ゴールデンスピリット賞にオリックス・吉田正尚…途上国の子供たちへ1本塁打につき10万円と募金届けた

スポーツ報知

  • ニュース

2022.11.15(火) 06:00

ゴールデンスピリット賞を受賞したオリックス・吉田正尚(カメラ・石田 順平)

 プロ野球人の社会貢献活動を表彰する報知新聞社制定「ゴールデンスピリット賞」の第23回受賞者が14日、オリックス・吉田正尚外野手(29)に決定した。2019年から公式戦でのホームラン1本につき10万円と、ファンからの募金を合わせて寄付金とし、認定NPO法人「国境なき子どもたち」を通じて開発途上国で貧困に苦しむ子どもたちへ寄贈。継続的に取り組んでいることなどが評価された。表彰式は12月2日、都内で行われる。

 吉田正尚が二重、三重の喜びに包まれた。「名誉な賞だと聞いていました。こういう形で評価していただけるのは、本当に光栄なことだと思います」。本業ではパ・リーグ連覇と26年ぶりの日本一に貢献。シーズンオフに届いた知らせは「球場外のMVP」だった。

 2016年の入団当初から社会貢献を思い描いていた。「先輩方の活動も知っていた。野球選手として、何かしらの貢献がしたかった」。その16年は、全国の児童にランドセル寄付を続けていた内海哲也さん(当時巨人)が受賞。敦賀気比高(福井)の先輩だ。自身がプロでレギュラーとして地位を固め、行動に移したのは19年。「ホームラン基金」の始まりだった。

 「どんな点差や、どんな打席であっても、ホームランは魅力があって特別なもの。自分の中でもモチベーションになると思っています」。公式戦での1本塁打につき10万円に、ファンからの募金を加えた寄付金を認定NPO法人「国境なき子どもたち」へ贈っている。選手などの慈善活動をサポートしているNPO法人「ベースボール・レジェンド・ファウンデーション」(BLF)の協力があった。

 具体的な支援を決めたきっかけは、あるテレビ番組だった。ストリートチルドレンについて知った。「子どもたちが餓死していく映像とかを見ると…」。言葉に詰まり、カンボジア、フィリピン、バングラデシュなど開発途上国で貧困に苦しむ子どもたちを思いやった。「野球の良さ、思いを知ってもらいたい」。19年に自己最多となる29本塁打を放ち、今季まで計85本塁打と量産してきた。励みになるのが定期的に送られてくる応援動画。「ヨシダ、ガンバレ!」の子どもたちの声に背中を押されている。

 オリックスだけでなく、日本の看板打者。「ファンの方々のおかげで、プラスアルファとして、どんどん(寄付が)増えている。うれしいし、本当にありがたいです」と輪の広がりにも感謝した。新型コロナが収束すれば現地で文化に触れ、子どもたちと野球を楽しむのも、ひそかな夢。今後も熱い気持ちをフルスイングに乗せる。(長田 亨)

 ◆吉田 正尚(よしだ・まさたか)1993年7月15日、福井県生まれ。29歳。敦賀気比高から青学大を経て、2015年ドラフト1位でオリックス入団。20、21年に首位打者、今季は2年連続2度目の最高出塁率。ベストナイン4度。19年プレミア12、21年東京五輪で日本代表。通算成績は762試合で打率3割2分7厘、133本塁打、467打点。173センチ、85キロ。右投左打。年俸4億円。既婚。

 ◆長嶋茂雄さんからメッセージ

 同賞の創設時から選考委員を務めている長嶋茂雄・読売巨人軍終身名誉監督(86)は療養中のため、選考委員会を欠席した。選考委では長嶋氏から各委員あてに寄せられた「この数年来、プロ野球の選手たちがさまざまな形で社会貢献につながる活動がみられるのも、この賞がきっかけのひとつになっているのではないかと感じています。今回も賞にふさわしい選手が誕生することを楽しみにしております」との文書が読み上げられた。

 ◆選考経過 11球団からノミネートされた計15人を対象とした選考委員会は「これほど内容が充実し、難しかった年はない」(佐山委員)という大激戦となった。

 活動の継続性や独自性、幅の広さといった観点から議論が進み、3年連続ノミネートのオリックス・吉田正選手、同じく4年連続の巨人・菅野選手、活動が8年目を迎えた日本ハム・宮西選手、オリックス時代を含め通算6度目のノミネートとなった阪神・西勇選手らが各委員の高い評価を集めた。

 吉田正選手は「今回の候補者で唯一、支援対象が海外」(依田委員)、介助犬普及支援を続ける菅野選手にも「なじみの薄い分野の認知度を高めた」(斉藤委員)と、それぞれ独自性を推す意見が相次いだ。また、自身とブルペン仲間の成績に応じた寄付などに取り組む宮西選手は「社会の分断が懸念される中で、周囲とつながることをテーマにしている」(大塚委員=代理・日本赤十字社広報課長、森岡郁子)、西勇選手は「日本財団子どもサポートプロジェクト」への寄付に加え、「(コロナ禍で不足した)マスクを寄付するなど機動性がある」(三屋委員)と、ともに活動の幅広さが評価された。

 決め手になったのは国際性。「世界的視野に立った活動は、若い人が社会貢献を始めるきっかけにもなる」(佐山委員)として、オリックスからは初めてとなる吉田正尚選手の受賞が決定した。

 ◆ゴールデンスピリット賞 日本のプロ野球球団に所属する人の中から、積極的に社会貢献活動を続けている人を表彰する。毎年1回選考委員会(委員名別掲)を開いて、球団推薦で選ばれた候補者から1人を選定する。社会貢献活動の表彰は米大リーグの「ロベルト・クレメンテ賞」が有名で、球界での最高の賞として大リーガーの憧れの的になっている。日本では球場外の功績を評価する表彰制度は同賞が初めて。いわば「球場外のMVP」。受賞者にはゴールデントロフィー(東京芸術大学名誉教授・絹谷幸二氏作製のブロンズ像)と阿部雄二賞(100万円)が贈られる。また受賞者が指定する団体、施設などに報知新聞社が200万円を寄贈する。

 ◆第23回ゴールデンスピリット賞選考委員

大塚 義治 日本赤十字社名誉社長

斉藤 惇 プロ野球コミッショナー

佐山 和夫 ノンフィクション作家。米大リーグに造詣が深い。ゴールデンスピリット賞の提唱者の一人。2021年野球殿堂入り。

長嶋 茂雄 読売巨人軍終身名誉監督。現役時代のチャリティー活動が評価され、1982年に日本のプロ野球人として初めてローマ法王ヨハネ・パウロ2世に謁見(えっけん)した。88年バチカン市国からバチカン有功十字勲章を受章。

三屋 裕子 日本バスケットボール協会会長。バレーボール女子日本代表としてロス五輪銅メダル。

依田 裕彦 報知新聞社代表取締役社長

(敬称略・50音順)

関連ニュース

【オリックス】竹安大知が右肘のクリーニング手術 数日間の入院後、リハビリへ
【オリックス】山本由伸、宗佑磨が2年連続ゴールデン・グラブ賞受賞 福田周平は初
【オリックス】宇田川優希投手インタビュー…フォークでつかんだ野球人生初の日本一
【オリックス】FAの西武・森友哉と初交渉 背番号「4」「8」など提示か
【オリックス】FA伏見寅威、日本ハム入り有力 新庄剛志監督らの熱意伝わる

記事提供:

スポーツ報知