歴史を変えた鷹と鷲。2017年クライマックスシリーズの熱戦を振り返る

パ・リーグ インサイト 馬塲呉葉

2017.10.23(月) 00:00

公式戦の全日程が終了し、10月14日から始まった「2017 ローソンチケット クライマックスシリーズ パ」。リーグ2位の埼玉西武と3位の楽天がファーストステージで激突し、その勝者がファイナルステージでリーグ覇者の福岡ソフトバンクに挑む。最終的には22日に福岡ソフトバンクがクライマックスシリーズ優勝を決めたが、Aクラス同士の短期決戦であるため、いずれも見応えのある試合が展開された。そこでここでは、今年のクライマックスシリーズにおける熱い戦いを振り返りたい。

【10月14日ファーストステージ第1戦】
・埼玉西武 10対0 楽天 菊池投手-則本投手
パ・リーグクライマックスシリーズ初戦。初回、埼玉西武が浅村選手の2ランで先制し、3回裏には炭谷選手の2点適時打などで一挙5得点を挙げる。6回裏にも中村選手の3ランで2桁得点に乗せ、「炎獅子」を纏った埼玉西武打線が容赦なく猛打を振るった。投げては先発・菊池投手が相性の良い楽天打線を完璧に封じ込めて、9三振を奪う完封勝利。敗れた楽天は、エース・則本投手が4回7失点と大乱調。リーグ2位の埼玉西武が投打で楽天を圧倒し、これ以上ないスタートを切った。

【10月15日ファーストステージ第2戦】
埼玉西武 1対4 楽天 十亀投手-岸投手
埼玉西武が勝てばその時点でファーストステージ突破が決まる第2戦。後がない楽天は、先発マウンドに岸投手を送る。初回、茂木選手が初球先頭打者本塁打で楽天打線を勢い付かせると、2回表には嶋選手が後ろに倒れ込みながら絶妙なスクイズを決め、3塁走者の岡島選手がすかさず本塁に滑り込む。枡田選手と茂木選手の適時打でも追加点を挙げ、初戦とは打って変わって、終始試合の流れを掌握した楽天が勝利。岸投手は7回途中無失点の快投で古巣を完全にねじ伏せ、ファーストステージ突破に向けて望みをつないだ。

【10月16日ファーストステージ第3戦】
埼玉西武 2対5 楽天 野上投手-美馬投手
この試合の勝者がファーストステージを突破する第3戦。初回、埼玉西武の先発・野上投手は制球が定まらず、その隙を突いて楽天が先制する。暴投でも追加点が転がり込んでくるが、5回裏、炭谷選手の犠飛で埼玉西武が1点差に迫った。しかしなおも続く2死3塁のピンチは楽天のルーキー・高梨投手が抑え、その後は両チームの救援陣が互いに譲らず。1点差のまま迎えた8回表、ウィーラー選手と枡田選手が埼玉西武の5番手・シュリッター投手を捉え、試合を決める追撃弾を放つ。両チーム12人の投手をつぎ込む総力戦は楽天に軍配。リーグ3位から下剋上を果たし、敵地でファーストステージ突破を決めた。

【10月18日ファイナルステージ第1戦】
福岡ソフトバンク 2対3 楽天 東浜投手-塩見投手
ファーストステージ最終戦から1日置いて幕を開けたファイナルステージ初戦。アドバンテージがあるため福岡ソフトバンクが圧倒的有利とみなされていたが、初回、またもや茂木選手が先頭打者本塁打をかっ飛ばし、一気に試合の流れを引き寄せる。2回表にはアマダー選手、4回表にはウィーラー選手がそれぞれソロ。福岡ソフトバンクも6回裏に今宮選手、9回裏に内川選手のソロで反撃するものの、一発攻勢でわずかに上回った楽天が勝利。楽天の先発・塩見投手も好投し、福岡ソフトバンク打線に付け入る隙を与えず。1点のリードは楽天が誇る鉄壁の「勝利の方程式」が守り切り、下馬評を覆して初戦をものにした。

【10月19日ファイナルステージ第2戦】
福岡ソフトバンク 1対2 楽天 千賀投手-辛島投手
福岡ソフトバンクがアドバンテージで1勝、楽天が初戦を制して1勝という状況で迎えた第2戦。初回、まさかの敵失で楽天が先制に成功する。4回裏、内川選手の同点ソロで福岡ソフトバンクが試合を振り出しに戻したが、7回表、楽天打線が執念を見せた。先頭の聖澤選手が気迫のヘッドスライディングで内野安打をもぎ取ると、キャプテン・嶋選手が左中間を割る決勝打。昨夜に引き続き、楽天が僅差のゲームを制する。先発の辛島投手も6回途中1失点と好投し、2番手の宋投手はピンチの場面で内川選手、松田選手を連続三振。白熱の投手戦は楽天に軍配が上がったが、レベルの高い締まった試合展開となった。

【10月20日ファイナルステージ第3戦】
福岡ソフトバンク 7対5 楽天 和田投手-則本投手
楽天が勝利すれば日本シリーズ進出に王手をかける第3戦。先発マウンドには和田投手と則本投手が上がったが、試合は大方の予想を覆して打撃戦となった。初回、3連打で楽天が先制。その裏、松田選手が勝ち越し打を放つが、直後の2回表に藤田選手が逆転打。3回裏、内川選手が3試合連続弾となる3ランで福岡ソフトバンクがリードを奪い返すも、5回表にアマダー選手が試合を振り出しに戻す同点2ラン。点の取り合いとなったシーソーゲームは5対5で迎えた8回裏、中村晃選手が値千金の決勝2ランで決めた。

【10月21日ファイナルステージ第4戦】
福岡ソフトバンク 4対3 楽天 バンデンハーク投手-岸投手
両チーム、2勝2敗の五分で迎えた第4戦。長谷川勇選手の一打とデスパイネ選手の一発で、4試合目にして初めて福岡ソフトバンクが先制する。しかし4回表、銀次選手の一振りとパスボールで楽天が同点に追い付き、5回表にウィーラー選手が勝ち越し打を放つ。楽天の1点リードで迎えた6回裏、マウンドには宋投手が上がるが、第2戦で宋投手の直球の前に三振に倒れた内川選手が、4試合連続の同点弾。続く中村晃選手も2日連続となる勝ち越し弾を叩き込んで福岡ソフトバンクがリードを奪い、その後は盤石の継投で楽天の反撃を許さず。リーグ覇者の意地を見せる2連勝で、ファイナルステージ突破に王手をかけた。

【10月22日ファイナルステージ第5戦】
福岡ソフトバンク 7対0 楽天 武田投手-美馬投手
福岡ソフトバンクが勝利すれば日本シリーズ進出が決まる第5戦。後がない楽天は、埼玉西武とのファーストステージ最終戦で好投した美馬投手に、先発マウンドを託す。しかし、これまでとは打って変わって、福岡ソフトバンクの一方的な試合展開となった。福岡ソフトバンクは故障から復帰した柳田選手に1番を任せたが、その大胆な起用が大当たり。柳田選手は初回から内野安打で出塁すると、暴投ですかさず3塁を陥れる。その巧みな走塁が生き、先制の犠飛に成功。その後は松田選手の2ランや高谷選手のだめ押し打で計7得点を奪い、福岡ソフトバンクが投打で楽天を圧倒。連敗からの日本シリーズ進出を決めた。

以上、今年のクライマックスシリーズにおける熱戦を振り返った。これまでパ・リーグでは、クライマックスシリーズファーストステージ、ファイナルステージのいずれも、初戦に敗退したチームが次のシリーズに進出した例はない。しかし今回のクライマックスシリーズでは、ファーストステージの楽天も、ファイナルステージの福岡ソフトバンクも、その「突破率0」のデータを覆した。歴史を変えた今シリーズだったと言うことができるだろう。

22日の試合後インタビューで、福岡ソフトバンクの工藤監督は楽天の勝負強さを讃えた。レギュラーシーズンとは異なる短期決戦であるだけに、試合の「流れ」というものの怖さ、執念のワンプレーがもたらすものの大きさを、改めて思い知らされるシリーズだったのではないだろうか。敗れた2チームも、ルーキーや若手の台頭がめざましく、この得難い体験は来季の糧になるはずだ。福岡ソフトバンクは、28日からセ・リーグのクライマックスシリーズ覇者に挑む。パ・リーグ王者の誇りを胸に、熱く勇ましく戦ってきてほしい。

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パ・リーグ インサイト 馬塲呉葉

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