「しっかり体も動いているし、自分のやりたいこともできているので、いい時間を過ごせています。シーズンオフにちゃんとケアをしたことが結果となって徐々に出てきているなと思います」
ケガの影響で二軍スタートとなった今年の春季キャンプだが、T-岡田選手自身は手ごたえを感じている。このオフは体を治すことに専念したというが、その成果がすでに出ているようだ。
昨シーズンのことを尋ねると、「少し気にしすぎていたかもしれない」と省みた。「チームを引っ張りたいという気持ちは強かったけど、周りばかり見て消極的になってしまった自分がいた。気にせずにどんどんいけたらよかったですけどね。今年はあまり気にせず、厚かましいくらいにいこうかなと」
昨年、開幕前からチームは大きな期待を受けていたが、「最初からチグハグしていた。みんながうまくかみ合わなかった」という印象があったという。そんな中、大事な時期にケガでチームを離れることになった。
「今シーズンは、最低限の目標として全試合出場にこだわっていきたい。それなりに成績も残さないと全部の試合に出続けることはできないですけどね。とにかくそれが最低ラインの目標です」
もう一つの課題は、何をするにも楽しんでやること。「苦しい時、結構考え込んでしまうタイプなんですよ。なかなか結果が出なかったりすると暗くなってしまうんです。周りからも考え込むなと指摘されて、なんとか切り替えようと思っても、去年はうまくいかなかった。結局、そこから抜け出すことができなかったからそういう結果になってしまいました。今年は野球を始めた頃の気持ちを思い出して、今までより楽しくやっていきたいと思っています」
いいイメージは、鮮明に残っている。登録名をT-岡田に変更し、本塁打王を獲得した2010年の8月5日に行われた埼玉西武ライオンズ戦。藤田太陽投手から打ったホームランは、思い描いた理想のバッティングから生まれたものだった。
「あの年は苦しんでなかなか成績が上がらない中、当時の岡田監督が我慢して僕を使い続けてくれて、その結果いい成績を残すことができました。あの打席では、打つ前から『これはいける』と確信しましたね。バッティング練習のように気負わず、思い通りに打てたという感覚です。そういう打席が増えていけば、今後もいい結果が出せると思います」
理想とするのは、同じ背番号55を背負った松井秀喜氏(現ニューヨーク・ヤンキースGM特別アドバイザー)のバッティング。「あれだけずっと試合に出て、ずっと安定した成績を残せていた。どういう考え方でどういう練習法を取り入れていたのか、いろいろと話を聞いてみたいなという思いはありますね」
これから先、チームを引っ張っていくために心掛けることは、気持ちを前面に出すこと。「2年後、3年後には、チームになくてはならない存在というか、チームに必要とされる選手、いや、選手というか『人間』ですね。そういう存在になっていたい。周りから変わったなと言われるように、何をするにしても強い気持ちは常に持っていないといけないかなと」
団結力こそオリックスの魅力だと言うT-岡田選手は、「昨年以上にチームワークがある。今年は一つになれると思います」と語っている。そのチームワークを牽引する「厚かましい」T-岡田選手の姿を、今年はたくさん見られると期待したい。
文・岡田真理
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