重要性は開幕投手に匹敵。開幕2カード目の“開幕投手”

パ・リーグ インサイト

2017.4.3(月) 00:00

千葉ロッテマリーンズ・石川歩投手(C)パーソル パ・リーグTV
千葉ロッテマリーンズ・石川歩投手(C)パーソル パ・リーグTV

開幕投手という称号は、最も信頼の置ける投手に与えられる。元阪急の山田久志氏が12年連続で務めたように、「開幕投手=チームの顔」というイメージも概ね正しい。一方で、シーズンのスタートダッシュを成功させるために、開幕戦と同じくらい重要になってくるのは、開幕2カード目の頭に投げる投手、いわゆる裏ローテの1番手である。

交流戦までは開幕投手同様、3連戦の初戦で常に先発することになるため、その重要性は開幕投手にも匹敵する。そこで今回は、2012年から2016年の5年間で、開幕2カード目の初戦に先発したパ・リーグの投手、つまり「裏の開幕投手」について見ていきたい。

【北海道日本ハム】
2012年:ケッペル投手(前年成績:14勝6敗 防御率3.22)
2013年:吉川光投手(前年成績:14勝5敗 防御率1.71)
2014年:メンドーサ投手(新加入)
2015年:メンドーサ投手(前年成績:7勝13敗防御率3.89)
2016年:吉川光投手(前年成績:11勝8敗 防御率3.84)

加入したばかりのメンドーサ投手が先発した2014年を除けば、前年に1年を通してローテーションを守り、結果を残した投手が「裏の開幕投手」に選ばれていることが分かる。2014年に関しては、最もその大役に相応しかった木佐貫投手が、インフルエンザに感染して離脱。実績などを考慮してメンドーサ投手が選出されたと考えられる。

【楽天】
2012年:塩見投手(前年成績:9勝9敗 防御率2.85)
2013年:田中投手(前年成績:10勝4敗 防御率1.87)
2014年:美馬投手(前年成績:6勝5敗 防御率4.12)
2015年:塩見投手(前年成績:8勝7敗 防御率4.71)
2016年:辛島投手(前年成績:5勝7敗 防御率4.58)

2013年は第3回WBCの疲労を考慮し、エース・田中投手が開幕投手を回避。則本投手が開幕投手を、田中投手が「裏の開幕投手」を務めるという形で、シーズンがスタートした。結果的に両投手で30を超える貯金を作り、チームはこの年日本一の栄冠を手にしている。

その日本シリーズでMVPに輝いた美馬投手が、翌年の「裏の開幕投手」に。その後は則本投手が開幕戦を投げる年が続き、2014年、2015年は塩見投手、辛島投手らが「裏の開幕投手」を任された。しかし日本一に輝いた翌年から、開幕2カード目初戦は3連敗となっている。この試合を安心して任せられる投手が台頭すれば、もう一度ペナントを掴む日も見えてくるかもしれない。

【埼玉西武】
2012年:牧田投手 (前年成績:5勝7敗22セーブ 防御率2.61)
2013年:牧田投手 (前年成績:13勝9敗 防御率2.43)
2014年:牧田投手 (前年成績:8勝9敗 防御率2.60)
2015年:岡本洋投手 (前年成績:2勝6敗 防御率4.06)
2016年:岸投手 (前年成績:5勝6敗 防御率3.02)

埼玉西武は12年から14年まで、牧田投手が3年連続で「裏の開幕投手」を務めているのが特徴的である。この試合が重要であるからこそ、信頼のおけるピッチャーとして牧田投手が選ばれたのだろう。2015年は、十亀投手が故障明けで出遅れた影響もあり、岡本洋投手が先発した。

2016年は、シーズン序盤の裏ローテが北海道日本ハム、福岡ソフトバンクと多く当たることから、両チームをやや苦手としていた菊池投手を開幕投手とし、岸投手を「裏の開幕投手」とする策をとった。この役割の重要性が垣間見える起用と言えるのではないだろうか。

【千葉ロッテ】
2012年:グライシンガー投手(前年成績:1勝5敗 防御率4.15)
2013年:藤岡投手(前年成績:6勝7敗 防御率3.36)
2014年:涌井投手(前年成績:5勝7敗7セーブ13ホールド 防御率3.90)
2015年:石川投手(前年成績:10勝8敗 防御率3.43)
2016年:石川投手(前年成績:12勝12敗 防御率3.27)

千葉ロッテは、この5年間の開幕2カード目の初戦における成績が4勝1敗と、大きく勝ち越している。グライシンガー投手は、巨人から移籍したこの年に3年ぶりの2桁勝利(12勝)を挙げた。このことから、千葉ロッテの投手起用は当たっていると言えるだろう。

また、「裏の開幕投手」を務めたすべての投手が、その年に100イニング以上を投げている。石川投手の台頭によって、近年は「開幕・涌井投手」「裏開幕・石川投手」という形が出来上がりつつあるようだ。二本柱がカードの頭にそびえ立つ千葉ロッテ。開幕カードは3連敗に終わったが、ここからの巻き返しは十分可能である。

【オリックス】
2012年:西投手(前年成績:10勝7敗1セーブ 防御率3.03)
2013年:海田投手(前年成績:0勝 4敗 防御率3.04)
2014年:西投手(前年成績:9勝 8敗 防御率3.63)
2015年:西投手(前年成績:12勝10敗 防御率3.29)
2016年:西投手(前年成績:10勝6敗 防御率2.38)

オリックスは5年のうち、4年は西投手が2カード目の開幕投手を務めた。安定して2桁勝利を挙げる投手が常に裏ローテにいるのはオリックスの強みだろう。チームがAクラス進出を果たした2014年シーズンはこの開幕2カード目の初戦に勝利しており、短期的に見ても長期的に見ても、この試合を落とさずに済むのならそれに越したことはない。

【福岡ソフトバンク】
2012年:山田投手(前年成績:7勝7敗 防御率2.85)
2013年:大隣投手(前年成績:12勝8敗 防御率2.03)
2014年:スタンリッジ投手(前年成績:8勝12敗 防御率2.74)
2015年:大隣投手(前年成績:3勝1敗 防御率1.64)
2016年:和田投手(カブスから復帰)

層の厚い福岡ソフトバンク投手陣とあって、裏ローテにもエース級の投手がズラリと並ぶ。大隣投手は難病から復帰した2014年、シーズン通しての活躍はできなかったものの、終盤からポストシーズンにかけて好投を続けたことで、翌年は「裏の開幕投手」を任されている。またスタンリッジ投手や和田投手といった実績のある新加入選手が大役を任されていることも、福岡ソフトバンクのカラーと言えるかもしれない。


序盤戦を戦う上での重要なファクターともなり得る「裏の開幕投手」。一般に注目を浴びることは少ないものの、ここに焦点を当ててみれば、そのチームのペナントレースの行方を、少しではあるが占うことができる。今季も開幕カードの3戦が終了し、明日が開幕2カード目となる。各球団がどの投手を起用してくるか、そして結果はどうなるか、楽しみに待ちたい。

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