通算250盗塁、13年連続二桁盗塁達成のロッテ・荻野の今「そんなにスピードはない」

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2022.8.22(月) 10:25

通算250盗塁を決めたときのロッテ・荻野貴司 (C) Kyodo news

◆ 通算250盗塁、13年連続二桁盗塁達成

 ロッテの荻野貴司は、7月17日のソフトバンク戦で通算250盗塁を達成し、8月11日のソフトバンク戦で新人から13年連続二桁盗塁を達成した。昨季、史上最年長で盗塁王のタイトルを獲得するなど、今年の10月で37歳を迎えるチーム最年長のベテランは“足”での貢献度は若手の頃と変わらず今も高い。

 シーズン中に盗塁や、次の塁を狙った走塁をするための準備は、変わらず行っている。1月の自主トレでは反応の練習のひとつとして、一塁ベースの後ろに立つスタッフが手を叩く音にあわせて走ることもあれば、投手役に牽制などを入れてもらい実戦を想定した走塁練習も繰り返し行ってきたが、今季に向けて膝の調子があまりよくなかったため、自主トレ期間で行ってきた練習を春季キャンプ中に行った。

 盗塁の心構えについても過去の取材で荻野は「基本的にはピッチャーの雰囲気というか、ボワーンと見て、あんまり集中しないというか、ガッと見ない。全体を見て雰囲気をつかんで走っていますね」と話していたが、この2年で「(盗塁への)意識は特に変えていないですけど」と前置きしたうえで「あまり最近スタートがうまくきれないので、自重することが多くなってきました」と率直な思いを語った。

 確かに直近3年の盗塁を見ても、20年は初球盗塁が7盗塁、21年が4盗塁あったのに対し、今季は初球に盗塁を決めたのが1回しかない。今季ここまで11盗塁記録しているが、そのうち3球目以内で盗塁を決めたのも3個。初球からスタートすることが少なくなったのも、スタートがうまくきれていないことが関係しているのか訊くと「そうだと思います」と返ってきた。

▼ 荻野貴司の直近3年の盗塁数
2020年(19盗塁)
1球目:7盗塁
2球目:2盗塁
3球目:3盗塁
4球目以上:7盗塁

2021年(24盗塁)
1球目:4盗塁
2球目:5盗塁
3球目:7盗塁
4球目以上:8盗塁

2022年(11盗塁)
1球目:1盗塁
2球目:3盗塁
3球目:0盗塁
4球目以上:7盗塁

◆ 「順調に落ちてきている」

 それでも二桁盗塁を達成し、8月19日の楽天戦では1-1の3回二死一、二塁で、山口の打席中に一塁走者の中村奨吾が二塁盗塁を試みると、捕手が二塁に投げたのを見て三塁走者の荻野がスタートを切りホームインした。素人目には、まだまだスピードは衰えていないように見える。

 ただ本人は「順調に落ちてきている。そんなにスピードはないと思います」と口にする。具体的に「自分で走っていても感じますし、スタートを切れなくなったというところで感じています」と説明した。

 落ちてきたスピードを技術でカバーしようとしているのだろうかーー。

 「カバーできるところはカバーしていきたいですし、そんなに技術がある方ではないので、ビデオでピッチャーを見ながらやっています」。スピードが落ちたことを受け入れ、そのなかでどうやったら盗塁を成功できるのか思考を張り巡らせている。

 「やっぱり小ちゃいし、そんなにパワーがない。自分も目立とうと思うと、走るしかないなと思った。入団した当時の西村監督が、そういうタイプの方だった。僕に求められているのは、そういう選手なのかなと思って、走らなあかんなと思っていました」とプロの世界で生き抜くため、自身の最大の武器である走塁技術を新人時代から磨いてきた。

 通算200盗塁を達成した時には「区切り、積み重ね」と話していたが、通算250盗塁を達成したときも「(通算200盗塁達成のときと)同じ気持ちですね」と変わらない。これまでも“積み重ね”と話してきたように、スピードの衰えと向き合いながら、まだまだ盗塁を積み重ねていくはずだ。和田康士朗、髙部瑛斗といった俊足の若手選手が台頭してきたが、荻野も彼らにはもっていない経験、技術で素晴らしい盗塁を披露し続けて欲しい。

▼ 荻野貴司の年度別盗塁数
10年:25盗塁/46試合
11年:14盗塁/23試合
12年:13盗塁/61試合
13年:26盗塁/102試合
14年:15盗塁/40試合
15年:18盗塁/82試合
16年:16盗塁/71試合
17年:26盗塁/103試合
18年:20盗塁/78試合
19年:28盗塁/125試合
20年:19盗塁/53試合
21年:24盗塁/143試合
22年:11盗塁/59試合
※盗塁数/出場試合数
※2022年8月21日現在

取材・文=岩下雄太

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