2012年から始まったアジアウインターベースボールリーグ
冬季に若手選手が実戦を経験できるウインターリーグの創設は、NPBにとって念願だった。かつては、高知県を中心とした黒潮リーグ(1991年~2000年)、ハイサイ沖縄リーグ(1996年~2000年)などがあり、2004年からは宮崎県でみやざきフェニックス・リーグという教育リーグが行われているが、これらはいずれも10月に終了する。11月以降は、日本は冬季となり、野球をする環境ではなくなる。
アメリカ大陸では、この時期からウインターリーグが始まり、多くの若手選手に実戦経験の場を提供していた。日本からも選手が参加していたが、NPBもこれに倣ってアジア地域で本格的なウィンターリーグの創設を考え、CPBL(台湾プロ野球)に協力を要請した。
当初は資金不足などの問題もあり、計画が発表されては立ち消えになっていたが、台湾(中華民国)政府もこれに協力し、2012年からCPBLが主催し、各国のチームを招聘する形でアジアウインターベースボールリーグ(AWBL)が始まった。2014年は「第1回21U野球ワールドカップ」(現在のWBSC U-23ワールドカップ)が台湾で開催されたこともあり、調整がつかずに中止となったが、この年を除いて今年まで6回開催されている。
各年の順位は以下の通りだ。(KBO:韓国プロ野球、CPBL:台湾プロ野球、JABA:日本社会人 NPB東:NPBイースタン、NPB西:NPBウエスタン)
【2012年】
1 NPB 21試19勝2敗0分 勝率.905
2 CPBL白 22試12勝10敗0分 勝率.545
3 CPBL紅 19試8勝11敗0分 勝率.421
4 ドミニカ選抜 20試2勝18敗0分 勝率.100
【2013年】
1 NPB 22試16勝5敗1分 勝率.762
2 KBO 22試13勝8敗1分 勝率.619
3 CPBL 21試8勝13敗0分 勝率.381
4 ドミニカ選抜 21試5勝16敗0分 勝率.238
【2015年】
1 台湾アマ 18試11勝5敗2分 勝率.688
2 NPB 19試11勝6敗2分 勝率.647
3 KBO 18試8勝5敗5分 勝率.615
4 CPBL 18試5勝9敗4分 勝率.357
5 欧州連合 15試1勝11敗3分 勝率.83
【2016年】
1 NPB西 18試16勝2敗0分 勝率.889
2 NPB東 18試9勝6敗3分 勝率.600
3 KBO 18試9勝7敗2分 勝率.563
4 台湾アマ 18試6勝8敗4分 勝率.429
5 欧州連合17試4勝12敗1分 勝率.250
6 CPBL 17試3勝12敗2分 勝率.200
【2017年】
1 JABA 19試12勝5敗2分 勝率.706
2 CPBL 19試11勝7敗1分 勝率.611
3 KBO 19試9勝8敗2分 勝率.529
4 NPB東 19試10勝9敗0分 勝率.526
5 NPB西 18試6勝11敗1分 勝率.353
6 米欧連合 18試4勝12敗2分 勝率.250
【2018年】(12月15日まで)
1 NPB東 18試13勝5敗0分 勝率.722
2 CPBL 18試10勝7敗1分 勝率.588
3 JABA 18試8勝7敗3分 勝率.533
4 KBO 18試5勝10敗3分 勝率.333
5 NPB西 16試3勝10敗3分 勝率.231
アジアウインターリーグに派遣された若手の中には、のちにスターに上り詰めた選手も数多くいる。1年目の2012年には、東京ヤクルトから高卒2年目の東京ヤクルト山田哲人が派遣され、0本塁打ながら打率.358、11打点と活躍した。
2015年には巨人岡本和真が打率.388、3本塁打20打点、福岡ソフトバンク上林誠知が打率.343、3本塁打、14打点と好成績を収め、投手では福岡ソフトバンク加治屋蓮が1勝1敗、防御率1.04を記録。2016年にはオリックス吉田正尚が打率.556、6本塁打29打点と驚異的な成績を収めている。今季のパ・リーグ新人王に輝いた東北楽天の田中和基は2017年に打率.254ながら7盗塁を記録した。
アジアウインターベースボールリーグは、若手の登竜門でもある。今季はリーグ戦終了時点で東京ヤクルト塩見泰隆が打率.426、4本塁打、同じ東京ヤクルトの村上宗隆が4本塁打15打点とそれぞれ2冠に。千葉ロッテの安田尚憲は打率.321で13打点、東北楽天の岩見雅紀も3本塁打を放っている。果たして、この中から誰が、次なるスター選手となっていくことだろうか。
(広尾晃 / Koh Hiroo)
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