プロ野球選手が10年生き残れる確率は? 在籍年数の変遷で検証

Full-Count

2019.1.13(日) 11:13

1993年~1999年のドラフト指名選手のプロ年数毎の在籍確率※写真提供:Full-Count
1993年~1999年のドラフト指名選手のプロ年数毎の在籍確率※写真提供:Full-Count

10年以上プロ野球チームに選手として在籍できる確率は…

 2018年ドラフト会議で104名(育成21名を含む)が指名され全員が入団、今季よりプロ野球選手としてのキャリアをスタートさせます。指名順位が高かろうと低かろうと入団してしまえば横一線でのスタートとは言いますが、指名順位によってプロ野球選手として生き残れる年数に差が生じるものなのでしょうか。また、ポジションごとの差や、高校からの入団、大学・社会人からの入団での差はあるものなのでしょうか。そこで、1993年から2008年のドラフト会議で指名された選手がどのくらいプロ野球選手としてNPB、MLBに在籍していたかの年数を分析してみました。

 まずは1993年から1999年のドラフト会議で指名され入団した選手がどれだけの年数以上、在籍していたかを紹介します。

 1993年のドラフトで入団した選手が10年以上在籍した確率は59.4%であり、ほぼ6割の選手が10年以上プロ野球選手であり続けたことがわかります。そして15年以上の在籍が3割、20年以上の選手も1割弱いたことがわかります。なお1993年ドラフトで最後に指名されたのが千葉ロッテ7位指名の福浦和也。福浦は26年目となる2019年シーズンもプロ野球選手として過ごします。

 なお1994年から1996年のドラフト入団選手はすべて引退しましたが、1997年のドラフト入団選手では福岡ソフトバンクを戦力外となった五十嵐亮太の獲得を古巣東京ヤクルトが発表。今季も現役を続けることになりました。1998年ドラフト入団では松坂大輔、福留孝介、上原浩治、藤川球児、實松一成の5人が今季も選手として契約を結んでいます。また、1998年ドラフト入団の選手の10年以上在籍確率は50%、20年以上も9.5%と近年では高い現役続行確率となっています。その印象もあってか「選手の寿命は年々伸びている」と思われがちなのですが、1999年のドラフト入団選手を見てみると、10年以上在籍確率が4割と6年前に比べて大きく減少しています。両年のデータの代表値を比較しますと、

○1993年
平均在籍年数 11.2年 中央値 11年 最頻値 11年

○1999年
平均在籍年数 9.0年 中央値 8.5年 最頻値 7年

 と平均在籍年数が2年ほど短くなっています。

 また最頻値(最も度数が大きい在籍年数)の推移を見てみると、

1993年 11年
1994年 8年
1995年 5年
1996年 9年
1997年 8年
1998年 4年
1999年 7年

 となっており、年による振り幅はありますが、いわゆる「壁」と呼ばれる年数が徐々に短くなっている様子が伺えます。特に10年以上在籍確率が高かった1998年ですが、4年でNPBを去る選手が最も多かったという側面もありました。

2000年~2008年のドラフト指名選手のプロ年数毎の在籍確率※写真提供:Full-Count
2000年~2008年のドラフト指名選手のプロ年数毎の在籍確率※写真提供:Full-Count

2000年代に入り、選手の在籍年数は短くなった?

 では2000年から2008年のドラフト入団選手の状況はどうなっているでしょうか。

 年によって幅はありまして、松田宣浩、T-岡田、銀次、平田良介らが指名を受けた2005年ドラフト入団選手の10年以上在籍確率は50%ですが、昨季FA権を取得し移籍を果たした浅村栄斗、西勇輝などが指名を受けた2008年ドラフトでは3分の1程度しか10年以上在籍できていません。

オレンジ線は1993〜1999年ドラフト指名選手の年数毎の在籍確率、青線は2000〜2008年ドラフト指名選手の年数毎の在籍確率※写真提供:Full-Count
オレンジ線は1993〜1999年ドラフト指名選手の年数毎の在籍確率、青線は2000〜2008年ドラフト指名選手の年数毎の在籍確率※写真提供:Full-Count

 99年以前と2000年以降を比較しますと、

○1993~1999年
平均在籍年数 10.0年 中央値 9年 最頻値 5年 
10年以上在籍確率48.3%

○2000~2008年
平均在籍年数 8.6年 中央値 8年 最頻値 4年
10年以上在籍確率41.1%

 このデータより、平均在籍年数、中央値、最頻値ともに1年短くなっています。90年代は5年目がプロ野球選手としての「壁」だったのが、2000年代では4年目が「壁」になったと言えるでしょう。10年以上在籍している確率も48%から41%に減少しています。

 これには様々な要因が考えられます。

○1999年より社会人野球チームに元プロ野球選手の入団が認められるようになった
○2004年に「プロ野球再編問題」が発生
○選手会側のセカンドキャリアに対する意識改革
○海外リーグや独立リーグへ

 現在のプロ野球運営においては、新陳代謝を活性化することでチーム力を向上させようという機運が高まっています。合同のトライアウトに注目が集まっているのもその一環でしょう。また選手のセカンドキャリア支援に力を入れる球団も現れてきています。そのことで、選手としての在籍年数が短くなってきているとも考えられます。

(鳥越規央 / Norio Torigoe)

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせなどエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。
セイバーメトリクストークイベント「セイバー語リクスナイト2.5」2019年1月29日開催
文化放送「ライオンズナイター(Lプロ)」出演
千葉ロッテマリーンズ「データで楽しむ野球観戦」イベント開催中

記事提供:Full-Count

記事提供:

Full-Count

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE