中日や阪神、埼玉西武で計10年間プレーした森越祐人氏の“サバイバル力”
中日や阪神、埼玉西武で内野手として計10年間プレーした森越祐人氏は、指導者として第2の人生を歩み出した。3月に母校である愛知の強豪・名城大の野手総合コーチに就任。時には兄貴分として、時には監督と選手とのパイプ役としての役目を果たす。プロの世界で身につけたのは、戦力外から2度も再起を果たした“生きる術”。未来を切り開こうとする学生たちに、自らの経験を還元している。【小西亮】
2010年のドラフト4位で名城大から地元の中日に入団するも、1軍に定着できず2014年限りで戦力外に。NPB12球団による合同トライアウトを受験し、2015年からは阪神でプレーした。主に守備固めや代打で出場し、2019年に再び非情通告。2度目のトライアウトをへて、2020年は埼玉西武に加入した。パ・リーグでの1軍出場はなく、わずか1年で三たび戦力外となった。
岐路の連続を乗り越え、生き残ってきたプロ人生。「クビになっても、誰も助けてくれませんからね」。実感として宿る思いを、学生たちにも伝えたい。
「それぞれが自分の野球人生。監督やコーチから言われたことだけをやるんじゃなくて、自分が納得いくようにやってほしいんです」
母校への恩返しで引き受けたコーチ職。口を出す前に、じっくり選手たちの姿を凝視する。イメージする指導者像は、阪神在籍時に2軍打撃兼野手総合コーチだった今岡真訪・現千葉ロッテ1軍ヘッドコーチ。「今岡さんみたいにじーっと見ていて、選手が困った時に的確な一言を言えるように」。教え込むのではなく、導ける存在になりたい。
試合では、“凡打時の走塁”も重要視。たとえ平凡なゴロでも、野手がお手玉する可能性だってある。「凡打だとしても、一塁まで全力疾走ができるか。その時に、選手の本当の姿が出ると思っています」。口酸っぱく呼びかけ続け、徐々にナインの意識も変わってきた。
チームでは、元中日の山内壮馬ヘッドコーチと共に安江均監督を支える“トロイカ体制”。今春の愛知1部リーグでは早速10勝1敗と圧倒的な強さを見せ、2018年秋以来となる11度目の優勝を飾った。6月7日には、15年ぶりの出場となる全日本大学選手権が開幕。人生経験豊富な“元プロ”が、学生たちの背中を押していく。
(小西亮 / Ryo Konishi)
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