今年も多くのルーキーが、プロの世界へ飛び込む。テレビの向こうの存在だったプロ選手と同じ舞台に上がることに、まだ実感が湧かない選手も多いかもしれない。これからは彼ら自身が「テレビの中のプロ野球選手」となるわけだが、それでも今は誰かに「憧れられる」よりも誰かに「憧れる」気持ちの方がよほど鮮明だろう。
では、彼らが野球少年と同じ心で憧れ、近づきたいと望むプロ野球選手は誰なのか? パ・リーグの2019年度新入団選手のうち支配下37選手に「パで憧れ、目標としている選手」を聞き、ランキングをつけてみた。
チームを引っ張る“主将”への憧れの声
まず第5位は、「右の長距離砲として打線の中心を打ち、チームを引っ張るような選手になりたいから」(北海道日本ハム2位指名・野村佑希選手)、「チームのリーダーで、中学時代から憧れた高校の先輩」(同5位指名・柿木蓮投手)と、同じチームの後輩から票を集めた中田翔選手だ。キャプテンとしてグラウンド内外でチームをけん引する姿が、彼らの印象に残っているようだった。
第4位は、今オフ、埼玉西武から東北楽天に移籍した打点王。オリックス1位指名・太田椋選手は「浅村栄斗選手のような魅力的なフルスイングが目標」、同7位指名・中川圭太選手は、「浅村さんのような勝負強い打者になりたい」と回答。2013年と18年に2度打点王に輝いたクラッチヒッターぶりが支持を得た。
人柄も人気 日本球界を代表するスラッガー
第3位につけたのは、福岡ソフトバンク・柳田悠岐選手だ。千葉ロッテ1位指名・藤原恭大選手は、柳田選手に憧れる理由に「トリプルスリーを達成した」ことを挙げる。「力強いスイングやフルスイングは自分の特徴でもある」ため、理想の選手像として柳田選手はうってつけだったのだろう。
他に柳田選手に投票したのは、同じ福岡ソフトバンクのルーキーだ。3位指名・野村大樹選手は「あんなに振ってどうしたらあんなに高打率を出せるのか伺ってみたい」、5位指名・水谷瞬選手は「明るい性格も憧れ。あんな選手になりたい」と目を輝かせていた。
上位2投手は同じチームのダブルエース
第2位は、「フォームで参考にしている部分もある。伸びのあるストレートや、三振を取りたいところで取れる(能力)」(埼玉西武1位指名・松本航投手)、「ストレートで勝負している限りは、僕も三振が取れるようになりたい」(オリックス4位指名・富山凌雅投手)と、特徴的な投球スタイルが尊敬の念を集めた東北楽天・則本昂大投手だ。
そして、則本投手と同じく東北楽天の岸孝之投手が、栄えある第1位に。福岡ソフトバンク4位指名・板東湧梧投手は「コントロールと美しいフォームが素晴らしい」と、岸投手の魅力を語った。
言葉はいらない? 「あなたみたいになりたいです」系
ルーキーが特定の選手を「憧れ、目標とする」理由には、プレースタイルが似ているから、母校の先輩だからといったものが目立った。ここからは、ルーキーが対象選手に「憧れる理由」を、3つの系統に大別して紹介していく。
もっとも多かったのはプレーを見て憧れた、参考にしているという「なりたい系」だった。東北楽天1位指名・辰己涼介選手は「イチロー選手」を挙げたが、その理由は至ってシンプル。「憧れない理由がないから」。
埼玉西武2位指名・渡邉勇太朗投手は、オリックス・榊原翼投手に憧れる。「浦和学院高校1年生のときの3年生で、間近で見ていた」。「先輩がプロの世界へ行って活躍している姿を見て、こういう選手になりたいと思った」そうだ。
福岡ソフトバンク1位指名・甲斐野央投手が「なりたい」のは、同じチームの千賀滉大投手。「自分のモチベーションが下がっていたり、フォームが乱れていたりしたときには動画で参考にさせていただいていた」と言う。これから身近な先輩となり、動画ではなく本人からアドバイスをもらうチャンスもあるが、「多分声はかけられない」と苦笑いしていた。
年季が入った人も…「かっこいいから好きです」系
「ライク系」は、対象の選手への好意の表明、人柄への言及があるものだ。東北楽天3位指名・引地秀一郎投手は、チームメイトの則本投手に憧れ、「闘志を前面に出す姿がカッコイイ。それと釣り好き」と語る。引地投手自身も釣り好きで、新入団会見後には「(一緒に釣りに)行きたい」とアピールしていた。
埼玉西武3位・山野辺翔選手は、ひとつ年上の東北楽天・茂木栄五郎選手に「小・中・高と同じチームで、ずっと憧れていた」と明かす。その相手と「同じ舞台に立てることをうれしく思う反面、早く追いつけるようにしたい」と力を込めた。福岡ソフトバンク7位指名・奥村政稔投手は、杉内俊哉氏に強く憧れる。「何度も一緒に練習させてもらって、かっこいいなと」、「男としてかっこいい」と、超一流投手の人間性に対する称賛を惜しまない。
こうして思いは受け継がれていく 「師匠・先輩でした」系
出身校などの先輩の名前を挙げるルーキーも多かった。オリックス6位指名・左澤優投手は、JX-ENEOSの先輩にあたる福岡ソフトバンク・嘉弥真新也投手に対し、「緊迫した場面をいつも任せられる姿を尊敬している」と言う。
北海道日本ハム3位指名・生田目翼投手は、北海道日本ハムを退団し、その後日本通運で投手兼任コーチを務める武田久投手を慕う。「日本通運時代の先輩であり恩師でもある。何年もの間守護神としてファイターズを支え続けた方であり、プロ野球界に長くいらっしゃった。自分も武田さんのようにチームに信頼され、長く野球をやっていきたい」。直接指導した逸材が、その古巣に指名されたことには何か深い縁を感じずにはいられない。
特定の選手を挙げており、「なりたい系」の要素も含むものの、エピソードが特異だったのは福岡ソフトバンク6位指名・泉圭輔投手だ。「ずっと参考にさせてもらっていたのは、福岡ソフトバンクの武田翔太投手」で、周囲から「フォームが似ていると言われて」気にかけるようになったと言う。
「僕が(2014年の)日本シリーズを見に行ったときにリリーフで投げられていた。あの舞台で堂々と投げられるのはすごい」。これからチームメイトになるが、もし話す機会があれば「1から教えてください(と言いに行く)。持っている技術を全部盗めたら」と意気込んだ。
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