千葉ロッテが次々に打ち出すファンを楽しませる新しい試み

パ・リーグ インサイト 武山智史

2016.10.4(火) 00:00

9月14日、QVCマリンでの千葉ロッテ対埼玉西武の試合前。多くの千葉ロッテファンがスマートフォンを持ち必死になって上下に振り続ける。その動きに連動するように、バックスクリーンの大型ビジョンに映し出された数値が上昇していく…。

この日、千葉ロッテは来場者のスマートフォンと大型ビジョンを連動したイベント「スマホシェイク」を実施。球団公式総合アプリ「Mアプリ」をダウンロードし、所定のページの「シェイク」ボタンをタップする。そしてスマートフォンを振ると球場内に設置された小型ビーコンが位置情報を認識し、サーバーを経て大型ビジョンにカウントされるという仕組みだ。

このイベントの意図を千葉ロッテの企画部部長・原田卓也氏は「さまざまな調査をした結果、スマートフォンの利用者はsafariなどのwebブラウザからよりも、アプリを経由して情報を入手する方が多いと分かりました。その流れを受けてこの7月にMアプリがスタートしたのです。また、どうやって多くのファンにMアプリをダウンロードしてもらうかを考えた結果、球場内で今年改修された大型ビジョンを活用したイベントを企画しました。アプリをダウンロードしないとイベントには参加できないですし、シェイクした回数が視覚化されることで盛り上がりますよね」と説明する。

今回が初の試みとなったスマホシェイクだったが、来場者の反応は「こちらの想像以上に、多くのファンの方がスマートフォンを振ってイベントに参加していましたね」と原田氏。来シーズンは試合中のイニング間にアプリ連動イベントを常設することも視野に入れている。

また、小型ビーコンは球場内の400個以上の場所に設置され、Mアプリをチェックインすると場内マップで現在の位置が判明し、近くの飲食店・施設情報が表示される。QVCマリンを初めて訪れるファンにとっては、心強いサービスとなるだろう。

9月25日に行われた対オリックス戦。この試合はチームを長年支えてきたベテラン・サブロー選手の引退試合になった。球場正面ではスタンドに入れなかったファンが大型モニターで試合を観戦する横で、専用ゴーグルを用いたVR(バーチャルリアリティー)映像の体験コーナーが設置された。当初は20日の楽天戦で行われる予定だったが、雨天中止のため延期に。注目が集まる一戦でのお披露目となった。

プロ野球でのVR映像と言えば、2月の春季キャンプで北海道日本ハムと東京ヤクルトがそれぞれのYouTubeチャンネルで配信した360°カメラによる映像が思い出される。シーズン中では横浜DeNAの「360BAYSTARS」と題して、試合直前のベンチ前の様子や登板直前のブルペンの様子の映像を配信している。ユーザー側が視点を前後左右に移動でき、あたかもその場にいるかのように感じるのがVR映像の大きな魅力だ。

この日、千葉ロッテがVR映像体験で行ったのは、球界初の試みとなるVR映像でのライブ配信。バックネットの1塁側寄りにある場内放送室にカメラを置き、千葉ロッテの攻撃中にはネクストバッターズサークルで備える選手が目の前にいるようなアングルとなる。携わった千葉ロッテ企画部の大高健氏は言う。

「サーバーの負荷も考えて、まずは特定端末でのテストという形で始めました。現状では11月の秋季キャンプやファン感謝デーで本格的なVRライブ配信を考えています。特にキャンプはグラウンド内で同時進行に練習が行われているので、面白い映像になるのではないでしょうか。例えばティー打撃をしている選手の横を見たらベンチ前でキャッチャー陣が特守をしている。ブルペンで投球練習中のピッチャーを見る一方で後ろを振り返れば、小林雅英投手コーチが練習をじっと見ている…。その場を体感できるのは面白さの一つですよね」

スマートフォンを用いた大型ビジョンとの連動イベント、ビーコンでの位置情報検索、そしてVRのライブ配信…。千葉ロッテの新しい試みはまだ始まったばかり。今後どのように発展していくのか、非常に気になるところだ。

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パ・リーグ インサイト 武山智史

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