【ソフトバンク】小久保裕紀監督が貫いた山川への信念 「王イズム」継承で就任1年目V

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2024.9.24(火) 05:00

4年ぶり22度目のリーグ制覇を決め、胴上げされる小久保監督(カメラ・豊田 秀一)

◆パ・リーグ オリックス4―9ソフトバンク(23日・京セラドーム大阪)

 ソフトバンクが23日、4年ぶり22度目のリーグ制覇(1リーグ2度含む)を決めた。開幕6戦目の4月4日から首位を譲らず、2位に11ゲーム差をつけ、走り切った。就任1年目の小久保裕紀監督(52)は、西武からFA加入した山川穂高内野手(32)を全試合4番で固定。現役時代の指揮官で、現在も仕える王貞治球団会長(84)の薫陶を受けたブレない姿勢と、柔軟な手綱さばきで古巣を頂点へと導いた。10月16日から日本シリーズ進出をかけ、本拠でCS最終ステージに臨む。

 小久保監督が球団発祥の地・大阪で宙を舞った。日本ハムが敗れて優勝決定後、1分足らずで自軍もオリックスに勝利。両手を広げる「王スタイル」も美しく7度、そして8度、胴上げされた。右足首捻挫で松葉づえ姿の近藤、右太もも裏肉離れからの復活を目指して昼の2軍戦に出場した柳田らに見守られ、4シーズンぶりにたどり着いた頂点の景色を味わった。「この日のためにチーム全員でやってきた。懸命に戦った選手たちに胴上げしてもらって最高でした」と声をうわずらせた。

 今季から山川が加入。球団は昨年に発覚した不祥事について調査、議論を尽くした上で大砲を迎え入れた。ただし、小久保監督は開幕前に「レギュラーは柳田と近藤だけ」と告げた。昨季西武で17試合出場に終わった新戦力に、全幅の信頼を置いてはいなかったのだ。それでも宮崎春季キャンプのフリー打撃で、柵越えを連発する山川が、ファンから拍手を浴びた様子を見て「彼は救われた」と目を細めた。鈍足なりに全力疾走を怠らない姿勢も「王イズム」に合致した。

 「王イズム」とは明確な定義のない勝利へのメソッド。ファンへの感謝とともに、真摯(しんし)に野球に取り組むための行動規範だ。その不文律にのっとり、小久保監督は開幕からここまで山川を4番に固定。5月下旬から130打席ノーアーチと、絶不調の山川の名をメンバー表の4番目に書き続けた。そのブレない姿勢は、四半世紀前の出来事が下敷きになっている。

 福岡移転後の初優勝を飾った1999年。打率2割を切る大不振に陥った小久保は「もう4番から外してください」と当時の王監督に直談判した。しかし世界の本塁打王は首を横に振った。「4番は特別な打順。外しても、次に入る選手の重圧がすごい。2人も調子が狂うのは、チームにとってプラスにならない」。今季のクリーンアップトリオは今月17日に近藤が登録抹消されるまで「柳田、山川、近藤」と「栗原、山川、近藤」と「柳町、山川、近藤」の3通りだけ。「猫の目打線」の文字は小久保監督の辞書にないのだ。

 一方で柔軟な変化もある。侍ジャパンを指揮した15年プレミア12は準決勝・韓国戦で9回逆転負け。継投ミスを認めた。中継ぎ専門投手を招集せず、各球団のクローザー陣で終盤を抑えようとしたプランも批判を浴びた。9年後の現在、投手起用も入れ替えもメンタルトレーニング指導者の資格も持つ倉野投手コーチ、つまり専門家の裁量に委ねている。任せる部分は任せ、同じ轍(てつ)は踏まなかった。

 昨オフに指揮官就任。ナインに「美しさが欠けているんじゃないか。勝利の女神は細部に宿る」と呼びかけた。柳田はロン毛をバッサリ切った。パ・リーグ球団としては珍しく、金髪の選手もほぼいない。今季スローガンは「VIVA」。漢字で「美破」と当てた。

 それほど「美」にこだわる背番号90だが“美の権化”には手ぬるいと映ったようだ。「見た目が若いのにもったいないよ。染めなよ」と試合前のメンバー交換時、ハイタッチしながらアドバイスしたのは同い年の日本ハム・新庄監督。小久保監督はゴマ塩頭をかきつつ、関係者に「今度、染めようと思ってるんや」と明かした。今オフにも若々しい黒髪へと魅惑の変身。来季も美しくも頼れる鷹の匠として、無敵軍団を連覇へ導く。(田中 昌宏)

 ◆小久保 裕紀(こくぼ・ひろき)1971年10月8日生まれ。和歌山市出身。52歳。星林から青学大を経て93年ドラフト2位(逆指名)でダイエー(現ソフトバンク)入団。95年に本塁打王、97年に打点王。2004年巨人移籍。07年、FAで古巣復帰。12年限りで現役引退。通算2057試合出場。2041安打、打率2割7分3厘、413本塁打、1304打点。大学時代の92年にバルセロナ五輪で銅メダル、13~17年、侍ジャパン監督。今季からソフトバンク監督。

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