【侍ジャパン】佐々木朗希3連勝導いた 「集中して」3・11魂の66球 運命の日に世界デビュー

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2023.3.12(日) 00:09

ヒーローインタビューでファンに手を振る佐々木朗希(カメラ・竜田 卓)

◆カーネクスト2023 WBC東京プール ▽1次ラウンドB組 日本10―2チェコ(11日・東京ドーム=観衆4万1637)

 「カーネクスト2023 WBC東京プール」で、日本が1次ラウンド(R)第3戦のチェコ戦に臨み、ロッテの佐々木朗希投手(21)が、快投で世界デビューを果たした。初回に失策絡みで1失点したが、3回2/3で被安打2、8奪三振。東日本大震災から12年たったその日にWBCでは日本人最年少での勝利投手となり、故郷・岩手に、被災地に勇気を与えた。打線は同じく岩手出身のエンゼルス・大谷翔平投手(28)が打球速度約191キロの弾丸適時二塁打を放ち、3連勝に貢献。12日のオーストラリア戦に勝てば、B組1位での準々決勝進出が決まる。

 ボールに精いっぱいの力を込めた。1点ビハインドの3回1死一、二塁。佐々木朗は4、5番打者を空振り三振、中飛に抑え、ベンチに戻る野手陣1人1人に感謝の思いを示すように出迎えた。「チームが勝ててよかったと思いますし、自分自身も最低限の仕事が出来たと思います」。2回まで沈黙していた打線が、3回裏につながって逆転し、WBCでは日本人投手最年少の勝利投手となった。

 WBC初出場のチェコを相手にまさかの展開だった。初回はこの日最速164キロをマークするなど、東京Dをどよめかせ続けたが、2死二塁で遊撃手・中野の悪送球(記録は失策)で先取点を献上。2回までは打線も沈黙して、踏ん張るしかなかった。逆転した直後の4回もマウンドに上がり、2死一塁で65球の球数制限に到達して降板。3回2/3で66球を投げ、2安打1失点(自責0)、8奪三振の力投を見せ「満員のドームの中で投げることが出来てうれしいです。どうにか最少失点で投げることが出来てよかった」とうなずいた。

 運命に導かれるようにして上がった「3・11」のWBCデビュー戦だった。生涯忘れることの出来ない1日となった11年3月11日。生まれ育った陸前高田市は津波にのみ込まれ、父・功太さん(当時37歳)と祖父母を亡くした。自宅も流され、母・陽子さんと兄、弟の4人で老人ホームに身を寄せた。

 生活するだけで必死だった日々を支えたのは、他でもない野球だった。「野球してる時が一番楽しかった」。大船渡に移住後の猪川小でも仮設のグラウンドへ向かう足は止めなかった。当時は照明設備もなく、保護者の車のライトだけが頼り。地面は荒れてボールは見えづらく、蛍光塗料を塗ったボールを無心になって追いかけた。

 あれから12年。「きょうこのマウンドに立てたことに感謝しています」。日の丸を背負って、満員に埋まった東京Dで大声援を浴びた。バックには頼れる先輩たちが守り、同じ岩手出身の大谷から声をかけられてマウンドに送り出された。歩みを止めなかったからこそ、世界への大きな第一歩を踏み「僕が投げている姿で何か感じてもらえたらなと思います」とメッセージを体現した。

 侍ジャパンがWBCで優勝した06、09年は4、7歳で野球すらまだ本格的に始めていなかった。それでも09年に決勝でイチローが決勝打を放ち、ダルビッシュが試合を締めくくったことは、ハッキリと脳裏に刻まれている。頂点までは残り4試合。被災地に勇気と希望を与えた頼れる右腕は、登板の可能性が残される米フロリダ州マイアミでの準決勝以降へ向けて、再び歩み始める。(安藤 宏太)

 ◆記録メモ 21歳4か月の佐々木朗(ロ)が、先発で勝利投手。五輪では88年ソウルの予選L・台湾戦で野茂英雄(新日鉄堺)が20歳0か月。96年アトランタの予選L・キューバ戦で小野仁(日本石油)が19歳10か月で先発。

 00年シドニーでは、松坂大輔(西)が20歳0か月で3度(予選L2度、3位決定戦1度)先発した例があるが、WBCでは09年1次R・中国戦○、2次R・韓国戦●のダルビッシュ有(日)の22歳6か月より若い、日本人投手最年少(プレミア12は15年大谷翔平=日が21歳4か月で2度)。

 白星もダルビッシュを抜き最年少で手にした(五輪は88年ソウルの野茂、プレミア12は15年松井裕樹=楽の20歳0か月が最年少)。

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