33年ぶりの高卒ドラ1対決・プロ初先発・初安打・初盗塁・初完封勝利。パ・リーグの未来が盛りだくさんの9月29日

パ・リーグ インサイト 馬塲呉葉

2017.9.29(金) 00:00

9月29日、札幌ドームで行われた楽天戦。北海道日本ハムの先発マウンドに上がるのは、今季初先発となる高卒ルーキーの堀投手。そして楽天の先発は同じく高卒ルーキーの藤平投手だ。ドラフト1位の高卒ルーキーが先発として一軍公式戦で投げ合うのは、1984年の加藤伸一氏(南海)と小野和義氏(近鉄)以来、33年ぶりのことである。

両先発投手は、いずれも昨年の高校野球界を沸かせたスターの卵だ。藤平投手は、横浜高校のエースとして、堀投手は広島新庄高校のエースとして、それぞれ昨夏の甲子園に出場し、存在感を発揮した。「第11回 BFA U-18アジア選手権大会」ではともに日の丸を背負ってチームの優勝に貢献し、同年のドラフト会議で1位指名を受ける。2人は甲子園に限らず、高校時代に対戦経験はなかった。

堀投手は、今季8月に一軍初昇格。9日の楽天戦で中継ぎとしてプロ初登板を果たし、1回を無失点に抑える。13日の福岡ソフトバンク戦でも1回を無安打無失点で終わらせたが、3試合目の登板となった17日の千葉ロッテ戦で1イニング2被弾。翌日登録を抹消され、先発としての調整を進めてきた。

藤平投手は、交流戦期間中の6月16日の阪神戦でプロ初先発。今年の高卒ルーキーの中では12球団最速の一軍デビューを飾った。3試合目の登板となった8月22日の千葉ロッテ戦でプロ初勝利を手にするとともに、そこまで6連敗を喫していたチームを救う。9月5日の北海道日本ハム戦では、6回まで無安打無失点という快投を披露し、2勝目。以降は連敗を喫しているものの、投球の組み立てやマウンド度胸、お立ち台での受け答えは高卒ルーキーとは思えない風格を醸している。

注目の黄金ルーキー対決となった北海道日本ハムと楽天の一戦。堀投手は初回、本拠地とはいえ慣れないマウンドにバランスを崩し、2球目で茂木選手に内野安打を許す。しかし女房役の清水選手が次の島内選手の犠打を阻み、結果的に楽天打線の攻撃を3人で終わらせた。

一方その裏、藤平投手は高卒ルーキーとは思えない落ち着いたマウンドさばきだった。1死から松本選手に安打を浴び、四死球で満塁のピンチを迎えるも、レアード選手、横尾選手を打ち取って無失点。あわや満塁弾かという横尾選手の大ファウルにも表情を変えず、見事に三振を奪ってピンチを切り抜けた。

直後の2回表、堀投手はアマダー選手から一発を浴びて1点を失う。しかし、以降は粘り強く投げ抜き、楽天打線に追加点を許さない。藤平投手は3回裏に満塁を招き、またも自力でそのピンチを切り抜ける。北海道日本ハム打線の好打順に対して踏ん張ったが、綱渡りのような展開が続いたためか、3回無失点でマウンドを降りることになった。

最終的に堀投手は5回までを投げ、被安打6、奪三振3、与四死球0、失点1という、高卒ルーキーの初先発としては申し分のない投球内容で降板。味方打線の反撃を信じて2番手以降にマウンドを譲ったが、楽天の小刻みな継投の前に北海道日本ハムは得点できず。茂木選手の2ランで追加点を挙げた楽天が3対0で勝利し、堀投手は敗戦投手となった。だが、一軍で毅然と5回を投げ切ったことは、確実に「次」につながる経験となったに違いない。

また、ZOZOマリンスタジアムでは、2年目の成田投手もプロ初先発登板。今季は中継ぎで2試合に登板し、いずれも無失点だったため、満を持してまっさらなマウンドに上がった。結果的に5回と6回にそれぞれ被弾し、敗戦投手となってしまったが、チェンジアップやスライダーを巧みに駆使し、4回表までオリックス打線を1安打に抑える好投を見せた。

成田投手が降板した7回表からは、大卒ルーキーの佐々木投手がその後を受けた。今季の中盤はなかなか結果が出ず、防御率も5.98まで悪化するなど苦しんだが、ファーム調整を経て一軍に復帰した最初の登板で完投勝利。本来は28日の試合に先発する予定だったが、雨天中止となったため、今日の試合で中継ぎ登板し、3回を無失点に抑えた。今季は史上初「5球団競合の外れ1位指名」を受けるだけのポテンシャルを示しつつ、佐々木投手自身の将来にとって、収穫の多いルーキーイヤーになっていることだろう。

北海道日本ハムの堀投手、楽天の藤平投手、千葉ロッテの成田投手、佐々木投手など、今日は、これからの球界を担うかもしれない新星が、大きな経験値を得た日となった。育成から這い上がり、支配下登録を勝ち取ったオリックスの大木選手も、今日の試合でめでたくプロ初安打と初盗塁を決め、同じくオリックスの吉田一投手は自身初の完封勝利を挙げている。

悲喜こもごも。今日という日が納得のいくものになった選手もいれば、痛い経験をして何かを学ぶ日になった選手もいることだろう。いずれの経験も糧にして、より多くの選手たちが球界を引っ張る選手になってくれることを願ってやまない。

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パ・リーグ インサイト 馬塲呉葉

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