、チームが先に王手をかけられて迎えた第6戦でも7回1失点の投球で勝ち投手に。先発で2勝を挙げる活躍を見せてシリーズMVPに選出された。ちなみに、この年の日本シリーズは7試合いずれもサウスポーに白星がついている。

【2011年】
和田毅投手(福岡ソフトバンク) 第1戦 対中日(ヤフードーム) 1-2 先発 8回 119球 2安打 2四球 8奪三振 1失点
和田投手が演じた4回までのパーフェクト、6回までのノーヒッターを幻に変えたのは、いずれも中日の和田一浩氏だった。同姓の2人はともに前年のシーズンMVPに輝き、ポジションは投手と野手で別ながら、磨き上げた技術を売りとする職人だ。1点を追う5回に四球を選んでチーム初の走者となった和田氏は、7回に試合を振り出しに戻すソロホームランをレフトスタンドへ運ぶ。シーズン防御率1.51の和田投手が失った点はこれだけだったが、相手先発の左腕チェンも1失点のみ。試合は延長戦に突入し、まずは中日が先手を取る。

【2012年】
☆内海哲也投手(巨人) 第1戦 対北海道日本ハム(東京ドーム) 8-1 先発○ 7回 104球 2安打 無四球 8奪三振 無失点
両チームがシリーズ初戦のマウンドに上げたのは、ともにシーズン防御率1点台のサウスポーだった。2年連続で最多勝を獲得した巨人の内海投手と、防御率のタイトルを獲得してリーグMVPにも選ばれた北海道日本ハムの吉川光夫投手。シーズン成績こそ大差なかったが、この試合の出来は、既に投手陣のリーダー格だった前者と初のフルシーズンを送った後者の実績ほどに違う。ともに無四球も、内海投手は7回を被安打2、吉川投手は4回で被安打7、4失点と明暗。内海投手は第5戦にも8回2失点で勝利投手となり、シリーズMVPに輝いた。

圧倒的な強さでリーグを制し、日本一に返り咲いた福岡ソフトバンクにとっても「初見のサウスポー」は非常に打ちづらそうに見えた。横浜DeNAのファンが次に期待するのは、今年のドラフト1位指名選手である東克樹投手が日本シリーズで快投を演じる姿だろうか。一方の福岡ソフトバンクも和田投手以外の先発左腕が必要となってくることは言うまでもない。2018年の日本シリーズでも左腕が躍動する姿が見られるか。来年の日本一決定戦出場を夢見る権利は12球団それぞれのファンにある。

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パ・リーグ インサイト 藤原彬

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