徳島の独立リーグ日本一に貢献、高校卒業から1年でプロ入り
前半戦を首位で折り返した埼玉西武ライオンズ。打線は好調だが、救援陣には不安が残り、10年ぶりの優勝に向け若手の台頭にも期待が高まる。1軍を目指す若獅子を紹介する第4回目は、2017年のドラフト3位ルーキー、伊藤翔投手だ。
千葉県の横芝敬愛高では指名漏れを経験。高校卒業後、より早いNPB入りを目指し、独立リーグの徳島インディゴソックスに入団した。最速152キロの直球を武器に独立リーグ日本一に貢献し、見事に1年でNPB入り。さらに、春季キャンプではA班(1軍)入りし、自身が目標としていた開幕1軍も掴んだが、5月16日に出場選手登録を抹消され、現在はファームで調整を続けている。
1軍では中継ぎで8試合に登板したが、ファームでは先発を務めており、長いイニングを投げることで新たな課題が見つかったという。
「シーズンの最初は中継ぎで投げていて、勢いだけでやっている部分がありましたが、最近はファームで先発して、ローテーションで回っているので、違った部分を感じるようになりました。中継ぎは100で行けるけど、先発はロングで投げないといけない。なので、ランナーを背負ったら力を入れますが、そこで自分の思ったボールが投げられない。徳島では先発で投げていて、8回、9回を投げても自分の思ったボールが投げられていたのに、今は投げたいボールとほど遠い。自分に腹が立ちました。もう1度、考え直さなきゃいけないと思います」
先発した6月21日のイースタン、横浜DeNA戦では5回を投げ8被安打、満塁打含む2被本塁打で自責点5と打ち込まれた。2本の本塁打は、自身の武器でもある直球を打ち返された。
「ストレートの力不足を一番感じました。もっと磨きをかけないといけないと思います。キャッチャーに話を聞くと、球の初速と終速が違って、球速差が出ていると言われました。だからストレートも打たれる。リリースからキャッチャーミットまでのスピードが変わらないストレートを投げるために、下半身と上半身の連動を見直し、フォームからもう一度取り組んでいます」
ほろ苦い本拠地初登板、2/3回で被安打4&自責点2
子供の時から自信を持っていたというストレート。ストレートに磨きをかければ変化球も生きてくると考えており、スピードボールへのこだわりは変わっていない。
「まだ体もできていないので、鍛えていけばスピードも上がってくると思う。そのスタイルは崩さず、キャッチャーの意見をちゃんと聞きながら、球速プラスアルファで、ストレートの質やキレも磨いていきたいと思います」
伸びのあるストレートとともに、マウンド上で飛び跳ねるようなピッチングフォームも伊藤の代名詞となっているが「あれが出る時は調子がいい時です」と笑顔を見せた。
「土肥ピッチングコーチからは、体が小さいから全身を使って投げるように言われています。外野のバックホームみたいなイメージで投げています」
本拠地初登板となった4月22日の千葉ロッテ戦は2番手で登板し、2/3回を投げ被安打4、自責点2で降板。その試合を振り返り「緊張してしまった」と反省を口にした。
「メットライフドームはオープン戦で何回か投げていたのですが、初登板は緊張しました。お客さんがたくさん入っていて、ブルペンから出ていく時に拍手で送ってもらい、レフトスタンドからの『頑張れ伊藤コール』も聞こえました。そこまでは気持ちよかったんですけど、プレーボールがかかってから緊張してしまいました」
「雲の上の存在」今井に追いつけ追い越せ
6月13日にプロ初登板初勝利を挙げた今井達也投手とは同級生。栃木・作新学院高で夏の甲子園を制覇しただけでなく、U-18日本代表としてアジア野球選手権でも優勝を経験している今井に対し「自分は大舞台の経験がないことを言い訳にしたくない」と、負けず嫌いの一面を見せた。
「試合を見ていましたが、初登板とは思えないピッチングでした。いきなり上に上がってああいうピッチングができる。今井は野球になるとスイッチが入り、マウンド上では全然違う。メンタルも強く、そこは見習うところです。僕がライバルと言っていいかわからないけど、同級生で同じポジションですから、意識するところはあります。早く追いついて、いつか一緒にローテーションを回りたいです」
と、身近にいるライバルを意識している。
「やるべきこと、自分に足りないことがはっきり見えたのは、逆にありがたいこと」と現状を前向きに捉えている伊藤。日々成長を続ける19歳の右腕が、かつては雲の上の存在だったという今井とともに、先発ローテーションを担う日が楽しみだ。
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