「4回にフォークの握りを変えたのは良かった」試合中でも変化を恐れないロッテ・種市篤暉
ベースボールキング
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2023.4.30(日) 08:13
ロッテ・種市篤暉(撮影=岩下雄太)
◆ 試合中でも変化を恐れないロッテは、現在14勝9敗でパ・リーグ首位に立つ。1勝1敗で迎えたオリックスとの3連戦の3戦目に先発を託されたのが、今季ここまで2勝2敗、防御率1.37、リーグ3位の30奪三振をマークする種市篤暉だ。
今季のロッテ・種市は球数が多くなるが、しっかりと試合を作る。前回登板の23日のソフトバンク戦は初回に33球を投げるなど球数を要したが、1度も三塁ベースを踏ませなかった。ここが種市の凄さでもある。走者を出しても、2回で言えばガルビスを併殺打に打ち取ったり、3与四球だが先頭打者への四球は1度もなかった。先頭打者をきっちり打ち取っていたことで、失点に繋がらなかった。
「ストレートが安定しないと球数が多くなりますし、その中でスライダーとかを操れていたらもっと楽なピッチングができたんじゃないかなと思います」と反省したが、5回・103球、4安打、7奪三振、3与四球、無失点に抑え、今季2勝目を手にした。
種市の武器のひとつが、自身の課題を見つめ、試合中でも修正ができること。23日のソフトバンク戦でもそうだった。
「試合中にもっと敏感というか、嗅覚というか、イニングごとに“こうしよう”、“ああしよう”とイニング間のキャッチボールはやっているので、その中でなんとかしようと思っています。なんとかできていない部分が多いですけど、もうちょっと試合中に良くなれば。その中で、フォークは改善できたのは良かったです」。
4回以降フォークでの三振が増えた。フォークでの三振が多いのは、調子のバロメーターと見て良いのだろうかーー。
「そうですけど、フォークが良かったらいけるという感覚に近いので、4回にフォークの握りを変えたのは良かったのかなと思います」。
4回は先頭の牧原大成をストライクゾーンからボールゾーンに落ちる139キロのフォークで空振り三振、続く柳町達も138キロのフォークで空振り三振、最後はガルビスを141キロのフォークで空振り三振に仕留めると、続く5回も先頭の甲斐拓也を136キロのストライクゾーンのフォークで見逃し三振、二死一塁から柳田悠岐を144キロのフォークで空振り三振と、4回と5回の2イニングだけでフォークで5つの三振を奪った。
試合中にフォークの握りを変え、そこで抑えきる種市の修正力の高さを示した。
◆ 種市のフォーク
今季の種市のフォークを見ていると、ストライクゾーンからボールゾーンに大きく落ちるフォーク、カウント球などで投げることの多いストライクゾーンからストライクゾーンに落ちるフォークに加え、シンカー系など、バリエーションが豊富だ。
前回登板のソフトバンク戦で、2回に先頭の柳町を見逃し三振に仕留めたストライクゾーンへの141キロのフォークは、フォークかスライダーか見分けることができなかった。本人に直接確認すると「あれは、フォークです」と話し、「だいたいフォークは130キロ後半から140キロくらいでるので、スライダーの方が遅いです」と教えてくれた。
種市のフォークに興味が湧いてくる。ストライクゾーンからストライクゾーンに投げるフォークは2019年当時「キャッチャーの頭を投げる意識で投げています」と話していたが、現在は「ど真ん中くらいの意識です。ど真ん中に全力で投げて勝手に落ちてくれる感じです。落としにいったら落ちないので、その中で腕振って落ちているのが一番空振りとれている要因かなと思います」と明かした。
左打者にはシンカー系のフォークで空振りを奪うこともある。今季でいえば、4月9日の楽天戦の4回に小深田大翔から空振り三振を奪った139キロのフォークがそうだ。「シンカー気味に投げました。左バッターは気持ち、投げた瞬間、フォースラだと見切られるイメージがあるので、ちょっと体から離れていくイメージで投げています」としっかりと意図を持ってシンカー気味に落とした。
スライダーの話の流れで、「フォークもそうなんですけど、その日に調子が悪いとわかった瞬間に感覚的に何かを変えるのをしていかないと思います。その中でノートを書くのが一番大事かなと思います。“こういう時はこうなる”、“力んだらフォークが落ちない”とか、“突っ込んだら落ちない”とか試合中にわかっていたら試合中に修正ができる。もっと自分に敏感になっていきたいなと思います」。
種市篤暉は試合中であっても、変化することを恐れない。悪ければ、修正する。現状に満足することなく、進化を求め、常に野球のことを考えアンテナを張り巡らせ、向上心のある種市だからこそできる技。今日のフォークはどんな変化をするのだろうかーー、今日はどんな投球を見ることができるのだろうかーー。そんなことを考えるだけで、ワクワクがとまらない。大阪のマリーンズファンを魅了する投球を、必ず見せてくれるはずだ。
取材・文=岩下雄太