日本ハム・杉谷拳士内野手（３１）が２８日、札幌市内の球団事務所で会見に臨み、今季限りで現役を引退することを表明。「引退会見という言葉は使いたくありません」と「前進会見」で約４５分、語り尽くした。何度も言葉を詰まらせていた中、栗山英樹前監督（６１）＝現侍ジャパン監督＝がサプライズ登場し、号泣。今後は起業なども含め、スポーツに携わる意向を示した。

　何度もこらえていた涙があふれ出た。会見の最終盤。杉谷への花束贈呈で、栗山前監督がサプライズ登場。「お前いつも俺に言ってるだろ、泣くなって。泣くな拳士、泣くな」と優しく語りかけられた。「ここからなので。楽しみにしています。やり残したことはないですか？」と問われると、「はい。これから前進しようと思っています」と昨年まで１０年間監督だった恩師の前で決意表明した。

　杉谷らしさもにじんだ。「引退会見という言葉は使いたくありません。『前進会見』で、これからの人生を前進していきます」。会見中には「引退」を使ってしまい、訂正する場面もあったが、前向きな２文字を貫いた。それも「父親のような存在」という栗山前監督から常に「前に進みなさい。拳士は拳士らしくやりなさい」という言葉を受けてきたから選んだという。

　プロ１４年間。その明るさからファンにも親しまれてきた男は、今季５１試合の出場で打率１割６分５厘、３打点、本塁打なしに終わった。「自分、ファイターズの将来、体のこと、総合的な判断でこのような決断になった。やり切った気持ちが強い」。もちろん期待して起用してくれた新庄監督にも報告し「期待を裏切ってしまったことについて謝りました。『本当に野球が楽しかったです』ということは伝えました。新庄さんらしく『来週いろいろ話そうぜ！』って言ってくださいました」と感謝を示した。

　今後は国内外問わずスポーツビジネスについて勉強し、起業も目指す意向だという。「吉村さん（統括本部長）みたいな存在になりたいと話していた」と球団に深く関わる役割にも興味を示す。起業した斎藤佑樹氏にも相談。「株式会社斎藤佑樹」にちなみ「『株式会社杉谷拳士』でいこうかなとも思ったんですけど、ゆっくり考えます」と笑った。

　現役最後の舞台は１１月５日・侍ジャパン戦（東京Ｄ）。「栗山さん、もちろん新庄さんの下でも終わろうと思っていた。ファイターズのユニホームを着て楽しく野球をやっている姿を見せることができればな、と思っています」。杉谷らしさを発揮し、新たなステージへ羽ばたく。（田中　哲）

　◆ベルーナＤでウグイス嬢の鈴木あずささんに感謝

　〇…杉谷がベルーナＤでウグイス嬢を務める西武の球団職員・鈴木あずささんに感謝を示した。同球場での試合前の打撃練習中に恒例となっていた杉谷イジり。「本当に連絡先も分からないので」とし、「今までたくさんのステキなお言葉ありがとうございます。今後はどういう立場になるか分からないですけど、今後ともベルーナドームに行った際は、ごあいさつさせていただきたい。本当にありがとうございました」と思いを口にした。

　◆杉谷活躍メモ

　▽１２年８月８日・ソフトバンク戦（帯広）

　プロ初のサヨナラ打となる二塁打を記録。お立ち台では「打った瞬間、きたーって感じでした」と喜んだ。

　▽１９年５月２３日・楽天戦（札幌Ｄ）

　史上１９人目（４２度目）で令和初となる左右両打席本塁打を記録＝写真＝。お立ち台では球団ＯＢのセギノールにちなみ、「今日から僕は『スギノール』でいきます！」と沸かせた。

　▽２２年５月３０日・巨人戦（札幌Ｄ）

　新庄監督が試合前にインスタライブを実施し、ファンの希望もありスタメンに抜てき。勝利打点を含む２打点を記録した。

　◆杉谷　拳士（すぎや・けんし）１９９１年２月４日、東京都生まれ。３１歳。帝京では１年夏から正遊撃手として３季連続で甲子園出場。３年時は主将。入団テストを経て２００８年ドラフト６位で日本ハム入団。１０年にはイースタンでシーズン最多安打記録を更新。１１年に初出場するとユーティリティー選手として１軍に定着。１７３センチ、７８キロ。右投両打。推定年俸２８００万円。

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