1軍初昇格の楽天西巻賢二 2軍で急成長の要因は?「チマチマやるのではなく…」

Full-Count 高橋昌江

2018.6.16(土) 13:49

楽天・西巻賢二【写真:高橋昌江】
楽天・西巻賢二【写真:高橋昌江】

15日の阪神戦で骨折したウィーラーに代わって昇格

楽天のドラフト6位ルーキー西巻賢二内野手が16日の阪神戦(楽天生命パーク)で初めて1軍に昇格する。13日のイースタン・リーグ日本ハム戦(森林どり泉)では5号3ランを打ち、12本の二塁打は15日現在、リーグ2位。15日の阪神戦で骨折したウィーラーに代わって、攻守に目覚しい成長を遂げる19歳に白羽の矢が立った。

「マジで、経験って大事だと思いました。みんな、経験、経験って言うけど、本当に経験って大事だなって感じています。全然、違いますよ、プロのボール。でも、ずっと見ることで、それが当たり前になるんですよね。開幕した頃よりはいろいろと対応できているかなと思います。最初、苦戦しましたね。今と比べてストレートをファウルすることが多かったんです」

楽天の高卒ルーキー・西巻は15日現在、イースタン・リーグで53試合に出場。224打席に立った。その1試合、1打席の経験を確実に積み上げ、成長してきた。

今年のキャンプから“持って"いた。藤田一也内野手がキャンプ直前に左ふくらはぎを痛め、西巻が1軍キャンプに参加。周囲の予想をはるかに超える奮闘ぶりを見せ、オープン戦では初打席で初安打を放った。開幕1軍はならなかったが、167センチ、68キロのルーキーはインパクトを残した。

しかし、キャンプ、オープン戦はただただ一所懸命に突っ走ってきただけ。イースタン・リーグが開幕すると、結果が出ずに苦しんだ。池山隆寛2軍監督や河野亮2軍打撃コーチから「結果をほしがるなよ」と声をかけてもらっていたという。

「ヒットが出ていなかった時、『結果をほしがるなよ』とは常々、言われていました。なんでもかんでも打ちにいくのではなく、ストレート待ちで、変化球が来たら見逃してもいいくらいの気持ちで割り切る。あとはしっかり、思い切って振ることだけ、と」

待望の初安打は「9番・遊撃」で出場した4月4日の西武戦(森林どり泉)。3回の第1打席で放った左中間への二塁打だった。8回には中越えの適時二塁打で初打点も挙げた。

仙台育英高校時代に自信喪失、進路をNPB以外にしたことも…

「そこから、気持ち的にも楽になりました。ヒットが出ないと落ち着かない部分が正直、あったので」
 つっかえが取れると、安打を記録していった。4月11日のロッテ戦(ロッテ浦和)では初アーチをかけた。その翌日には二塁打と三塁打を打つなど、長打も目立つようになってきた。その要因を「打席の中でしっかりとバットを振れているなって感じがします」

「チマチマやるのではなく、しっかり振っている感じはありますね。高校で1番バッターだった時はしっかり振るというよりは、とりあえず、出塁しようという意識が強くて。なんというか……うーん、チマチマやっていたような気がするんですよね、正直」

仙台育英高校時代、1年夏の甲子園決勝に代打で登場すると、平然と東海大相模・小笠原慎之介投手(現中日)から左前へ安打を放った。1年秋からは、2学年上の平沢大河内野手(現ロッテ)からポジションを引き継ぎ、ショートの不動のレギュラーになった。野球センスに溢れ、小柄な体格を気にさせない野球勘があり、優れた判断力と巧さもある。攻守でチームを救ってきた。

だが、順風満帆だったわけではない。2年春、スランプを経験した。「僕が打席に入ったらアウトカウントが増えるだけ。守備で打球が飛んできたら1個も捕らないみたいな」。3年春も打撃は好調だったとは言えない。非常に三ゴロが多く、90度あるはずのフェアゾーンを自ら狭めていた。昨年の春の大会期間中、試合後に「進路、決めました」と言ってきたことがある。それはNPBではなかった。プロ志望だったが、それくらい、自信をなくし、悩んでいたのだ。

14日の日本ハム戦(森林どり泉)。2四球の後の3打席目で、西巻は初球を空振りした。「僕、あんなしっかりした空振り、高校の時にしたことないですもん。打席の中で、なんて言うんですかね、自分のスイングをするというか。当てにいかないようには心がけています。高校の時は空振りを恐れていたのか。当てにいってしまってサードゴロ。ひどいと1試合で3つとかありましたもんね。今は外の変化球にしっかり自分のスイングをしてフライアウトとか、右方向へのいい当たりとかが出てきているんですよ。サードゴロはそんなに打っていないような気がします」。この、しっかりと自分のスイングをすることの原点はキャンプだという。

高校時代とはタイミングの取り方、間の時間も変化「皆さんしっかりとバットを振っている」

「キャンプを一軍で過ごしてみて感じたのは、みなさん、しっかりとバットを振っているなということでした」

タイミングの取り方、それによる間の時間も変わった。高校時代のタイミングでは間が短かったため、ボールを長く見ることができず、結果的に当てにいくような打撃になっていた。プロに入り、アドバイスを受けた時は早めに割っていたが、そうすると間が長くなり、合わなかった。今はその中間くらいがジャストだという。

「ボールの見え方が高校の時と違います。『これ、打てるぞ』みたいな感じがあるんですよ。来た球に対して、捉えればいいだけ。しっかり振って捉えれば、勝手にヒットゾーンに飛んでくれるだろうくらいの気持ちでいます。高校の時は外角に来たらあっちに打って、内角に来たらこっちに打ってとか、そんなことばかり考えていたんですよね。今は来た球に対して、しっかり振って捉えようとしか考えていないです」

まずは自分の形でバットを振り切ること。そして、タイミング。気づけば、ストレートに差し込まれることも減ってきていた。また「インコースをさばけるようになったなっていう実感がある」と言い、13日の5号本塁打は日本ハムの左腕・上原の内角直球を捉えたものだった。

納得の一打だったが、「僕も打ったんですけど、そんなのちっとも取り上げられなくて、彼だけ」と笑うしかなかったのは、同学年の日本ハム・清宮の活躍だ。14日には左前安打1本だった西巻に対し、清宮はレフトとライトへマルチ本塁打を放った。打球速度175キロだったライトへの本塁打は「打球音がやばかった」と驚愕した。

同級生の清宮は気になる存在「喋りかけようと思ったら、いつも塁をまたいで行っちゃう」

「今回はしゃべる機会がなかったです。いつも塁をまたいでいっちゃうんですもん。セカンドベースでしゃべりかけようと思ったら、いつも塁をまたいでホームにかえっちゃう(笑)。『ナイスバッティング』ってセカンドで言いたいですけど、あぁ、行っちゃったって(笑)」

4月に仙台で対戦した時は食事に出かけ、牛タンを食べた。「2軍でヒットが出た時で『どうせ1本出たら気持ちが楽になってどんどん打つんだろ』って言ったら、『そんなことないよ』って言っていたんですけど、あっという間にホームランを量産して、イースタンのトップに立っちゃいましたもんね」。選手としてのタイプが違うため、刺激にならないというが、気になる存在ではある。清宮もファームで打席を経験しながら成長を見せている。西巻も然りだ。高卒新人として1軍に昇格するのは清宮に次いで2人目となる。

守備では高校までに経験することがなかった外国人選手の打球の強さに驚いた。快速の打者走者が打ったゴロは「普通に捕って、普通に投げたらセーフ」と処理が追いつかず、また驚いた。失策も糧として、正確性とスピードと求めながら、磨きをかけている。

開幕して約3か月。思いがけない形で1軍初昇格を果たした。「また試合の中でいろんなことに気づいていければいいかなと思います」と今後について話していたが、その「試合」はファームのみならず、1軍も含まれることになった。イースタン・リーグで残した結果と運と巡り合わせによってもたらされたチャンスによって得る、1軍の試合での気づき。それは西巻をさらに成長させるアイテムとなることは間違いない。

記事提供:Full-Count

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