【オリックス】連覇アシスト中嶋聡監督の爆音指令 ロッカーに流れる宗チョイス曲に「音、小さくないか?」

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2022.10.3(月) 05:00

優勝しオリックスナインに胴上げされる中嶋聡監督(カメラ・頓所美代子)

◆パ・リーグ 楽天2―5オリックス(2日・楽天生命パーク)

 優勝マジックを1としていたソフトバンクがロッテに敗れ、楽天を下したオリックスが逆転で2年連続14度目(阪急時代含む)のパ・リーグ優勝を決めた。連覇はイチローを擁した仰木彬監督時代の1995、96年以来26年ぶり。首位との最大11・5ゲームをはね返した。同率で並び、当該球団間の対戦成績によって優勝が決定したのはNPB史上初。首位3日での優勝は最少となった。12日から本拠地でクライマックスシリーズ(CS)最終ステージ(オリックスにアドバンテージ1勝)に臨む。

 苦しみ、耐え、143試合目で差し切った中嶋監督が歓喜の輪の中心に招かれた。「本当に感無量と言いますか…。こんなことが起こるのか、と。信じられない気持ちです」。95、96年以来のリーグ連覇。胴上げは5度だ。秋田出身。東北の夜空が、涙でにじんだ。

 2位で迎えた最終戦。楽天に勝利し、ソフトバンクがロッテに敗れることだけが条件だった。1点を返し、なお1点を追う5回に福田が逆転2点打。9回は伏見の2点二塁打で突き放した。試合終了から2分後の21時27分にライバルが敗戦。昨年に続き、1度もマジックを点灯させることがなかった。8年前はソフトバンクに敗れ、勝率8厘差(最終的に2厘差)で優勝をさらわれた10月2日。同率ながらライバルを対戦成績で上回り、歴史を塗り替えた。

 「優勝したからといって現状維持でいい、というのはない」。1月のスタッフ会議で声を張った。不可欠としたのが戦力の底上げ。しかし、思い通りに進まなかった。昨季本塁打王の杉本が打撃不振。吉田正ら主力にも新型コロナの感染者が続出した。5月まで1試合平均で2・6得点。連敗が7に伸びた5月8日には、首位・楽天と11・5ゲーム差まで広がった。89本塁打はリーグ最少。組んだ打線は141通りに達していた。

 窮地を救った1人が4年目の中川圭だった。「無敵の中川を見てきた」とその気にさせ、1番から7番までの打順に対応。初めて規定打席をクリアした成長株は、誰よりも号泣した。この日のように諦めず、32度の逆転勝利はパ最多。投手起用も柔軟だった。先発は相性を考慮。山本は西武、ロッテから15勝のうち8勝を稼ぎ、田嶋は楽天に5勝無敗だった。2年目の阿部を中継ぎエースへ育て、ワゲスパックを先発から救援へ回したのも当たった。

 慌てなかった。5月3日から敵地でソフトバンクに3連敗し、若手だけを集めて伝えた。「期待してないから…」。ニタッと笑い、肩の力を抜かせた。「思い切りやればいい」。高卒新人の池田、2年目の元を1軍に抜てきした。プロ初安打を記録させ、ドラフト1位の椋木や育成出身・宇田川らにもプロ初勝利をつかませた。先も見ていた。

 ある敵地での負け試合。宗のチョイスで多彩な曲が流れるロッカールームをのぞいた。「音、小さくないか? もっと盛り上げていけよ」と“爆音”を指示した。「結果を怖がって、小さくなるな。勝ち負けの責任はこっちにある」。発する言葉にはいつも、愛情とパワーがあった。

 まだ5位だった7月16日には、選手だけで思いをぶつけ合った。「何とかしようという去年みたいな気持ちが見えない。このままじゃ勝てない。優勝なんかできない」。楽天生命パークのブルペンに集まり、投手コーチを兼ねる能見が口火を切った。泥臭さ、諦めない心が宿った。

 26年前の連覇は主力捕手として味わった。当時はMr.ChildrenやTUBEを歌いこなし、流行にも敏感だった27歳。難役を全うし、誰にもマネできない奇跡を演出した。「よく頑張って、盛り返して、最後にここまでやれる選手たち。本当に誇りに思います。本当に選手、おめでとう!」。まずは昨年果たせなかった日本一奪回。続投が内定している来季は、阪急時代の78年以来となる3連覇にも挑む。最後の最後で、またひと皮むけた中嶋オリックス。真価を発揮するのは、まだまだ先だ。(長田 亨)

 ◆中嶋 聡(なかじま・さとし)1969年3月27日、秋田県生まれ。53歳。鷹巣農林(現・秋田北鷹)高から86年ドラフト3位で阪急(現オリックス)入団。西武、横浜(現DeNA)、日本ハムと渡り歩き、2007年からバッテリーコーチ兼任。15年限りで引退。19年からオリックス2軍監督。20年途中から1軍監督代行、21年から1軍監督。通算1550試合、804安打、55本塁打、349打点、打率2割3分2厘。右投右打。

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