北海道日本ハムのスピードスターは「努力の天才」。2年前の悔しさを乗り越えつかんだ2度目の盗塁王

パ・リーグ インサイト

2017.10.12(木) 00:00

北海道日本ハムの不動のリードオフマン・西川選手が最多盗塁のタイトルを獲得した。2014年以来2度目の獲得となるが、走っては球界最速の三塁到達タイムを誇り、打ってはミスター・三塁打、守ってはファインプレーを連発と、走・攻・守の全てで存在感を発揮し、レギュラーとして奮闘した。しかし、一見華やかに見えるその軌跡を振り返るとき、ある悔しいシーズンのことを思い出さないわけにはいかない。

西川選手は智弁和歌山高校時代、度重なる怪我に苦しめながらも大舞台で光るものを見せ、2010年のドラフト2位で北海道日本ハムに指名された。守備の不安定さや三振の多さなど課題はありながらも順調に出場試合数を増やし、2014年、自身初の盗塁王を獲得する。

しかし、金子誠氏の背番号「8」を継承し、更なる飛躍を遂げることを期待された2015年。攻守に精彩を欠き、2年連続の盗塁王目前で登録を抹消される。この決断を下した栗山監督は「このままじゃ遥輝のためにならない。盗塁王を潰されるくらいの悔しさがないと大きく変わらないかもしれない」と、西川選手のポテンシャルの高さを信じ、その将来を見据えているからこその苦渋の選択だったことをのちに明かしている。

そして、自らの要望で糸井選手(現・阪神)の背番号「7」を背負った昨季。西川選手は前年の苦い経験を糧に大躍進を遂げる。初の大台突破となる打率.314をマークしたほか、安打数、盗塁数などでチームトップの成績を収め、チームの4年ぶりのリーグ優勝、10年ぶりの日本一の立役者となった。

今季はシーズン終盤に怪我で欠場を余儀なくされたものの、チームトップとなる138試合に出場。リードオフマンとして、離脱者が続出するチームを支えた。埼玉西武の源田選手と熾烈な盗塁王争いを繰り広げ、最終的に39盗塁で3年ぶり2度目のタイトルに輝いたが、盗塁死はわずか5回。盗塁成功率は、最近15年間で同タイトルを獲得した選手でトップとなる88.6パーセントを叩き出した。

それでも西川選手は、「個人の記録として、シーズン前から獲れればいいなと思ってやってきました。失敗数も少なくいけましたけど、もうちょっと頑張れたかな、とも思う。盗塁数に順位が比例しなかったことが悔しいところです」と語り、昨季の栄光から一転、苦しんだチームのレギュラーとして、強い責任感を見せた。

西川選手の能力を表現するとき、多くの人は「天才」という言葉を使う。端正な出で立ちも華やかなプレーも、その印象を補強している。しかし、おそらく多くの野球ファンの記憶に新しい、昨季の日本シリーズにおけるサヨナラ満塁弾。あの劇的な一発の後、栗山監督は涙ながらに、ここに至るまでの西川選手の努力を讃えた。2年前の悔しいシーズンを糧にして、今季タイトルを奪還した「天才」の姿は、そのたゆまぬ努力によってこそ支えられている。

今シーズン、なかなか調子を上げられなかった北海道日本ハムは、終盤戦で積極的に若手を起用した。苦しんだ2年前は若手だった西川選手は、もう主力として、グラウンド内外でチームを率いるべき存在になっている。来季は、リーグ優勝奪還に燃えるチームだけでなく、苦難を乗り越え、常に進化を追い求める「努力の天才」西川選手の活躍からも目が離せない。

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