2018年、楽天と私設応援団が挑む応援のパワーアップ。目指すのは「選手に力を与える応援」

パ・リーグ インサイト

2018.3.26(月) 13:40

私設応援団と球団が応援エンターテインメントを一緒に作り上げる(C)Rakuten Eagles
私設応援団と球団が応援エンターテインメントを一緒に作り上げる(C)Rakuten Eagles

本拠地に新たに設置した機材を用いて「全力応援練習会」を実施

投球や打球を解析する測定器「トラックマン」の導入(2014年)、スタジアムへの観覧車やメリーゴーラウンドの設置(2016年)など新しい試みを続けてきた楽天イーグルスが、昨オフより応援のパワーアップに取り組んでいる。

私設応援団の有志と球団職員からなる「応援プロデュースチーム」を立ち上げ、スタジアム演出用のインフラを生かした、これまで以上に選手に力を与えることのできる応援の実現を目指してきた。

今年1月には2曲の新しい応援ソングを制作し、本拠地・楽天生命パーク宮城のレフトスタンドに応援ステージとスピーカーを設置し使用することも発表。2月には仙台で「応援決起集会2018」を開催し、来場した1200名のファンに応援をレクチャーした。

オープン戦が始まると、各地の球場の外野席などで現地の応援団とともに、実際の試合で新しい応援を試してきた。

そうした段階を踏み、今月18日には楽天生命パークのレフトスタンドを実際に使って「全力応援練習会」が行われた。静岡県・草薙球場での広島カープとのオープン戦をスコアボードビジョンや特設モニタで観戦しながら、応援ステージや左右の壁に設置された計8機のスピーカーを用いた応援をテストした。

可能性感じた球場インフラを生かした新応援

「ホームラン! ホームラン! 〇〇!」といったコールは、これまでと同様に声と太鼓を使って行うため、応援の骨組みは変わらない。異なるのは応援歌を使った応援だ。

応援リード(応援のリード役)がサインを出すと、プロデュースチームのメンバーが機器を操作し音源を再生。レフトスタンド両サイドのスピーカーから応援歌の主旋律が流れると、同時にスコアボードビジョンに歌詞が表示される(無線を使った指示で一塁側にあるコントロールルームから操作)。そこに太鼓が打ち鳴らされ、声援が乗っていく。

実際に体験して感じたのは、応援歌のメロディと歌詞がはっきりとわかるので、初めて球場にやってきた人でもスムーズに応援に参加できそうだということだ。

また、応援の合間の応援リードからの言葉がマイクを通しスピーカーから明瞭に届くため、伝えようとしていることがしっかり聞き取れる。これも応援しやすい環境づくりに一役買いそうだ。

ビジョンの歌詞が遅れなく表示されることも、レフトスタンド以外の席でも応援歌を口ずさみやすくするように思えた。応援席に呼応して声援を送るファンもこれまで以上に増えるのではないか。

新しいスタイルが定着するまでには少し時間がかかるかもしれない。だが、応援と球場インフラの連携が深まっていけば、応援リードのコールのもと、球場全体がこれまで以上の一体感で選手に声援を送る光景を目にすることができるのでは――。そんな思いに駆られた。

私設応援団と球団が応援エンターテインメントを一緒に作り上げる(C)Rakuten Eagles
私設応援団と球団が応援エンターテインメントを一緒に作り上げる(C)Rakuten Eagles

「応援は重要なエンターテインメントである」。私設応援団と球団が一緒に作り上げる応援エンターテインメント

私設応援団と球団がここまで関わり合って応援を作り上げていこうとする動きは、球界でも初めてのものではないか。応援プロデュースチームの一員で株式会社楽天野球団ゲームエンターテインメント部部長の加茂功太郎氏が話す。

「応援はスタジアムでファンの方々が体験するエンターテインメントにおいて、大きなウェイトを占めています。だから球団はそれに関わっていく責任があると思うんです。選手に力を与える応援を実現させたいのは応援団の皆さんも同じ想いでしたので、一緒に作り上げていきたいとご相談しご理解いただきました」

「スタンドでファンの方々に大きな声で応援していただくためには、応援団の皆さんの応援リードがなくてはならないものです。球団は応援団の皆さんをしっかりサポートして、一緒に、楽しく、盛り上がる、そして選手に力を与える応援を実現させたいです」

加茂氏らは私設応援団と、応援とビジョンや音響、スタジアムMCによる演出を噛み合わせることや、ライト層のファンも覚えやすい応援スタイルなど、応援をもっと楽しく、もっと選手に力を与えるものにするために議論を開始。

描いたプランを実際の応援に落とし込む際には、国内外の野球の応援活動で長いキャリアを持ち、それ以外のスポーツの応援にも関わってきた神俊雄氏を招聘しアイデアを求めるなどしていった。

また、私設応援団は、仕事や学業と並行して活動をしており、ビジター球場の平日の試合などは人数を集めることが難しい場合もあるため、公設の楽天イーグルス応援パフォーマーを作りメンバーを確保するといったかたちで、球団が私設応援団のサポートを行うことも決まった。

当初は戸惑いも。しかし、対話重ね生まれてきた一体感

球団から提案を受けた私設応援団・東北荒鷲会のメンバーの一人で現在は応援プロデュースチームの一員でもある猿舘拓美氏は、当初は戸惑ったと話す。

「正直どうなるんだろうと思いました。最初の提案は結構漠然としていましたしね。それにこれまでも僕たちはチームに力を与えたいという一心でやってきましたから、抵抗はありました。このかたちが本当に応援をいい方向に変えるのかなと」

意見の相違はあった。だが、チームの勝利への思いやスタジアムに足を運ぶファンを楽しませたいという思いは応援団も球団も同じ。そこを起点に議論は徐々に前に進み出したという。

「これまでも球団の方と話をする機会はあったのですが、どこか遠慮がありました。でも今回時間をかけてコミュニケーションできたことで、以前より関係は深まったように思います。まだまだタイミングなど、しっかり詰めなければいけないところはたくさんあります。模索? そうですね。まさにその最中ですかね」(猿舘氏)

日本一をもう一度東北へ。そのために応援で何ができるのか。私設応援団と楽天イーグルスはそれを本気で考えてきた。

3月30日のZOZOマリンスタジアムでの千葉ロッテとの開幕戦、そして4月3日の楽天生命パークでの北海道日本ハムとの東北開幕戦は、応援における新たなチャレンジの幕が開く日でもある。両者は多くのファンと共に声援を送るのを、心待ちにしている。

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