2020&21年の野球殿堂入り候補予想 投打に多い中日選手、稲葉侍J監督も

Full-Count 広尾晃

2019.1.18(金) 20:54

侍ジャパン・稲葉監督※写真提供:Full-Count(写真:Getty Images)
侍ジャパン・稲葉監督※写真提供:Full-Count(写真:Getty Images)

打者の殿堂入り“必要条件”は2000本安打

 今年度、野球殿堂に選出されたのは、プレーヤー表彰で立浪和義氏、エキスパート表彰で権藤博氏、特別表彰で脇村春夫氏の3名だった。

 プレーヤー表彰は引退して5年経過後の選手が対象になる。全員が選考対象になるのではなく、選考委員会があらかじめ選んだ候補の中から投票を行った結果、75%以上得票を得た人が選ばれる。今回は2013年限りで引退した宮本慎也、アレックス・ラミレス、山崎武司、石井一久の各氏が、殿堂入り表彰候補として新たにノミネートされた。

 それでは2020年度、2021年度に候補としてノミネートされそうな選手を予想し、殿堂入りの可否について検討してみよう。

【打者】

〇2020年度に新規ノミネートが予想される選手()は実働。

・稲葉篤紀(1995-2014)東京ヤクルト、北海道日本ハム
2213試合7578打数2167安打261本塁打1050打点74盗塁 打率.286
首位打者1回、最多安打1回、ベストナイン5回、ゴールデングラブ5回

・中村紀洋(1992-2014)近鉄、MLB、オリックス、中日、東北楽天、横浜・横浜DeNA
2267試合7890打数2101安打404本塁打1348打点22盗塁 打率.266
本塁打王1回、打点王2回、最高出塁率1回、ベストナイン5回、ゴールデングラブ7回

・金子誠(1995-2014)北海道日本ハム
1996試合6344打数1627安打84本塁打620打点113盗塁 打率.256
新人王、ベストナイン1回、ゴールデングラブ3回

 殿堂入りに関して、2000本安打は「必要条件」になった感がある。2000本を打っただけで殿堂入り「当確」とはならないが、打っていないと厳しい。

 稲葉、中村は1年目から相当数の得票があると思われるが、75%の当選ラインに到達することはないだろう。稲葉は現在、侍ジャパン監督。前任の小久保裕紀(2041安打)は候補にエントリーされているが、今年は119票(32.1%)だった。稲葉は代表監督として東京五輪やWBCなどで好成績を残せば、殿堂入りにより近づくと思われる。

2021年度の打者は小笠原、谷繁ら有望候補が多数

〇2021年度に新規ノミネートが予想される選手

・小笠原道大(1997-2015)北海道日本ハム、巨人、中日
1992試合6828打数2120安打378本塁打1169打点63盗塁 打率.310
MVP2回、首位打者2回、本塁打王1回、打点王1回、最多安打2回、最高出塁率1回、ベストナイン7回、ゴールデングラブ6回

・谷繁元信(1989-2015)大洋・横浜、中日
3021試合8774打数2108安打229本塁打1040打点32盗塁 打率.240
ベストナイン1回、ゴールデングラブ6回

・和田一浩(1997-2015)埼玉西武、中日
1968試合6766打数2050安打319本塁打1081打点76盗塁 打率.303
MVP1回、首位打者1回、最多安打1回、最高出塁率1回、ベストナイン6回

・谷佳知(1997-2015)オリックス、巨人、オリックス
1888試合6492打数1928安打133本塁打741打点167盗塁 打率.297
最多安打1回、盗塁王1回、ベストナイン5回、ゴールデングラブ4回

・井端弘和(1998-2015)中日、巨人
1896試合6803打数1912安打56本塁打510打点149盗塁 打率.281
ベストナイン5回、ゴールデングラブ7回

・松中信彦(1997-2015)福岡ダイエー・福岡ソフトバンク
1780試合5964打数1767安打352本塁打1168打点28盗塁 打率.296
MVP2回、3冠王1回、首位打者2回、本塁打王2回、打点王3回、最多安打1回、最高出塁率3回、ベストナイン5回、ゴールデングラブ1回

・高橋由伸(1998-2015)巨人
1819試合6028打数1753安打321本塁打986打点29盗塁 打率.291
ベストナイン2回、ゴールデングラブ7回

・金城龍彦(1999-2015)横浜・横浜DeNA、巨人
1892試合5927打数1648安打104本塁打592打点40盗塁 打率.278
新人王、首位打者1回、ゴールデングラブ2回

 2021年度は殿堂入り有望選手が多くノミネートされそうだ。2000本安打とともにタイトルやMVPの有無も大きな判断材料になるが、小笠原道大はリーグをまたいで2年連続でMVPを獲得。しかも、主要タイトルの獲得数も多く、1年目での選出も有望ではないか。

 谷繁元信は主要タイトルはないが、捕手として実働27年、野村克也を抜く史上最多の3021試合出場など、驚異的な持久力だった。横浜、中日で長く正捕手を務め「優勝請負人」とも言われた。プレーイングマネージャーとしては成功しなかったが、この選手も当確ではないか。

 議論が分かれそうなのは、松中信彦だ。平成時代唯一の3冠王で、MVPも2回とタイトルでは十分だが、安打数は1767本。故障もありキャリア終盤では出場が少なかった。しかし、3冠王を獲得して殿堂入りしていないのはブーマー、バースの外国人選手だけであり、1年目は厳しくとも殿堂入りするのではないか。

 中村紀洋、小笠原道大、松中信彦は「イチロー世代」。これを考えるとまだ現役にこだわるイチローは驚異的だ。

 昨季限りで巨人の監督を退いた高橋由伸は、現役時の成績を見ると殿堂入りは厳しそうだが、今後も采配を取る可能性はあるだろう。そうなれば原辰徳のように「選手時と監督時の実績の合わせ技」という形で、エキスパート部門で殿堂入りする可能性が出てくる。高橋はむしろこれからが重要だと言えそうだ。

2021年度には「平成唯一の200勝投手」山本昌がノミネート当確

【投手】

〇2020年度に新規ノミネートが予想される選手

なし

 勝利数、セーブ数の歴代100傑に入る投手で、2014年度に引退した選手はいない。

〇2021年度に新規ノミネートが予想される選手

・山本昌(1986-2015)中日
581試合219勝165敗5セーブ0ホールド3348.2回 防御率3.45
沢村賞1回、最多勝3回、最優秀防御率1回、最多奪三振1回、ベストナイン2回

・西口文也(1995-2015)埼玉西武
436試合182勝118敗6セーブ3ホールド2527.2回 防御率3.73
MVP1回、沢村賞1回、最多勝2回、最多奪三振2回、最高勝率1回、ベストナイン2回、ゴールデングラブ3回

・川上憲伸(1998-2014)中日、MLB、中日  ※2015年に引退
275試合117勝76敗1セーブ1ホールド1731回 防御率3.24
新人王、MVP1回、沢村賞1回、最多勝2回、最多奪三振1回、ベストナイン2回、ゴールデングラブ3回

・馬原孝浩(2004-2015)福岡ダイエー・福岡ソフトバンク、オリックス
385試合23勝31敗182セーブ47ホールド480.2回 防御率2.83
最多セーブ1回

 投手は先発、中継ぎの分業が進み、積み上げ型の数字が昭和の時代ほど伸びなくなったため、投手のノミネートは少ない。投手の場合、200勝は「十分条件」で当確となるが、問題となるのは200勝未満の投手や救援投手をどう評価するかだ。

 山本昌は「平成唯一の200勝投手」であり、タイトル獲得数も多く1年目選出の可能性が高いのではないか。

 西口は182勝だが、山本昌も獲っていないMVPを獲得しており、21世紀のパ・リーグを代表する投手だった。しかし、200勝未満ではエース級の活躍をしていても、土橋正幸、足立光宏、松岡弘、桑田真澄のように殿堂入りしていない投手も多い。時代の変遷は考慮されるのだろうか。

 救援投手では、歴代2位のセーブ数を誇る高津臣吾がノミネートされて4年目の今年は225票(60.5%)だった。NPB歴代3位の佐々木主浩は4年目で殿堂入りしており、来年の行方が注目される。

 昨年はNPB最多セーブの岩瀬仁紀、中継ぎでMVPに輝いた浅尾拓也が引退した。セーブ、ホールドについても、今後は一定の判断基準を設ける必要が出てくるだろう。

 こうしてみると投打ともに、中日でプレーした選手が多いことがわかる。21世紀に入ってから中日は強い時代が長かったが、この時期の主力選手が殿堂入り資格を得る時期に達しているのだ。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

記事提供:Full-Count

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