ピタゴラス勝率で見る、直近5年のパ・リーグ6球団の成績

パ・リーグ インサイト 藤原彬

2017.1.21(土) 00:00

北海道日本ハムファイターズ・栗山英樹監督(C)パーソル パ・リーグTV
北海道日本ハムファイターズ・栗山英樹監督(C)パーソル パ・リーグTV

言うまでもなく、野球は得点の数を競うスポーツだ。安打の数で相手を上回っても負けることはあるが、得点が上なら負けることはない。春季キャンプを前にして、各球団の監督が様々な公約を掲げているが、その最終的な目的はつまるところ、いかに得点を増やし、失点を減らすかということになる。

得失点差の高いチームは、リーグ順位でも上位につけることが多い。ただし、気をつけたいのは、あくまでその確率が「高い」ことであって、「絶対」ではないことだ。

実際、昨季は得失点差がリーグ2位(+152)だった北海道日本ハムが優勝し、リーグ1位(+158)の福岡ソフトバンクが後塵を拝している。それでも、得失点差で高い数値を記録できるチームが、栄光に近付くことに変わりはない。極端な話をすると、負け試合ではどれだけ点差をつけられても、僅差の試合をすべて勝てば、理屈上は得失点差がマイナスでも優勝は可能だ。だが、長いプロ野球史にあって、マイナスの得失点差でリーグ制覇を果たしたチームは存在しない。

野球という競技における得点と失点の重要性を認識した上で、ここでは「ピタゴラス勝率」という指標を紹介したい。「ピタゴラス勝率」とは、得点と失点から求められる勝率の期待値で、以下の計算式によって算出することができる。

ピタゴラス勝率=(得点の2乗)÷(得点の2乗+失点の2乗)

実際の勝率がピタゴラス勝率を上回ったチームはその得点力と失点を防ぐ力を勝ち星にうまく結び付けられたと言えるし、下回ったチームは実力を出し切れなかったということにつながる。そこで、直近5年のパ・リーグ6球団を対象に、勝率とピタゴラス勝率とその差、得失点差を並べてみた。

※チーム名の右の数字は「勝率」、「ピタゴラス勝率」、「勝率とピタゴラス勝率との差」、「得失点差」の順で表示。

【2016年】
1位北海道日本ハム .621 .637 -.016 +152
2位福岡ソフトバンク .606 .639 -.033 +158
3位千葉ロッテ .514 .501 +.013 +1
4位埼玉西武 .457 .501 -.044 +1
5位楽天 .443 .409 +.034 -110
6位オリックス .407 .382 +.025 -136

【2015年】
1位福岡ソフトバンク .647 .637 +.010 +160
2位北海道日本ハム .560 .528 +.032 +34
3位千葉ロッテ .514 .498 +.016 -2
4位埼玉西武 .500 .548 -.048 +58
5位オリックス .433 .473 -.040 -29
6位楽天 .407 .364 +.043 -149

【2014年】
1位福岡ソフトバンク .565 .575 -.010 +85
2位オリックス .563 .609 -.046 +116
3位北海道日本ハム .518 .521 -.003 +24
4位千葉ロッテ .465 .429 +.036 -86
5位埼玉西武 .450 .478 -.028 -26
6位楽天 .444 .452 -.008 -55

【2013年】
1位楽天 .582 .578 +.004 +91
2位埼玉西武 .529 .507 +.022 +8
3位千葉ロッテ .521 .490 +.031 -12
4位福岡ソフトバンク .514 .580 -.066 +98
5位オリックス .475 .485 -.010 -16
6位北海道日本ハム .451 .439 +.012 -70

【2012年】
1位北海道日本ハム .556 .562 -.006 +60
2位埼玉西武 .533 .498 +.035 -2
3位福岡ソフトバンク .508 .526 -.018 +23
4位楽天 .500 .525 -.025 +24
5位千葉ロッテ .481 .497 -.016 -3
6位オリックス .425 .416 +.009 -82

興味深いのは、昨年の福岡ソフトバンクだけではなく、2014年のオリックス、2013年の福岡ソフトバンクもピタゴラス勝率でリーグ1位をマークしながら優勝を逃している点だ。勝率とピタゴラス勝率の差が激しいチームは、一般的には先に述べたように僅差の試合で極端な結果が出ていたか、ちょっとした運などの要素に大きな影響を受けたものとされている。

過去のパ・リーグの優勝チームで両方の数値の差が最も大きかったのは1999年の福岡ダイエーで、勝率.591に対してピタゴラス勝率は.509だった。これはつまり、得点を生み出す力と失点を防ぐ力の観点からは勝率.509しか見込めないチームであったにもかかわらず、実際にはそれを大きく上回る.591を記録できたことを意味している。この年の福岡ダイエーは、打線がリーグ4位のチーム打率.257、同3位の140本塁打で、投手陣全体もリーグ4位の防御率3.65でしかなかった。にもかかわらずリーグ優勝を達成できたのは、1点差の試合に27勝14敗と強さを発揮していたことが大きな要因だったのだと思われる。

ピタゴラス勝率からは、そのチームの戦力に問題があるのか、それ以外にも問題があるのかなどを推し量ることができる。ただ、野球は生き物だ。打つ、走る、守る、投げるはもちろん重要な要素だが、他の何が作用して最終的な勝率が決まってくるのか。それを見極めるのも、プロ野球の醍醐味だろう。

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パ・リーグ インサイト 藤原彬

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