MLBではマントルやローズら偉大な両打が存在
MLBとNPBの野球にはいろいろと違いがあるが、その1つに「両打=スイッチヒッターの比率」がある。MLBでは各球団に両打の打者がいて打線に名を連ねているが、NPBでは非常に少ない。
MLBの規定打席以上の打者は現地9月1日の時点で146人いるが、その打席別の比率はこうなっている。
○ア・リーグ 75人
右打39人(52%)左打23人(31%)両打13人(17%)
○ナ・リーグ 71人
右打34人(48%)左打25人(35%)両打12人(17%)
(シーズン中に移籍し、両リーグにまたがって規定打席に達している選手が6人いる)
規定打席以上の2割近くは両打だ。過去には536本塁打したミッキー・マントルや史上最多の4256安打を記録したピート・ローズなど偉大な両打打者がいる。
両打は1870年代に活躍した内野手、ボブ・ファーガソンが始めたと言われ、長い歴史を持つ。MLBでは両打の選手は珍しい存在ではないのだ。
しかし、NPBでは、今シーズン両打で規定打席に到達している選手はいない。NPBの8月末時点での現役選手は育成枠を含めて914人だが、その比率は次の通りだ。
右打506人(46%)左打387人(42%)両打21人(2%)
両打の21人は以下の顔ぶれだ。
○パ・リーグ
松井稼頭央(西)金子侑司(西)田中和基(楽)佐野皓大(オ)杉谷拳士(日)姫野優也(日)加藤翔平(ロ)三家和真(ロ)
○セ・リーグ
上本崇司(広)熊谷敬宥(神)西岡剛(神)植田海(神)三嶋一輝(De)西森将司(De)メルセデス(巨)若林晃弘(巨)マルティネス(巨)藤井淳志(中)アルモンテ(中)モヤ(中)ハフ(ヤ)
このうち三嶋、メルセデス、ハフは投手だ。
2000本安打を打った松井稼、首位打者を取った西岡剛などの球史に名を刻む打者もいる。また今、売り出し中の田中和基や植田海の名前もあるが、日本の両打打者はMLBに比べれば圧倒的に少ないことがわかるだろう。
両打を広く知らしめたのは巨人V9時代の柴田勲
NPBで両打の始祖は、草創期に阪急などでプレーしたアメリカ国籍の日系2世、堀尾文人だと言われている。しかし、あとに続く選手は長く出なかった。
両打=スイッチヒッターの存在を日本のファンに広く知らしめたのは、巨人V9時代のリードオフマンだった柴田勲だ。柴田は「赤い手袋の盗塁王」として2000本安打も記録した。
その後は、松本匡史、松永浩美、高橋慶彦、正田耕三、屋敷要、大島公一、金城龍彦などの両打の名選手を輩出してはいるが、その数はMLBに比べて圧倒的に少ない。
野球の投手は75~80%が右投げだ。右投げの投手には左打者が有利だとされる。このため、本来右打の打者が左打に転向することはよくある。右投げ左打の打者の多くは、本来、右利きで右打だったとされる。
イチローや松井秀喜など右投げ左打の名選手がたくさん出ていることから、日本の少年野球や高校野球では、右打から左打へと転向する選手がかなりいる。指導者もそれを推奨する。打線に変化が付くからだ。
しかし、日本のアマ球界では両打を推奨する指導者は少ない。プロを含めて実績が少なく、両打の指導をできるコーチがアマ球界にいないことが大きいと思われる。このため、日本では両打はプロ入りしてから習得する場合が多い。
両打の打者は左右どちらの投手がマウンドに上がっても対応できる。両打の強打者は指揮官には極めて便利な存在だ。また、両打の打者はスピード感がある選手が多い。いろんな意味で野球に複雑な要素を加味して、面白くする存在だ。
NPBにも両打のスター選手がもう少し出てきてもよいのではないかと思う。
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