楽天の高梨投手が、チームの貴重な左の中継ぎとして、ルーキーらしからぬ存在感を見せ付けている。今季ここまでの成績は、28試合に登板して27回1/3を投げ、1勝0敗7ホールド。8月20日の登板後、防御率はついに0点台に突入した。
川越東高校時代に甲子園出場経験はなかった。進学した早稲田大学3年時に、六大学野球史上3人目となる完全試合を達成し、一躍野球ファンに名前を知られるようになる。だがその後卒業するまで満足な成績を残すことができず。チームメイトだった北海道日本ハムの有原投手、千葉ロッテの中村選手がドラフト1位で指名を受ける中、社会人野球の強豪・JX-ENEOSへの入社を決めた。
社会人野球でも高梨投手の苦闘は続き、最後までチーム内における主力の座をつかむことはできなかった。しかし、生き残るために選んだサイド転向が楽天スカウトの目に留まり、2016年のドラフト9位でプロ入りを果たす。
ドラフト下位での入団となったが、プロ入り後は臆することなくアピールを続けていった。キャンプや練習試合で首脳陣から好評価を得ると、オープン戦でも7試合に登板して防御率1.42と結果を残し、開幕一軍の座をつかみ取る。
そして、プロ入り3試合目の登板となった4月6日の福岡ソフトバンク戦で1イニングを無失点に抑え、見事12球団の新人一番乗りとなるプロ初勝利を手にした。その後も貴重な左のサイドスローとして開幕から6試合連続無失点という好投を続けていたが、4月21日の福岡ソフトバンク戦でついにプロ初失点を喫すると、続く4月26日の千葉ロッテ戦では0回1/3を5失点と崩れ、ファームでの再調整を余儀なくされてしまう。
しかし高梨投手は、さらなる進化を遂げて一軍の舞台へと戻ってくる。再昇格となった6月7日の横浜DeNA戦から17試合連続無失点という圧巻のピッチングを披露し、次第にホールドが付く場面での登板機会も増加。6月の再昇格以降に喫した失点はわずかに1点と、ルーキーとは思えない抜群の安定感を誇っている。
左のサイドハンドと聞くとワンポイント起用が多いという印象を抱くが、高梨投手の場合はしっかりと1イニングを任されるケースが多くなっている。時には回またぎもこなしてみせるなど、単なる左殺しにとどまらず活躍の場を広げてきた。
入団会見で「アピールも含めて、自分自身に“◯◯な男”というキャッチコピーをつけてください」と尋ねられた高梨投手は、「私は“少数派の男”です。左のサイドスローという時点で少数派であり、こうしてプロ野球選手になれたということでも少数派です。その中でも生き残っていかなければいけないと思うので」と語り、プロ生活を送っていくにあたっての強い決意を滲ませていた。
サイドスローへの転向という大きな決断を下し、プロでも1年目から確かな足跡を残している高梨投手。入団会見で語った「ゆくゆくは後半のイニングを任されるような投手になりたいです」という目標が達成されるときは、すぐそこまで近づいてきている。
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