◆パ・リーグ　オリックス―ソフトバンク（２３日・京セラドーム大阪）

　ソフトバンクの甲斐拓也捕手（３１）がスポーツ報知に独占手記を寄せた。スタメンマスク時の勝率は驚きの７割２厘。８月３１日のロッテ戦で育成ドラフト出身選手ではＮＰＢ史上初の１０００試合出場を達成し、国内ＦＡ権の資格取得条件も満たした扇の要。自らの手で胴上げした小久保監督との知られざる秘話を明かした。

　最後の打者は三振。ウィニングボールが僕のミットに収まった。最高です！　高くマスクを放り投げ、ヘルナンデスに抱きついたのは、恥ずかしながら素の行動。３年優勝できなかった。今年こそという思いで戦ってきた。久々の興奮だった。

　今季から小久保監督の新体制になるにあたり「もう一度足元から見つめ直してやらないといけない」と感じていた。一番こだわったことではないが、自主トレで時間を割いて取り組んだのはフレーミング（際どい球をストライクと判定させる捕球技術）。「ミットを上げすぎだ」とか、いろいろな意見も耳に入る。でも今後、球界全体で間違いなく必要になってくる技術だと思う。

　そのような勉強する楽しさは、小久保監督が教えてくれた。いつも、みずほペイペイの監督室のドアが開けっ放しなのが、今までの監督と違うところ。チラッとのぞくと、必ずｉＰａｄとにらめっこして、ずっと何かノートをつけている。「すごいな。現役を終えて、どんな立場になっても勉強し続けることって大事なんだな」と感じた。

　昨季は１２連敗などがあり、メンタル的につらいと思うこともあった。だが今季はそれがない。誰よりも一番責任を背負っているはずの監督がブレないからだ。そんな監督が「拓也おはよう」って言ってくれたら、こちらもちゃんと笑顔になれる。野球人として学ぶことは多い。

　今季は海野とスタメンを分け合っている。野球選手である以上「休みたい」と思ったことは一度もなく、１試合でも多く出場したい気持ちは変わらない。ただ、ベンチスタートをマイナスとは捉えていない。「自分のやるべきことを、その日にやろう」という考え方はできていると思う。

　その積み重ねで育成ドラフト出身としてＮＰＢ初の１０００試合出場を達成できた。本当に「まさか、まさか」という感情だ。育成の３年間、そして支配下登録後の１軍に定着できなかった３年間。このキツかった６年間に「絶対自分は成功してやるんだ」っていう思いを常に持っていたからこその数字だとは思っている。

　昨季はコンちゃん（近藤）、今季は山川さんと、トッププレーヤーがＦＡ移籍で来てくれた。相手捕手からしたら、こんな嫌な打線もないだろう。同時に若い選手も多く出てきた。両方が融合したホークスの強みが、すごく出た１年だったと思う。

　僕も国内ＦＡ権の取得要件を満たした。今は日本一になるための準備のことしか考えられないが「どういう勉強をしたいのか」を自分に問いかけたい。そして次の試合もいつも通りプレーボール直前に、ホームベースを指で「心」となぞり、初心を忘れずマスクをかぶりたい。

　優勝は果たしたが、今後は日本一という目標もあるし、残りの試合で捕手として投手の良さを引き出すという大事な務めもある。最後にホークスファンの皆さん。この３年間はすごく悔しかったと思います。そんな中、肌で感じたのは応援の迫力。いただいた拍手は、本当に気持ち良かったです。ありがとうございました。（ソフトバンク捕手）

　◆甲斐　拓也（かい・たくや）１９９２年１１月５日、大分市生まれ。３１歳。楊志館から２０１０年育成ドラフト６位でソフトバンク入団。１３年１１月に支配下登録された。今季は１１３試合で打率２割５分９厘、５本塁打、４２打点。ベストナイン３度、ゴールデン・グラブ賞を６度受賞。１８年の日本シリーズＭＶＰ。２１年東京五輪ベストナイン。通算１０１７試合、打率２割２分３厘、６２本塁打、２８９打点。１７０センチ、８７キロ。右投右打。推定年俸２億１０００万円。

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