今季もその“パワー”で打線を引っ張ったロッテ・ポランコ
ベースボールキング
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2024.12.29(日) 17:00
ロッテ・ポランコ (C)Kyodo News
ロッテのグレゴリー・ポランコは2年連続本塁打王とはならなかったが、今季もチームトップの23本のアーチを描き、その“パワー”でチームに大きく貢献した。今季に向けて「今回のオフシーズンは変わったことはやらなかったです。いつも通りセンター方向に強い打球を打つとか、あとは体のコンディションを集中してトレーニングしていました。オープン戦はタイミング、ピッチャーの投球を見たりして練習していますね」と、これまで取り組んできたを継続。
シーズン開幕前に本塁打について「将来のことは言えることではないですが」としながらも、「体の準備、できるだけ健康でいってホームランが出るような体を作っている。それを自分も期待しています」と、今季もマリーンズファンに喜んでもらうため、存分にその“パワー”を発揮していく考えを示した。
昨季は4月終了時点で打率.132、1本塁打、5打点と低調なスタートだったが、今年は4月7日のオリックス戦、4-2の4回一死三塁の第3打席、「初球いいチェンジアップがきたけど、2球目しっかりまっすぐに反応することが出来た!タイムリーになってよかったわ!」と、オリックス2番手・井口和朋が1ストライクから投じた2球目のストレートをライトフェンス直撃の適時打。これがポランコにとって嬉しい今季初打点となった。
4月12日の楽天戦で「芯で打つことだけを考えて打ちにいったで!ホームランという結果になってよかったわ!」と今季初本塁打。4月16日の西武戦では1-3の7回二死二塁の第4打席、「ツーストライクから追い込まれて3つ真っすぐ、1つスライダーが来ていたので、ここはチェンジアップが来るカウントだなと思ってそれを狙っていったで!上手くコンタクトできたし、良い打球が飛んでくれたわ!パワー」と、本田圭佑が2ボール2ストライクから投じた5球目のチェンジアップを値千金の同点2ラン。ベンチに戻って、7回表に逆転3ランを浴びた西村天裕とハグ。
この時のことを西村は「ありがとうと、自分が打たれた点を取り返してくれたので、ありがとうと言いましたね」と振り返った。
ポランコは昨季4月終了時点で1本塁打だったが、今季は4月終了時点で5本塁打。4月16日の西武戦終了時点で打率.304をマークするなど、4月終了時点で打率も.258と昨季よりも1割以上高いアベレージを残した。
ポランコは開幕から本塁打と打率を残せた要因について「しっかりと毎日練習していることと、打撃コーチが助けてくれることが好調を続けている要因の1つかなと思います」と明かし、「もちろん体がしっかり鍛えられていれば、調整していれば力もついてきますし、力がついていくということは自分の自信にも繋がるので、ホームランを打つのは簡単じゃないので、しっかり体から整えて、ここまで調整してきました」と話した。
◆ 試合前練習で逆方向を意識した打撃練習
5月は29日のヤクルト戦で、2-3の9回一死一、三塁で岩下の代打で登場し、石山泰稚が1ボールから投じた2球目のストレートをライト前に値千金の同点適時打を放つと、続く5月30日のヤクルト戦でも2-3の9回一死満塁の場面で代打で登場して「とにかく余計なことは何も考えずにアグレッシブにいくことだけを考えていました。打てる球だけを狙って全集中で打ちにいきました。いい形でタイムリーになってくれてよかったわ!」とライト前に2試合連続となる同点の適時打。
5月15日のオリックス戦で第6号本塁打を放ったのを最後に1ヶ月本塁打が出なかった時期もあったが、6月16日の中日戦で「インコース真っすぐ狙ってたから思い切って行けたわ!パワー」と1ヶ月ぶりの第7号ソロを放つと、6月26日の楽天戦では1試合に2ホーマー。
6月最後の試合となった30日のオリックス戦、6-0の8回無死走者なしの第5打席、「下から投げてくる投手なので、簡単ではないけど、いい当たりをしようと思って振ったらホームランになってくれたわ!」と、村西良太が1ボール2ストライクから投じた118キロのチェンジアップをマリーンズファンの待つ右中間スタンドへと放り込んだ。
この本塁打がポランコにとって、「まずは体が元気でシーズン通して試合が出来ていること神様に感謝しています!後はとにかく練習、努力の積み重ねやで!今シーズンも前半戦だけで10本は目標にしていたから打てて良かったわ!パワー」と、巨人時代から含めて3年連続二桁本塁打となった。
昨季は6月終了時点で8本塁打だったが、今季は昨季を上回る10本塁打。ポランコは6月、4本塁打をマークした。
打撃の状態について「少しずつ上がってきている。交流戦最後の1週間から少しずつ良い結果、良い形で打席に入っている。そのまま行けばいいと思います」と話したように、交流戦最終週となった6月11日のDeNA戦から30日のオリックス戦にかけて、12試合に出場して打率.316(38-12)、4本塁打、9打点。
試合前の打撃練習を見ていると、ティー打撃では福浦和也コーチ(来季から一、二軍統括打撃コーディネーター)からマンツーマンで打撃指導を受けていることが多かった。
「福浦さんだけでなく、村田さんともよく3人で話をしながら、自分は(体が)開きやすいので、体が開かないようにもっと足を使って、逆方向に打つようなスイングをしようという話でそれを福浦さんを含めて、村田さんとも練習しています」。
6月26日の楽天戦、第1打席にライトへ本塁打を放ち迎えた2-0の3回無死一塁の第2打席、岸孝之が2ボール2ストライクから投じた5球目の外角のストレートを「ストレートに対してしっかりイメージが出来ていたし、狙っていた球に上手くコンタクトすることが出来たわ!パワー!」と、逆方向への一発。この本塁打こそ「逆方向への練習をやり出して、その結果で楽天戦のホームランに繋がったと思います」と、練習で取り組んできた成果を発揮する一発となった。
「今の練習を続けてハードワークをして、ルーティンを守って、結果が出続けられるような練習を続けたいと思いますし、それができるとチームのためになるので、それをやっていきたい」とポランコが得意とする夏に突入した。
◆ 得意の夏
7月31日の西武戦、初回の第1打席にマリーンズファンの待つ右中間スタンドへ先制の第14号ソロを放つと、3回の第2打席もライトへ第15号ソロ。勢いの止まらないポランコは5-2の7回一死走者なしの第4打席、「アウトコースを逆方向に打つイメージで打席に入って、しっかりそのまま打つことができたわ」とレフトラグーン席に飛び込む第16号ソロ。今季初の1試合3本塁打。8月1日の西武戦の試合前練習では、「レフトのホームラン大好き!」とニッコリ。
逆方向の本塁打が打っている時は状態が良いように見える。
「状態が上がると、スイングが良くなると反対方向にもホームランが出る。その良い時だから反対方向にホームランも打てるし、それをバロメーターとして反対方向打てる時は状態が良いんじゃないかなと思って良いと思います」。
福浦コーチは、シーズン中ポランコの逆方向の本塁打に「しっかり閉じて自分のポイントで打てば反対方向にも打てるし、変化球も我慢できる」と評価した一方で、「体が開くとミスショットも多くなるし、打球も飛ばない」と課題も口にした。
8月17日のソフトバンク戦では、2-2の8回二死満塁の第4打席、藤井皓哉が1ストライクから投じた2球目のストレートをセンターオーバーの決勝の3点適時二塁打。
ポランコは7月に6本塁打、8月も3本塁打と7・8月の2ヶ月で9本塁打。「夏が来ると暖かくなって体が動くようになる。そういうのが理由だと思います」。夏に状態が上がるように自主トレから逆算して調整しているのだろうかーー。
「夏に合わせて準備をしているわけではないんですけど、最初は寒くて寒さの中で試合をするのは難しい」。
ポランコは8月に月間18打点を挙げるなど、今季より打点は少なかったが、ソトに次ぐチーム2位の60打点をマーク。
「その時にチームの勝利に繋がるバッティングをどうしたらいいかということだけを考えていています。そこは形はなんでもいいので必死にホームまで返せるようにだけを考えています」。
シーズン終盤の取材で、調子を上げるために「今取り組んでいることは、試合中は大胆に振っているので、それをするのではなくてストライクゾーンの甘いところでスイングすることを考えています」と教えてくれた。
◆ データ分析
打撃練習だけでなく、データで対戦相手の分析なども行っているのだろうかーー。
「データも見ていて、自分に対してどう攻められているかアナリストの方と一緒に見てやっています。そこは大事にしています」。
昨季は左投手の打率が.198(126-25)だったが、今季は左投手に対して打率.278(126-35)と数字を上げた。左投手に対して成績を残したのも、データ分析が関係しているのだろうかーー。
「データもそうですけど、左ピッチャーに関しては福浦さん、村田さんと一緒に取り組んでいることがあって、それがうまくできているかなと思います」。
福浦コーチ、村田修一コーチ(来季はDeNAのコーチ)と一緒に取り組んでいることというのは、春先取材した時に話していた「自分は(体が)開きやすいので、体が開かないようにもっと足を使って、逆方向に打つようなスイングをしようという話でそれを福浦さんを含めて、村田さんとも練習しています」だろうかーー。
「足を上手く使うことと、甘いところをきたボールをいい当たりをすることです」。
今季も何度もバットでチームの勝利を呼び込む活躍を見せた。日本人の若手大砲候補たちが苦しんだ中で、ポランコの存在は非常に大きかった。
取材・文=岩下雄太