高卒選手がどのような成長を遂げるかということは、チームの将来を占う上で大事な要素の1つである。まだ身体ができあがっておらず、経験も浅く、独り立ちするまでにある程度の時間を要する高卒選手たち。しかし今季のパ・リーグを見てみると、高卒3年目の選手が存在感を示しつつあることに気づく。今回は、今季一軍で頼もしい姿を見せてくれた「高卒3年目」の選手たちを紹介していきたい。
※数字は全て9月28日の試合終了時点のもの
【北海道日本ハム】
石川直投手:37試合0勝1敗7ホールド 49回2/3 51奪三振 防御率4.35
清水選手:57試合100打数20安打0本塁打6打点 打率.200
太田選手:37試合76打数13安打1本塁打5打点 打率.171
淺間選手:19試合42打数7安打0本塁打3打点 打率.167
高卒3年目にあたる多くの選手が、一軍での出場機会を得た北海道日本ハム。中でも石川直投手は、今季の開幕から中継ぎとして奮闘し、9月に入ってからは先発起用が続いている。9月26日のオリックス戦では、6回途中を投げて2失点と上々の投球を披露。191センチの大型右腕がこの先どのような活躍を見せてくれるのか、期待が膨らむ。
野手陣では、清水選手の存在感が際立つ。昨季、ポストシーズンでも一軍メンバー入りした期待の若手捕手は、今季自身初となる開幕一軍登録。9月は先発マスクを被る機会も増えており、9月28日の楽天戦ではサヨナラ勝利を呼び込む二塁打も放った。次代を担う捕手の英才教育は着々と進んでいるようだ。
淺間選手は、昨季までに98試合に出場し、プロ初本塁打も放つなど順調にステップアップを果たしていたが、今季は足踏み。ファームでは3割を超える打率を残しており、来季以降に期待がかかる。太田選手は7月に自身初の一軍出場を果たすと、主に二塁手として出番を増やし、ファインプレーも見せた。熾烈なポジション争いを勝ち抜くことができるのか、注目したい。
【楽天】
安樂投手:10試合1勝5敗51回 37奪三振 防御率4.06
小野投手:2試合0勝0敗2回 1奪三振 防御率9.00
済美高校からドラフト1位で入団した安樂投手。入団直後は故障に苦しみ、ファームでの登板も少なかった。しかし昨季、安定したコントロールとキレのある速球を武器に3勝を挙げ、終盤は3試合連続でハイクオリティ・スタートを達成する圧巻の投球を見せる。
今季は更なる躍進が期待されたが、故障で出遅れてしまい、6月14日の東京ヤクルト戦で初登板を果たした。6月30日の福岡ソフトバンク戦で1勝を挙げ、8月17日の埼玉西武戦では、リーグを代表する左腕である菊池投手と、壮絶な投手戦を繰り広げた。
1年目から一軍登板を重ねている小野投手は、今季も2試合に登板。いずれもソロを浴びて1イニング1失点と課題はあるものの、昨季13回1/3の登板で9四球を与えた制球力には改善の兆しが見える。2投手が切磋琢磨し、チームの屋台骨を支える投手になる日が、そう遠くないことを願いたい。
【埼玉西武】
髙橋光投手:7試合3勝4敗39回1/3 30奪三振 防御率4.12
2015年の8月、史上最年少で月間MVPに輝く活躍を見せ、甲子園優勝投手らしいスター性を発揮した高橋光投手。しかし昨季、22試合に投げて11敗と、2年目にしてプロの洗礼を浴びることに。復活を期して臨んだ今季は開幕ローテーションに入ったが、5月に右肩の違和感で離脱。そこから一軍のマウンドに帰ってくるまで、実に4カ月を要した。
9月24日のオリックス戦では、得意のフォークと威力のある直球で強気に攻め、6回2失点(自責点1)の好投。復帰後初登板で今季3勝目を飾った。帰ってきた若きエース候補は、厳しい戦いが予想される「2017 ローソンチケット クライマックスシリーズ パ」においても、チームの活力となれるだろうか。
また、同じく高卒3年目の山田選手も、今季一軍に帯同し、貴重な経験値を得た。強者揃いの内野陣に割って入ることはできるか。来季以降の活躍に注目したい。
【千葉ロッテ】
香月選手:19試合41打数8安打0本塁打2打点 打率.195
昨季の終盤に一軍に昇格し、プロ初安打を放って確かな一歩を踏み出した香月選手。今季は4月下旬に一軍昇格を果たすと、昇格と抹消を繰り返しながら19試合に出場し、4月23日にプロ初打点を挙げた。ファームではチーム最多となる9本塁打をマークし、虎視眈々とその打棒を磨いている。
【オリックス】
宗選手:5試合11打数1安打0本塁打0打点 打率.091
類まれな身体能力を武器に一軍で奮闘しているのが、「エンジョイ・ベースボール」が信条の宗選手だ。昨季は一軍デビューを果たし、3試合に出場したものの、4打席で3三振と悔しい結果に終わった。しかし今季は、ファームで存在感を示し、8月に一軍昇格。9月27日の北海道日本ハム戦では、外角低めの球を巧みに逆方向にはじき返し、プロ初安打を決めた。新進気鋭の逸材がその頭角を現してきたことは、来季の大きな楽しみの1つになる。
【福岡ソフトバンク】
松本裕投手:15試合2勝4敗58回1/3 43奪三振 防御率4.78
栗原選手:2試合2打数0安打0本塁打0打点 打率.000
何といっても注目は、2014年にドラフト1位で入団した松本裕投手だ。昨年一軍デビューを果たし、今季は5月27日にプロ初の先発マウンドに上がった。4回1/3を投げて6失点と厳しい結果になったものの、6月3日の横浜DeNA戦では6回途中3失点と試合を作り、見事プロ初勝利を挙げた。その後は、中継ぎと先発両方の役割を果たしながら、ここまで15試合に登板している。もちろんまだ課題はあるものの、ドラフト1位としての輝きを随所に見出すことができるだろう。
栗原選手は今季初めて一軍の舞台に立った。ファームで、捕手としては斐紹選手に次ぐ230打席に立ち、打率.271、3本塁打とパンチ力を発揮している。
「高卒3年目」と言えば、ルーキーではないとはいっても、まだ若手の域を脱していない。一軍に居場所を見出しつつある選手もいれば、ファームでじっくり鍛えられている段階の選手もいるだろう。チームという大きなものよりもまず、自分自身と向き合いながら、この世界で生き抜く術を学ぶ時期。それでも、いずれこの中から、球界を代表するスター選手が現れるかもしれない。無限の可能性を秘めた選手たちの将来に思いを馳せつつ、初々しさの抜け切らない彼らの奮闘を、あたたかく見守っていきたい。
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