グレード2の靭帯損傷、二刀流という「ユニークな状況が妨げになった?」
エンゼルスの大谷翔平投手はグレード2の右肘内側側副靱帯損傷で故障者リスト(DL)入りした。7日(日本時間8日)に多血小板血漿(PRP)注射と幹細胞注射を受けており、3週間後の再検査の結果を見て、その後の治療方針を決定する方針となっている。
昨年10月にグレード1の靭帯損傷と診断され、予防のためにPRP注射を受けていた大谷だが、そこから状態は悪くなっていた。いったい、悪化の原因は何だったのか。米メディアは、二刀流での起用が影響したのかを検証し、その答えは「ノー」だが、若干の「イエス」でもあるという。
特集を組んだのは米メディア「ジ・アスレチック」。記事では「ショウヘイ・オオタニは唯一の二刀流であるため、彼のユニークな状況が妨げになったのではないかと直感で感じてしまうのは分かる」「グレード2の内側側副靱帯損傷と(治療方針決定までの)待機、これは強打しようとすることと剛速球を投げようとすることの結果なのであろうか?」と“問題提起"。「答えはノー……しかし、少なくとも少しはイエスでもある」とした上で、負傷への影響を分析している。
まずは、打者としてのスイングが右肘にどれだけの「負荷」を与えるかについて。専門家の分析によると、投球と比較すると、負荷は約1/3にとどまるという。大谷は今季、238球の投球の1/3の負荷をバッティングで受けたことになるが、この程度では損傷が悪化した原因にはならないと記事では指摘。そして、「大谷が激しくスイングするのと、剛速球を投げることが影響を与えたのだろうか?」と次の疑問に移っている。
投手の「速度は腕への負荷になると示されている」
つまり、メジャートップレベルの剛速球を投げる大谷が、どれほど肘に負担をかけているかということだが、これについては「そうかもしれない。速度は腕への負荷になると示されている」と指摘。専門家によると、肘への負担は、どれだけ速いボールを投げるかが重要ではなく、自身の最速に近いボールを多く投げることで大きくなるという。大谷の場合は、今季の最速100.5マイル(約161.7キロ)に対して、平均球速は97.4マイル(約156.8キロ)。3.1マイルという差は、リーグ平均の3.5マイルより少し小さいということだ。
なお、記事では、大谷の最大速度と平均速度をグラフで紹介しており、5月30日(同31日)のタイガース戦では大きな差があったと言及。すでに痛みを感じていた可能性があると推測した上で、最初の数試合の負荷が問題だったかもしれないと分析している。さらに、このタイガース戦は、当初予定されていたヤンキース戦の登板を回避し、中9日でマウンドに上がったが、これも体に良くなかった可能性もあるという。定期的に出場することで、体は激しい負荷への準備ができるというのがその理由で、間隔が空いてしまったタイガース戦では肘に負担がかかったことが考えられるというのだ。
もちろん、エンゼルスも大谷本人も、負傷には細心の注意を払っていたはず。そして、登板への準備も毎回、しっかりと整えていたはずだ。ただ、記事では「長い間、オオタニのような選手はいなかった。間違いなくビッグデータの時代にはいなかった」と、“唯一無二“の存在だからこそリスク回避に難しさがあったのではないかと指摘。その一方で、「これらのデータによると、オオタニの序盤の2つの点、最大速度にかなり近い速度で投げていたことと、登板間隔が安定していなかったことが、肘の損傷を悪化させたのかもしれない」と結論づけている。
靭帯損傷が悪化してしまった以上は、まずはしっかりと治療して戻ってくることを考えるのが第一。ただ、復帰してからは、その原因を分析した上で“再発"防止につなげることも必要になりそうだ。
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