「野球女子」の次は「野球シニア」? 埼玉西武ライオンズと早稲田大学が共同研究を開始

パ・リーグ インサイト

2016.3.15(火) 00:00

2016年3月14日。開幕戦を3月25日に控える、埼玉西武ライオンズの本拠地・西武プリンスドーム。オープン戦が束の間のお休みのこの日、人影まばらな球場の一室に、シニア世代の方が次々と入っていく光景があった。その正体は、同日開始された「埼玉西武ライオンズと早稲田大学の共同研究」のシニアモニター(被験者)の方々への初回説明会である。研究のテーマは、「野球観戦が高齢者の健康に与える効果」について―。

【球場での応援と日常生活、2つの効果?】

この研究の仮説は2つある。

1つは、球場に足を運んだり、球場で応援したりする「活動」が、身体的・精神的な健康に良い効果をもたらすのではないか?という仮説。確かに、野球観戦ではグッズを使っての応援や、ホームランや得点シーンでの熱狂、ラッキーセブンでの応援歌など、身体を使うシーンが数多くある。実際に西武プリンスドームに足を運んでも、元気に応援フラッグを振り、「吠えろライオンズ」を元気に歌うシニア世代の方をよく見かける。またご存知の方も多いと思うが、埼玉県所沢市の丘陵地帯にある西武プリンスドームは、坂や階段が比較的多く、観戦時の活動量が大きい。外野の入場ゲートから内野席を目指す外周の通路は、なだらかな坂が続く名物箇所だ。

2つ目は、「野球観戦の趣味を持つこと」・「ひいきのチームを持つこと」が日常生活にもたらす波及効果だ。

例えば、今まで関心のなかったスポーツニュースを欠かさず見るようになる。勝敗が気になる。お孫さんとの話題が出来て、家族間の会話が増える。球場で仲間が出来て、日常的にも話すようになる・・・など、生活にメリハリをもたらす結果、健康に良い効果をもたらすのではないか?という仮説だ。

今回、共同で研究を行うのは、早稲田大学スポーツ科学学術院教授・早稲田大学アクティヴ・エイジング研究所所長の樋口満教授の研究チーム。樋口教授は、「スポーツ観戦が中高齢者の健康に与える影響について調査した研究の前例があまり無く、本研究が今後の貴重なエビデンス(科学的根拠)となることを期待している」と言う。

約70名のモニターはA群・B群に分かれ、2か月間自由に観戦

研究の詳細は、次の通りである。約70名のモニター(60歳以上)がA群・B群に分かれ、球団側が2016年シーズンのライオンズ主催試合で一定期間使用できる観戦チケットを提供。A群が4月5日~6月2日、B群が7月9日~8月28日、それぞれ約2か月の間自由に観戦を行い、早稲田大学が観戦期間の前後で決められた項目を測定。比較・解析を行う。

日常活動量・血圧に、幸福感など定性的な指標も

測定する項目は多岐に渡る。日常活動量など定量的な仕様に加え、幸福感・健康感・抑うつ・認知機能・生活習慣など、定性的な項目も多く見られる。球団でも、演出・球場施設や、来場手段に関するアンケートを実施し、シニアの方々でも見やすい観戦環境作りに生かしていく方針だ。

12球団初の取組は、地域自治体とも連携

プロ野球の球団が大学機関との連携で、このような研究を行うことは初めての試みだが、今回は、埼玉西武ライオンズ(産)・早稲田大学(学)だけでなく、近隣自治体(官)とも連携した、産・学・官の取り組みとなっている。参加する70名の研究モニターは、2015年に株式会社西武ライオンズが「連携協力に関する基本協定」を締結した近隣の5自治体(所沢市・飯能市・狭山市・入間市・日高市)の協力により募集。各市が包括支援センターや、単身高齢者保養事業(所沢市)などで呼びかけを行い、モニターを選定した。

連携自治体の一つ、所沢市高齢者支援課の担当者は、「高齢者の健康寿命の延伸や、単身高齢者のケアは、超高齢化社会を迎える日本全体の緊急課題。今回の研究は、自治体における高齢者施策としてスポーツ観戦の導入を検討するきっかけになる可能性もある。」と、期待を寄せる。

埼玉西武ライオンズの2016シーズン開幕は3月25日(金)。本拠地西武プリンスドームで始まる。

中村剛也選手の豪快なホームランや、菊池雄星選手の実直なお立ち台でのインタビューなど、選手たちの活躍=球場や街の盛り上がりが、研究の成功への大きな後押しにもなるだろう。ライオンズの2016シーズンは、別の意味でも、選手たちの躍動から目が離せない。

この研究が、どのような結果となるのか?

研究の結果、野球観戦を推奨する自治体等が多く現れ、「野球シニア」が各地の球場を席巻する日が来るのだろうか? 結果は年内に発表される予定だ―。

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