◆日本生命セ・パ交流戦　日本ハム９―２ＤｅＮＡ（２日・エスコンＦ）

　日本ハムが初モノ尽くしでＤｅＮＡに大勝し、連敗を２で止めた。現役ドラフトでソフトバンクから加入した水谷瞬外野手（２３）が“幻の１号”を経て、打ち直しでプロ初本塁打を記録。交流戦打率５割７分９厘の絶好調男が１４安打９得点の打線をけん引した。

　ニュースター誕生を告げる放物線が最後に力強く伸びた。４点リードの４回１死二塁。水谷は大貫の浮いたカーブを左中間最深部に運んだ。プロ通算１５試合、計４７打席目で飛び出した１号は試合を決定づける２ラン。「苦しい、悔しい５年間があったから今がある。最高です」。万感の思いでダイヤモンドを一周した。

　指揮官を“救う”打ち直し弾だった。３回先頭。捉えた打球は左中間フェンス最上部のラインを越えて奥の柵に直撃し、グラウンドにはね返った。球場ルールでは本塁打だが判定はフェンス直撃。新庄監督も「デーゲームでまぶしくて見えづらかった」とリクエストしなかった。直後に幻の１号に気付き猛烈に悔しがるボスを横目に、水谷は次の打席で“２発目”を同じ左中間席へ。「プロテイン飲んでから行きました。話のネタにもなったので結果的に良かったです」とユーモアたっぷりに笑った。

　ソフトバンク時代は５年間で１軍出場ゼロ。新天地での原動力になったのが、新庄監督から届いた一通のメッセージだった。「ファイターズはチャンスだらけ。一緒に成長していこうな。いつも欠かさず、見てるからな」。２軍調整中は朝４時半に起床し、一人トレーニング場で汗を流してから遠征に向かう日々を送った。５月下旬に再昇格すると、交流戦は全５試合に出場し１９打数１１安打５打点。指揮官は「スターにさせる。この子を何年後かにメジャーに行かせる指導をしていく」と無限の可能性に期待した。

　水谷、万波、田宮、水野、野村の同学年５人がスタメンで計１０安打８打点と爆発して連敗を阻止。古巣時代に自主トレで師事した松田宣浩氏の代名詞「熱男」ポーズも披露して感謝を形にした水谷は「毎日命を削りながらやっている。また打てるように」。最後は北海道弁で「またね」を意味する「したっけね」でお立ち台を締め、３万１４３７人の心をわしづかみにした。（堀内　啓太）

　◆日本ハム水谷瞬アラカルト

　☆生まれ　２００１年３月９日、愛知県。２３歳

　☆サイズ　１９３センチ、９９キロ。足は３１センチ

　☆投打　右投右打

　☆家族　ナイジェリア人の父と日本人の母。ニックネームはミドルネームから「ジェッシー」

　☆球歴　石見智翠館（島根）では高校通算２１発も甲子園出場なし。１８年ドラフト５位でソフトバンク入団。５年間で１軍出場ゼロ。

　☆相撲好き　相撲漫画「バチバチ」を読み大好きに。古巣在籍時は九州場所を生観戦

　☆フルスイング　５月２１日の昇格時に持ってきた１２本のバットは折れ続けて残り４本に。「１本、１万６０００円…。でも１軍で打てるなら何本でも（いい）」

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