右アンダースロー対策で栗山、平沼、蛭間起用が的中
■埼玉西武 7ー2 北海道日本ハム(18日・ベルーナドーム)
埼玉西武が今季最長の6連勝でシーズン前半戦を締めくくった。6月30日から今季ワーストの8連敗を喫し最下位に転落していたが、一気に挽回し、首位に14.5ゲーム差の5位でターン。就任1年目の松井稼頭央監督の、臨機応変な起用が光った。さらに、伝統的に“夏に強い”ライオンズがオールスター明けの巻き返しを狙う。
前半戦最終戦となった、17日の北海道日本ハム戦。松井監督はスタメンにメスを入れて臨んだ。前日まで中村剛也内野手が5試合連続で4番に座り、連日勝利に貢献していたが、8月に40歳となるベテランだけに休養を入れる必要がある。そこで、中村とチーム最年長コンビを形成する栗山巧外野手が、2年ぶりに4番を務めた。栗山同様左打ちの平沼翔太内野手を「7番・三塁」で6月14日の巨人戦以来約1か月ぶりにスタメン出場させ、同じく左打者のドラフト1位・蛭間拓哉外野手を「9番・右翼」で5試合ぶりに先発オーダーに加えたのも、相手先発の右のアンダースロー・鈴木健矢投手に対応しやすいと考えたからだ。
この起用がズバリ的中した。2点を追う2回、先頭の栗山が3号ソロを放ち反撃ののろしを上げる。この瞬間、ベンチを温めていた中村も右腕を突き上げて歓喜した。さらに連打で無死二、三塁とし、平沼が中前へ同点適時打。「(鈴木とは)今年対戦があって1本打っていた(5月16日に3打数1安打)ので、その時の感じで少し打席の前に立って打ちました」とうなずいた。
さらに平沼は二盗を決めてチャンスを広げ、蛭間が無死満塁から相手2番手の左腕・福田俊投手の代わり端をとらえ、中前へ2点適時打を放ち勝ち越した。「出番の少ない選手たちが結果を出すことができたのは、しっかりした準備ができていることに尽きると思います」と松井監督。自分の采配よりも選手を称え、ミスがあっても、めったに選手を批判しないのが新監督のスタイルだ。
昨季も7、8月の月間勝率はリーグトップ
就任1年目の松井監督は、6月には10試合連続2得点以下の惨状に見舞われたが、ここにきて息を吹き返してきた。「勝ち負けがあり、同じ状況というものはなかなか無い中で、僕自身も日々反省しながら、いい経験をさせてもらっています。選手に助けられているところがありますし、僕がしっかりしなければいけないと思います」と前半戦を振り返った。
埼玉西武はなぜ、夏に強いのだろうか。実際、トータルで3位に終わった昨季も、7月の月間勝率.532、8月.538はいずれもリーグトップだった。今年も気温の上昇とともに、チーム状態も上がってきた。一説によると、本拠地ベルーナドームはグラウンドレベルとロッカールームの間に大きな高低差があり、練習と試合の前後に、長い階段を昇降しなければならない選手にはハードな環境。そこで体が鍛えられているのだとも言われる。
ちなみに、埼玉西武が2月に春季キャンプを張る宮崎県日南市南郷町の施設も、メーン球場、室内練習場、サブグランド&ブルペンの間に2段階の高低差がある。北海道日本ハム・稲葉篤紀GMが侍ジャパン監督時代に視察に訪れ、息を切らして「埼玉西武の選手が後半戦に強い理由がわかりました」と苦笑したほどだ。
松井監督は「僕らも毎日昇り降りしてますけれど、しんどいですよ?」と笑わせつつ、「夏場に強いのは大事。ここからが楽しみになってくると思います。8月になれば6連戦が続きますし、体調と準備が大事になってくるでしょう」と自信をのぞかせる。勝負はこれからだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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