まるで東北地方に連なる奥羽山脈のように分厚く長い壁だ。リーグ一番乗りの10勝に到達した楽天の快進撃を、バラエティー豊富なブルペン陣が支えている。ここまで13試合を消化したチームで6人の投手が4試合以上に登板しており、そのうち失点を記録しているのはフランク・ハーマン投手だけだ。そのハーマン投手も9試合に投げて1失点のみ。チーム防御率はリーグ4位の3.68で得失点差16も同3位でしかないが、それでも首位の座をキープできているのは、先発投手が降板してからもリリーフ陣が踏ん張り3点差以内の僅差の試合を9勝無敗とものにしていることが大きい。
抑えの松井裕樹投手はWBCに参加した疲れなど微塵も感じさせないフル回転で、ここまでリーグ最多の10登板、7セーブをマークしている。そして今季の楽天は、その松井裕投手への橋渡しが非常に円滑だ。8回を任されているハーマン投手と、その前を投げる森原康平投手はともに速球が主体の投球。ハーマン投手は193センチの長身から150キロを超える速球を繰り出し、森原投手は10イニングスを投げて四球をひとつも出していない。サウスポーの高梨雄平投手は左腕を振りかぶる直前まで身体の後ろにボールを隠し、サイドから投げ込む。起用されることの多い対左打者では12打数1安打の好成績だ。菅原秀投手はまだ4試合の登板だが、縦に割れる鋭いスライダーでプロの打者を腰砕けにさせている。
先述した投手のうち松井裕投手の前を投げる4人の選手が今季からの新加入だが、プロ7年目の福山博之投手も元気だ。中継ぎでは最も実績があるが、走者の残る場面からの登板も辞さず、ゴロを打たせる投球が持ち味のこの右腕をセットアップに固定しないあたりは梨田昌孝監督の意図を感じる。救援陣の中では早い回でマウンドに上がることが多いが、ここまで記録している6ホールドポイントはリーグ最多だ。
このままのペースで彼らが勝利に貢献し続ければ、球団史に揃って名を残すことになりそうだ。ここでは参考に、楽天でシーズン20ホールドポイント以上をマークした投手の成績を紹介する。
※HP=ホールドポイント
小倉恒投手(2006年)58試合 21HP 62回 防御率2.18
有銘兼久投手(2009年)54試合 20HP 43.2回 防御率5.15
青山浩二投手(2010年)41試合 20HP 52.1回 防御率1.72
小山伸一郎投手(2010年)55試合 20HP 59.2回 防御率2.41
青山浩二投手(2011年)51試合 26HP 71回 防御率2.79
片山博視投手(2011年)59試合 25HP 57.2回 防御率3.43
小山伸一郎投手(2012年)57試合 26HP 49.2回 防御率1.99
ハウザー投手(2012年)58試合 23HP 48.1回 防御率3.17
青山浩二投手(2013年)60試合 20HP 60.1回 防御率3.43
福山博之投手(2014年)65試合 27HP 67.1回 防御率1.87
青山浩二投手(2015年)61試合 35HP 57.2回 防御率2.81
クルーズ投手(2015年)52試合 21HP 49回 防御率3.12
福山博之投手(2015年)65試合 24HP 58.2回 防御率2.76
福山博之投手(2016年)69試合 23HP 69.2回 防御率2.71
ミコライオ投手(2016年)45試合 28HP 45.1回 防御率2.38
15人がシーズン20ホールドポイントに到達したが、30ホールドポイントに届いたのは2015年の青山投手だけ。プロ野球記録は2010年に中日の浅尾拓也投手がマークした59ホールドポイントで、パ・リーグ記録は2012年に北海道日本ハムの増井浩俊投手が残した50ホールドポイントだ。これらの記録に到達するには一ヵ月あたりの平均で約10ホールドポイントを挙げる必要があるが、現在の楽天救援陣の勢いを見ると日本記録の更新も決して不可能ではないように思えてくる。
楽天が球団創設初の日本一に輝いた2013年の67ホールドはリーグ最少だったが、それ以降でリーグ制覇を果たしたチームは2014年、2015年の福岡ソフトバンクが130、106、2016年の北海道日本ハムが120でリーグ最多だった。現在の楽天のように、救援陣に多くのホールドポイントがつく試合運びを続けられたチームが、秋に望ましい結果を得る。近年の傾向を見ているとそう断言できそうだ。
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