◆パ・リーグ　日本ハム２―０ソフトバンク（２７日・札幌ドーム）

　日本ハムのコディ・ポンセ投手（２８）がソフトバンク戦で史上８７人目（通算９８度目）、球団の助っ人では初のノーヒットノーランを達成した。完全試合を含めシーズン５人の達成は１９４０年以来、８２年ぶりの史上最多タイ。メジャーでわずか１勝の助っ人右腕が、四球と死球を１つずつ与えただけで首位のホークス打線を牛耳り、チームの連敗も８で止めた。

　最後のアウトが遊ゴロ併殺打で完成すると、ポンセはグラブを放り投げ、１９８センチ、１１６キロの巨体を揺らし、喜びに浸った。捕手・古川裕と熱い抱擁を交わすと、新庄ビッグボスも両手を挙げて祝福。８２年ぶりの「５人目」のノーヒッターは、メジャーでもわずか１勝の助っ人だった。

　「歴史が詰まっている素晴らしい球場で偉業を成し遂げられたのをうれしく思います。やっちゃいました」

　球団では９５年の西崎幸広以来２７年ぶり６人目の快挙だった。本拠では初登板の右腕は右打者に食い込むツーシームなどで凡打の山を築き、１１３球で首位のタカを封じ込めた。「４、５回くらい」に無安打に気づいたが、冷静に投球。走者を出したのは２四死球のみ。８回には遊撃・中島の好守に頭を下げた。「ありがとうございますという気持ちと、晩ご飯をおごらないといけないという気持ち」。９回の前は「吐きそうなくらい緊張した」と語り、ボスも「緊張している顔を見たらオレが吐きそうになった」という中で、人生初体験の大仕事を完遂した。

　亡き母とともに成し遂げた。１７年に母・ジェニファーさんが脳のがんで死去。「お母さん、あと１回お願いします」。終盤は天国へ祈りながら投げた。「お母さんのおかげ。渡せるならボールもグラブもユニホームも渡したい」。米国時代には病院訪問なども行っており「日本でも機会があれば」と言う心優しき男だ。

　来日１年目。右手首には「熊」と漢字でタトゥーを入れている。日本で入れたものだ。「見た目も熊っぽい。（日本で）ニックネームがついて。体に刻もうと思った」。ワイルドな右腕は、８０年代に大洋で大活躍した巧打者カルロス・ポンセのことは「知らない」というが、投げるポンセとしての名をとどろかせた。

　チームは今年は４月にロッテ・佐々木朗に８回完全投球、６月は今永に無安打無得点。７月にはオリックス・椋木に９回２死までノーヒッター。やられてばかりではいられない。連敗を８で止めた孝行助っ人に「自分の子どもが達成したかのようなうれしい気持ち。子どもいないけど。（９回に）アンパイアにも聞いたもん。『（達成）します？』って」とボス節もさく裂した。札幌Ｄ最終年で、本拠地移転後初の記録。北の大地を鮮やかに彩る１１３球だった。（田中　哲）

　コディ・ポンセ　

　▼生まれとサイズ　１９９４年４月２５日、米国生まれ。２８歳。１９８センチ、１１６キロ。右投右打。

　▼日本に魅力を感じた理由　１９年のプレミア１２で米国代表として出場。東京Ｄでプレーした際に日本のファンの応援を聞いて「いつか絶対に日本でプレーするぞと決めた」

　▼趣味　ゴルフ。ベストスコアは７９。特にタイガー・ウッズが好きで「セントアンドリュースの活躍は歴代最高のプレー。まだ現役でバリバリやっているのがすごいと思ってタイガーは見ている」

　▼髪形　奇抜な髪形で、今季はコーンロウにしたことも。「（亡くなった）母が美容師で非常におしゃれな方だったので、そういうことを自分も引き継いで、おしゃれな髪形になっていると思います」

　▼瞑想（めいそう）　試合などがなければ午後９時頃に就寝し、基本は午前６時３０分に起床。「無になって自分との時間をつくる」と瞑想で心を整える。

　◆１９４０年の球界　３７年に日中戦争が始まり、生ゴムなど多くの物資が統制された影響で使用球が粗悪になり、この年のリーグ平均打率は２割６厘。規定打数（当時）以上の３割打者も前年の５人から２人となり（首位打者はライオン・鬼頭数雄の３割２分１厘）、１試合平均本塁打も０・３６本から０・２３本と大きく落ち込んだ。８月には全９球団が満州（現中国東北部）で２試合総当たりで計７２試合を開催。雨が多く、ただでさえ反発力の低いボールが湿気を含んだことで投手戦が続き、タイガースの三輪八郎、阪急・石田光彦と、この年の５度のノーヒッターのうち２度は満州（大連満倶球場）での達成だった。

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