◆日本生命セ・パ交流戦　楽天５―３広島（１６日・楽天モバイル）

　楽天が球団創設２０年目で初の交流戦優勝（最高勝率を含む）を決め、賞金３０００万円を獲得した。ソフトバンクに同率で並ばれての最終戦。相星なら得失点率差（ＴＱＢ）決戦となる可能性もあったが、広島に５―３で勝って１３勝５敗とし、１時間遅く試合が始まったソフトバンクが阪神に敗れて、Ｖが決定した。今季から指揮を執る今江敏晃監督は、史上最年少の４０歳で頂点に導いた。パ・リーグ球団の優勝は２１年のオリックス以来。セ、パ両リーグ内の対戦は２１日に再開する。

　満員御礼となった本拠地で勝利を決めてから約４０分後の午後４時４６分。ロッカーでコーチとともに優勝の行方を見守った今江監督に、ついに歓喜の瞬間が訪れた。ソフトバンクが阪神に敗れてＶ決定。試合中はタカの情報はあえて入れず、ゲームセット直後は結果待ちで硬い表情だった。「やっと笑える！」。笑顔で会見した４０歳の若き指揮官は「球団創設２０周年の年に歴史に名を残せて非常にうれしい」と余韻に浸った。

　“王手”をかけてから２連敗し、勝率でソフトバンクに追いつかれた。「やっぱり変な緊張感はあった」。相星ならＴＱＢ勝負となる中、３回までに５点をリード。３回に先発の松井の両足がつったが、計７人のマシンガンリレーで逃げ切った。「自然にいこうよ」と呼びかけてきたナインが、最後にらしさを発揮した。１万人を超えるファンが球場の大型スクリーンでソフトバンク戦を観戦。ジェット風船などで祝福した。

　地獄から再生した。５月２１、２２日のソフトバンク２連戦で計０―３３（０―２１、０―１２）。２試合での球団ワースト失点を喫した。交流戦開始前に借金は８まで膨らんだが、完済した。

　背景には思いきった采配があった。５月３１日のヤクルト戦（福島）では、「賭けに出た」と９回に代打の代打・フランコが１号逆転サヨナラ３ラン。４日の阪神戦（甲子園）では、さらに大きな決断を下した。不振に苦しむ主砲・浅村を今季初めてスタメンから外した。「現状を受け止めろ」。首脳陣の考えを、アーリーワークに付き添っていた川島打撃コーチを通じて伝えた。昨季の本塁打王は悔しさをかみしめ「分かりました」。チームを上昇させるため、情に流されなかった。

　代役４番の３４歳・鈴木大は勝負強さを発揮し、最終戦でも２ラン。並行して、浅村の状態も徐々に上向いた。スタメン復帰した１１日の巨人戦では８回に大逆転の口火を切る２ラン。「優勝ってやっぱりいい」と浅村。荒療治が野手主将の復調のきっかけになった。

　かつがないはずのゲンもかついだ。試合前の取材中に使用してきた日焼け防止用のフェースカバーを、ドーム球場や室内練習場でも着用。「何かにすがるものがないとやっていけない時もある」と漏らした。

　チームスローガンにかけ、一つ目の「いただき！」を踏破した指揮官は「交流戦で小さな『いただき』ですけど、シーズンが終わる頃には大きな『いただき』の景色を皆さんにお見せできるように、リセットして目の前の試合を戦っていきたい」。青年監督の夢は続いていく。（太田　和樹）

　◆交流戦最年少Ｖ監督

　今年４１歳シーズンで１年目の今江監督（楽）は０７年のヒルマン監督（日）の４４歳シーズンを抜いて、交流戦最年少Ｖ監督となった。ちなみに最年長は０８年王貞治監督（ソ）の６８歳シーズン。新人監督Ｖは０９年の秋山幸二監督、１５年の工藤公康監督（ともにソ）、２１年の中嶋聡（オ）に次いで４人目。

　◆今江　敏晃（いまえ・としあき）１９８３年８月２６日、京都府生まれ。４０歳。ＰＬ学園で２年夏に甲子園出場。２００１年ドラフト３巡目でロッテ入団。０５、１０年の日本シリーズＭＶＰを獲得。０５年から４年連続でゴールデン・グラブ賞。１５年オフに海外ＦＡ権を行使して楽天移籍。１９年に引退し、２０年からコーチ。２４年から監督に就任。通算１７０４試合で打率２割８分３厘、１０８本塁打、７２６打点。右投右打。

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