「一発勝負」で腕を磨いた、社会人野球出身選手の魅力

パ・リーグ インサイト

2017.3.27(月) 20:00

昨年のドラフト会議では、今井達也投手(埼玉西武)や藤平尚真投手(楽天)といった高校生や、田中正義投手(福岡ソフトバンク)、佐々木千隼投手(千葉ロッテ)といった大学生の動向に大きな注目が集まった。

その一方で、なかなか大きな注目を浴びることは少ないながらも、即戦力として期待され、指名されることが多いのが社会人野球に所属する選手たちである。

社会人野球は夏の「都市対抗野球大会」と秋の「日本選手権」が大きく華やかな舞台。プロを目指す20歳前後の選手から、30代半ばを迎えるベテランまでが一同に会し、一発勝負のトーナメントの中で、レベルの高いプレーが繰り広げられる。注目度は夏の甲子園ほどではないものの、社会人出身の選手、殊に全国大会での表彰経験のある選手は、プロで成功する傾向にある。ここでは過去5年(2012~16年)の大会で表彰された選手の中から、プロでその名を馳せるに至った選手達を見ていきたい。

パ・リーグの社会人出身選手で今最も注目を浴びるのが、侍ジャパンの一員としてワールドベースボールクラシックにも出場した石川歩投手(千葉ロッテ)だろう。昨季は入団以来3年連続となる2桁勝利を挙げ、自身初のタイトルとなる最優秀防御率も獲得した。今や日本を代表する選手となったが石川投手も、中部大学から2011年に東京ガスに入社し、1年目から都市対抗野球のマウンドへ。3年目となった2013年には日本選手権で優秀選手として表彰を受けた実績がある。今年も涌井投手とともに、ダブルエースとしての活躍が期待される。

昨年、ケガで一時離脱した嶋選手の穴を埋めたのは、ルーキーだった足立祐一選手。足立選手は2012年に神奈川大からパナソニックに入社すると、社会人3年目となる2014年シーズンから出場機会が増加。翌年には大阪ガスの補強選手として出場した都市対抗野球大会で優秀選手に選ばれた。その後日本代表入りするなど順調に経験を積み、楽天からドラフト6位での指名を受け、入団を果たした。昨年は73試合に出場し、プロ初ホームランも記録。肩の強さも折り紙付きであり、嶋選手に続く第二捕手にとどまらず、正捕手の座を狙う。

オリックスに2014年ドラフト1位で入団した吉田一将投手は、日本大からJR東日本に入社した1年目から都市対抗野球で久慈賞、日本選手権では敢闘賞を受賞し、その名を高めた右腕。2年目にも都市対抗にて優秀選手に選ばれるなど社会人でトップレベルの活躍をしていた。プロ入り後はなかなか思うような結果を残せずにいたが、昨年中継ぎとして54試に登板、防御率2.66という結果を残し、ブレイクの兆しを見せている。

その吉田一投手に続くドラフト2位でオリックスに入団したのは、東明大貴投手。桐蔭横浜大学卒業後、富士重工業入社1年目となる2012年から都市対抗の舞台を経験すると、2年目には日立製作所の補強選手として2年連続で都市対抗野球に出場する。そして同年の日本選手権ではチームを2006年以来となる決勝へ導いて敢闘賞を受賞している。プロ2年目に初の2桁勝利を記録するも、昨年は1勝10敗と勝ち星から見放される結果に。今年は巻き返しを狙っている。

彼らが所属するオリックスでは近年、社会人時代に表彰を受けた選手が上位で指名する傾向があり、今年も山岡泰輔投手(東京ガス)が1位指名で入団。ちなみに山岡投手も瀬戸内高校から入社した1年目の2013年、いきなり都市対抗野球大会にて優秀選手に選ばれ、昨年も2度目の表彰を受けているという実績がある。

社会人出身の選手には、「即戦力」として大きな期待と、結果を出さなければすぐに戦力外となる可能性があるという危機感が、常にのしかかっている。安定した一社員としての立場を絶ち、己の実力だけでのし上がっていく世界に飛び込むことになるのだが、「負けたら終わり」のトーナメントで活躍した経験は、厳しいプロの世界においても生きる糧になると言われている。今季もパ・リーグ各球団には山岡投手以外にも、玉井大翔投手(北海道日本ハム)、平井克典投手、源田壮亮選手(ともに埼玉西武)、酒居知史投手(千葉ロッテ)といった二大大会での表彰経験がある選手に加え、多くの社会人野球出身選手が入団した。綺羅星のような輝きではないが、彼らの放つ確かな輝きにも注目だ。

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