チケットからクラブを変える。チケットで球団を強くする。ぴあ株式会社 スポーツ・ソリューション推進局 風間 洋佑さん【PLMキャリアインタビューVol.9】

パ・リーグ インサイト

2021.3.29(月) 18:00

ぴあ株式会社 スポーツ・ソリューション推進局 風間 洋佑さん(C)PLM
ぴあ株式会社 スポーツ・ソリューション推進局 風間 洋佑さん(C)PLM

「スポーツに関わる仕事」と一口に言っても、多種多様だ。今回は、パシフィックリーグマーケティング株式会社が運営するスポーツ業界専門の転職エージェントサービス「PLMキャリア」を通じて転職された方にインタビュー。転職のきっかけや仕事の魅力を紹介していく。

埋めるだけではない。座席の価値とは?

試合日程が決まり、チケットを入手する。その際の高揚感はスポーツ好きならば誰しもが経験したことだろう。試合前、来場前からファンのワクワクは始まっている。そのチケット販売の利便性を高め続けてくれた存在といえばやはり「チケットぴあ」。そして今、風間さんによれば、ぴあが考えるスポーツとチケットの関係は、単に発券、購入ということだけではないという。風間さんが所属するのは「スポーツ・ソリューション推進局」。この部門名からも新しい関係性がうかがえそうだ。実際の仕事内容から聞いていこう。

「スポーツ・ソリューション推進局の業務は、長年の経験とノウハウを生かしたチケット販売業務の受託を柱に、プロモーションや顧客戦略などを行うソリューションサービスを提供していくことです。私はその中でサッカーと野球を兼任していて、野球はパ・リーグの2球団を担当しています。ここでは委託を受けて販売をすることが主で、球団とコミュニケーションをとりながら、ぴあだけの企画チケットなども提案しています。サッカーはJ2のクラブを1つ担当していて、ここではチケットの販売委託だけではなく、チケットの在庫管理からファンクラブやシーズンパスの管理まで委託されています」

単純な委託販売と、管理まで任される関係ではなにが違うのだろうか?

「試合ごとに配券されたチケット販売だけではなく、販促企画を立てたり、ファンクラブやシーズンシートの企画や販売、管理までを、クラブの担当者と一体となってチケッティングを担います。どうやって売っていくべきか、販売スケジュールはどうするのか、新型コロナウイルス感染拡大防止のためにどのような対策をするのか、入場制限はどうするか。このような諸々の課題も先方の担当者と一緒に検討し、解決していきます。単純にチケットを委託されて販売するのではなく、チケット販売管理業務を通じて、クラブの運営や業務改善などにも随時かかわらせていただいています」

なるほど、それで「ソリューション」。この局は、チケットぴあにおける販売売上に限らず、その競技、そのチームの集客をいかに最大化するかという視点から生まれたとのこと。チケットの販売が改革や問題解決などまでつながっていくというイメージは一般的にはあまりないのではないだろうか。

「私も入社して初めて気づかされました。実は入社前はクラブの中まで入って、クラブの人たちと一緒に仕事をするというようなイメージは持っていませんでした。でも、そこまで深くかかわることができるのは、責任も重いですが楽しいです。ぴあが提案した販促企画などで来場者が増えていくのは面白いですし、やりがいがあります」

クラブが成長し、チームが強くなるためには来場者、そして熱心に支えてくれるサポーターの存在は不可欠。だが目指すものがチケットの単純な売り上げとすれば、ただ呼び込み、増やすという発想になるだろう。しかし、熱心なファンは数字の積み上げだけで作れるものではない。例えば新型コロナウィルスの環境下では、最大化だけではない施策も必要。クラブとともにあることで、一歩踏み込める。

「2020年は、担当しているJリーグのクラブで、リモート応援チケットを販売しました。これは来場できないお客様が、購入した座席に応援メッセージパネルを設置したり、クラブオリジナルTシャツを着せたりして、リモートで声援を送ろう!というものです。オリジナルデザインのチケットをコンビニで発券できるようにもしました。売上獲得ということ以上に、実際にスタジアムまで足を運べない方でもチームを応援できるということが重要。本拠地には行けないけれどクラブを支えたいと言ってくださるサポーターからの声がクラブに集まっていて、何とかできないかとクラブ側とも検討を重ねて実現したものです。単純に座席を売って集客をする、というビジネスではなかったですね」

広い意味でのチケッティング。席を埋める、そこで売上を図るだけではなくサポーターの熱を受けて、クラブとのコミュニケーションを高める。

「お客様も、単にスタジアムに行ける、行きたい、行けないではなく、チームに貢献したいという気持ちで、じゃあ、何ができるのかを考えられている。そういうファンの方たちの想いを大事にしたいです。クラブ側も同じ気持ちですし、僕たちチケット側も、システムを含めてその思いに応えてきたいと考えた結果が『リモート応援チケット』でした」

チケットの販売数の増減。それはチケットの販売を担当する側だけではどうにもならないことばかりだろう。選手の人気やチームの話題、「試合内容が満足できない」から「スタジアムの雰囲気も食事も不満」と様々な理由がある。チケットという立場からクラブの問題を解決するというのは、いわばファンの鏡であり、聞こえない声を代表して提案しているともいえるのではないだろうか。

「試合結果はとても重要です。サッカーでは、カテゴリーの昇格・降格はその後の来場者数にダイレクトに影響しますし、野球ではクライマックス・シリーズに進出し、日本シリーズへ進出する可能性があった時は、ダイナミック・プライシングでかなりの高値になっても入手困難になるほどですから」

ファンであることをプラスにする

もともとスポーツ好きだという風間さん。自身も大学まで野球チームでプレーしていた経験があるため、ファンの気持ちは痛いほどわかるし、選手がたくさんの観客の前でプレーする喜びもわかる。

「自分が担当した試合で、球場やスタジアムが満員だったり、お客様がひとつのプレーに一喜一憂している様子を見ると、いろんな苦労が報われますし、やっていてよかった、と思います」

学生時代からスポーツビジネスにかかわりたいと思い、就職活動もしたが新卒の壁は厚く、門は狭かった。ただ、現在の仕事では、チケット販売業務だけではなく、企画提案などのスキルが必要ということについては、スポーツとは関係ないキャリアが生きた。

「前職ではキッチンメーカーに勤めていました。リフォーム店や工務店、代理店を回るのですが、取引先に導入してもらうためにどうするかを考え、そこで色々な企画を提案しました。その企画提案が採用された時の楽しさ、自分の提案で売上が上がり、お客様の課題も解決できた時の喜びは前職でも感じていました」

着実に今の仕事で成果を上げている風間さんだが、不安も課題も抱えていると言う。

「新卒から3年たってこの業界に来ているので、新卒から入っている人からは出遅れていますし、ついていけているのかという不安はまだあります。また、同じ営業でも規模が大きい会社が相手であれば、その先にはさらに多くのファンがいて、そのファンの人たちに喜んでもらわなければいけない。自分自身も一ファンではありますが、単純にファンの気持ちだけでは、それは実現できないんです。ファンとしての気持ちを持ちつつも、クラブや球団を運営する側の視点や立場も理解してやっていきたい」

その先にファンがいる。だからファンであることを忘れない。そのうえでクラブや球団の思いも具体化する。難しいことかもしれないが、だからこそ自分たちがやるという醍醐味。

「スポーツ・ソリューション局のメンバーもみんなスポーツが大好きで、スポーツにかかわりたい人ばかり。スポーツがないと人生は楽しくない、と言わんばかりに、飲みに行ってもいつもスポーツの話しかしないんです。これからも、そういう気持ちを持った方と一緒に取り組んでいきたいですね」

スポーツとのかかわりは多岐にわたるけれど、実際のイメージがわかない、自分のスキルや情熱は生かせるのだろうか、今からでも間に合うのか、など不安は大きなものがあるだろう。風間さんも同様だった。そこで多様な人材をスポーツビジネス業界に輩出するべく、ぴあでは新たな取り組みを始める。

「 ぴあでは、今年4月から『ぴあスポーツビジネスプログラム(PSB)』という人材育成のためのサービスをスタートします。一流の講師による講座、実際の現場体験など、半年間のプログラムを通じて、ぴあが長年培ってきたスキルとノウハウを伝え、スポーツビジネスの即戦力となる人材を育成していこうというものです。自分も同じ立場ならぜひ参加したいと思うプログラムになっています。業界のリアルな状況を知っているのは大きなアドバンテージですし、特に現場での仕事を経験できることはとても貴重だと思います」


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文・岩瀬大二

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