元埼玉西武&オリックスの原拓也さんに聞くトレード秘話
補強期限となる7月終了まで残りわずか。今季はここまで3月に阪神・榎田大樹投手と埼玉西武・岡本洋介投手、4月に金銭トレードで北海道日本ハムの市川友也捕手が福岡ソフトバンクへ。
そして今月はオリックスの伊藤光捕手、赤間謙投手と横浜DeNAの高城俊人、白崎浩之内野手のトレード、また広島・美間優槻内野手と福岡ソフトバンク・曽根海成内野手のトレードが行われた。
開幕直前、シーズン中と選手にとっては予期せぬ移籍となるため、心理的な影響も少なくない。現役時代にトレードを経験した原拓也さんに当時の心境を語ってもらった。
埼玉西武、オリックスで活躍し、2016年にユニホームを脱いだ原さん。現在は東大阪市内の野球塾「ブリスフィールド東大阪スポーツアカデミー・ベースボールスクール」で子供たちに指導を続けている。そんな原さんは埼玉西武時代の2012年オフにトレードを経験した。
「あの時は中島宏之さん(現オリックス)が海外に挑戦することが決まっていたので、遊撃のポジションを何とか取る気持ちでいっぱいでした。当時は秋のキャンプを西武ドームでやっていて、休みの日に家にいた時に突然球団から電話があって。『明日スーツで球場にきてくれるか?』と。“初めはクビになるの?"って感じでした」
球団からの電話を終えるとチームメートの中島、栗山にすぐさま連絡を取った。2012年に1軍で86試合に出場していたこともあり、先輩2人からは「原ちゃん、それトレードやん……」と言われ、我に返ったという。
頭は真っ白、「同じ野手だったので、“またなんで?”って…」
翌日、重い足取りで球団事務所に向かった。約5分間の会談だったというが頭は真っ白のままだったという。
「フロントの方と話した内容もほとんど頭に入ってなかった。覚えているのは『今までよくやってくれてありがとう』ぐらいですね。“なんで?"ってそれだけでした(笑)」
球団との話し合いでは相手球団(原さんの場合はオリックス)の交換選手の名前もその場で知らされた。「同じ内野手の山崎浩司さんでしたね。同じ野手だったので、“またなんで?"って(笑)」。
関東球団の埼玉西武から関西球団のオリックスに移籍となれば住む場所も変わる。慣れ親しんだ東京から関西での生活は不安もあったという。引っ越し費用などは相手球団から支度金として選手に渡され、それを元手に住居を探した。
「同い年の坂口(現東京ヤクルト)に頼んで、不動産を教えてもらって。もう野球に専念したかったので坂口と同じマンションが空いていたので、そこに住みました。試合などで関西にはいきますが、住む場所などは全く知らなかったので。僕の場合はオフシーズンでしたが、シーズン中のトレードは大変だと思いますね」
記者会見は「凄い顔していたと思います…」
トレード発表から5日後。入団会見がオリックスの秋季キャンプ地・高知で行われた。オリックスは同時期に巨人から東野峻投手、山本和作内野手もトレードで獲得していたため3選手は同じ日に会見に臨んだ。
「今思ったら凄い顔していたと思いますよ(笑)。暗い顔して笑顔も全くない。まだ未練があったんでしょうね。多分、いつか西武に帰った時は……みたいなことも言ったと思います」
オリックスに移籍してからは捕手以外の内野を全て守るユーティリティープレーヤーとして活躍。2014年に福岡ソフトバンクと優勝争いを演じた10・2決戦では7回に代打で登場し同点タイムリーを放つなど勝負強さを発揮した。
最近ではオリックス時代にチームメートだった伊藤、赤間が横浜DeNAへトレード移籍。「トレードを通告された時は『なんで?』って思うけど、本人にとってはチャンス。自分の時もそうだったけど、チームによって色々カラーがあるし雰囲気とかも全然違う。光(伊藤)にとっては絶対にいいトレードだったと思いますね。選手にとって一番大事なことは1軍の試合に出ることですから」
10年間、過ごしたプロ野球生活で学んだことは何か――。
「結局はどんなチーム、環境でも今、自分に何ができるか。過去じゃなくて今、その瞬間でどんなパフォーマンスができるかが大事。トレードを経験して違う景色を見ることができたこともいい経験です」
原さんは現在、将来のプロ野球選手を目指す子供たちの指導に汗を流している。
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