これからもずっと様々なメッセージを伝え続けていく千葉ロッテ・井口資仁

パ・リーグ インサイト マリーンズ球団広報 梶原紀章

2017.2.9(木) 00:00

笑顔が弾けた。石垣島キャンプ最初の休日となった2月6日。石垣市内の高齢者介護施設に井口資仁内野手の姿があった。同僚の福浦和也内野手、大塚明二軍外野守備・走塁コーチを連れ添って、高齢者の方々に笑顔を届けた。

「皆さん、すごいエネルギッシュだったよ。ビックリした。元気になってもらおうと思って訪問をさせていただいたけど、逆にパワーを頂いた。楽しかった」

束の間のオフを施設内で楽しんだ大ベテランは、目を丸くさせて笑った。キャンプ2日目の2月2日は若手選手たちに声をかけて、毎年恒例となっている石垣市内の児童養護施設を訪問した。昨年12月には地震で大きな被害を受けた熊本県宇土市を表敬訪問。インターネットを通じて集めた募金と自身からの義援金を合わせて1000万円を寄付し、野球教室も催した。今年も様々な形で積極的に慈善活動を行っている。

「自分が行くことによって喜ぶ人が一人でもいるのなら、それは労力とは思わないし、やるべきことだと思う。日本はそういう部分ではまだまだ遅れている。一人ひとりがもっとチャリティーや慈善活動に対する意識を持つべきだと思う」

つねづね井口は力説する。そしてそのために自身は率先して、積極的な活動を繰り返す。それはホークス1年目の若かりし日に、こども病院に訪問した際の想い出があるからだ。

「本当に喜んでくれた。子供もそうだけど、親も…。『子供の喜んでいる顔を見るのは久しぶり』と泣いてくれたお母さんもいた。自分にはそんな力はないと思っていたから、衝撃だった。そんな人の笑顔や涙を見て、自分にそれがちょっとでもできるなら、できる限りの事はやろうと考えるようになった。あの日の衝撃は忘れられない」

それ以来、可能な限り、時間を見つけてはいろいろなところに足を運ぶ事を意識した。野球場に行きたくても行けない子供もたくさんいる。だから、自ら足を運ぶ。そして球場に招待をする。触れ合う機会を求める。シーズンオフも野球教室や、施設訪問なども積極的に行い、チームの後輩たちにも、プロとしてあるべき姿を伝えている。

「メジャーではみんな、なんらかの活動をしていた。誰もがその意識を持って、いろいろな活動に取り組んでいた。日本もいつかはそうあって欲しいと思う。日本はアメリカに比べてなかなか行える環境やルートが整理されていない事も問題。そのような土壌や教育もすべきだと思う。だから若い子をどんどん誘う。」

鷹のように鋭い目。溢れんばかりの筋肉。一見、近寄り難いオーラを感じる井口だが、訪問先ではすぐに子供たちや施設の方々と打ち解ける。その目力からは想像も出来ないような優しい笑顔が周囲を幸せな気持ちにさせてくれる。高齢者にも寄り添い、時には一緒に民謡に合わせて踊ったりもした。その姿を一緒に活動に参加をした若い選手たちはジッと見ている。そうやってマリーンズに、慈善活動の意識は繋がれていく。

「自分たちのいるプロ野球は日本において発信力がある。募金の呼びかけもそうだし、いろいろな境遇にある人たちがいることも伝えられる範囲で発信をしていくこともプロとして大事な指名」

華やかなプロ野球の世界の中心で輝くスター選手たち。一方で、この世の中には多くの悲しみや辛い現実が、身近に存在している。プロ野球選手が人に夢を与えるのが仕事の一つであるのであれば、グラウンド以外でもなにかできる事があるのではないか。なにをしないといけないのだろう。井口資仁はいつも自問自答を繰り返している。そして誰かの為にバットを握る。

「年齢は関係ないよ。今年は体の状態がいい。若返った気がする。肩の仕上がりもいいし、ランニングもしっかりとできている。若いヤツには負けないよ」

プロ21年目。ドラゴンズの岩瀬仁紀投手と並んで球界最年長現役選手。しかし、衰えは一切ない。昨オフにはホノルルマラソンを走り切った。キャンプでも恒例のアーリーワークは欠かさない。練習では納得いくまでバットを振り続ける。ベテランがグラウンドをエネルギッシュに駆け回る姿は野球を観戦する多くの人の希望となり、感動を呼ぶ。だから、挑戦は終わらない。今年も、野球を通じて様々なメッセージを伝えていく。

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パ・リーグ インサイト マリーンズ球団広報 梶原紀章

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