ロッテ、今季も光った隙のない走塁 好走塁の裏に大塚コーチの存在
ベースボールキング
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2023.11.24(金) 10:00
ロッテ・大塚明コーチ(左)と和田康士朗(右)[撮影=岩下雄太]
◆ 今季も好走塁ロッテは今季、チーム盗塁数が前年の132盗塁から73盗塁に減少したが、盗塁成功率はリーグトップの.777。今季も得点を挙げるために相手の守備のミス、相手の隙を突いて1本の安打で一塁走者や二塁走者が生還したり、相手の守備の乱れを見て二塁から一気にホームに陥れるなど、好走塁が光った。
4月5日の日本ハム戦、0-1の7回二死満塁から中村奨吾の初球、暴投でボールが一塁ベンチ付近に転がっている間に二塁から藤原恭大が三塁走者の友杉篤輝に続いてスピードを緩めることなくホームインし逆転のホームを踏めば、4月26日の西武戦では1-1の7回一死一、三塁から友杉のボテボテの一塁へのゴロで内野前進守備を敷いていたが、三塁走者の岡大海がヘッドスライディングで決勝のホームイン。
6月6日のヤクルト戦では、3-3の6回一死満塁で安田尚憲の浅いレフトフライで、「そこは助け合いだと思いますし、自分が浅いフライを打って還ってきてくれれば、助かりますし、行けるところは行こうと思います」と三塁走者の藤岡裕大が一時勝ち越しのホームイン。
7月15日の楽天戦では、5-7の8回二死一、二塁で四球を選んだ石川慎吾の代走で小川龍成が出場し、二死満塁から角中が押し出し四球を選び、その球が打者の後ろを通過する暴投となり、捕手が逸らしている間に二塁走者の小川もスピードを緩めることなくヘッドスライディングで同点のホームを踏む好走塁。
8月31日の日本ハム戦では、4-4の7回、中安を放った先頭の山口に代わって代走で登場した和田が、続く岡の1ボール2ストライクの4球目156キロツーシームの時に二塁盗塁成功。2ボール2ストライクからロドリゲスが投じた7球目の144キロスライダーを捕手・古川が弾き、ボールが三塁ベンチ横に転々としている間に二塁から一気に決勝のホームインを踏んだ。
9月18日の西武戦は1-1の12回一死二塁で佐藤都志也の浅い左飛でレフト・ペイトンの捕球態勢を見て、二塁走者の友杉が三塁へタッチアップし、二死三塁から藤原の打席中にワイルドピッチで生還。
クライマックスシリーズでもソフトバンクとのファーストステージ第3戦、3-3の10回二死一塁で安田の右中間を破る当たりで一塁走者・岡が長駆ホームインした。
この他にも今季、何度も好走塁があった。岡は「それはしっかり準備してプレーしている時にそういうシチュエーションになったというだけでだと思います」と話せば、和田は走塁面について「去年までは代走に出て強引に盗塁を仕掛けていこうというところだったんですけど、今年はそんなに強引ではなくていける時にいこうという感じでした。走塁は三塁ランナーいた時は、ほぼほぼ変わらずだと思います」と語った。小川は「元々ベースランニングは得意な方なので、あとは打球判断、相手の肩、動きを把握していけると思えば積極的に行くという感じですかね」と明かした。
◆ 大塚コーチの存在
好走塁の裏には試合前からの準備がある。大塚明外野守備走塁コーチが試合前練習中に、選手たちに走塁についてアドバイスを送ったりすることが多い。今年の石垣島の春季キャンプでは楽天モンキーズとの試合前練習で、若手選手に「遊びじゃないからもっと本気で」、「足が遅くても判断ができる」と声をかける場面もあった。ここ数年のマリーンズの“1つ先の塁を狙った走塁”の徹底した意識作りは、大塚コーチによるところが大きい。
大塚コーチは「走ることはあまりしたくないでしょう。みんな打つ、投げるが大好きで、アップしないでカンカン打つのが仕事。走ることが疎かにならないように、一定の水準を作るように毎日うるさく言っています」と、走塁練習中に口酸っぱく選手たちに注意するのもそういったことが関係している。
毎日の積み重ねがチーム全体に浸透。井上晴哉、安田尚憲、山口航輝といった足が速いとは言えない選手たちも意識高く持って走塁練習をやっている。井上は「走塁というのは相手の隙というか動き次第でなんとでもなる。走塁では、みんなと一緒にできるように自分で心がけています。あいつ無理か、いけないかではなくて、いってみてトライというのはまだまだやっています」と口にする。
「それをやらせるのが俺の仕事。それを毎日手を抜かずに、コツコツやっていく。そういうしつけをなされているのがロッテの選手じゃないかな。数字が高いと言うことはね。井口監督の5年間でやってきて今年も高いレベルでやってこれている。2位に拾えた。土台といえるものは意識だよね」と大塚コーチ。
大塚コーチは意識づけでこだわっている部分について「結果にこだわる。自分のやるべきことをやらせるということだから、技術的にバッティングもそうだけど、間を取るということだよね。基本的にはゴーかバックなんだけど、そこでグレーゾーンで行くか、行かないかどうしようかという判断をする時間があればあるほど、いい走塁につながっていく」と教えてくれた。
ロッテの武器は走塁意識の高さ。その一方で、大塚コーチは「本当に手を抜くとすぐ(に高い走塁意識が)なくなる。来年ポンと言わなくなった瞬間、チームというのはそうなってしまう」と危機感を示す。次の塁を狙う走塁という武器に磨きをかけながら、打線に繋がりが出て塁上を賑わす機会が増えれば、今季以上に嫌らしい攻撃、走塁になる。
取材・文=岩下雄太