威力のある速球と多彩な変化球を武器とする右腕には、かつての「埼玉西武の豊田」を知るオールドファンのみならずとも、魅力を感じるところだ。
埼玉西武の豊田拓矢投手が、オープン戦5試合に登板して無失点。プロ1年目以来となる開幕一軍入りに向け、アピールに成功している。
これまでは、ケガに悩まされて本来の実力を発揮しきれなかった快速右腕。防御率0.00で迎える2018年シーズンを、同姓の大先輩に近づく第一歩とすることができるだろうか。
ケガに泣いた2年。そして背番号を変更して臨む2018年
地元・埼玉県出身の豊田投手は、浦和学院高校、上武大学、TDKを経て2013年のドラフト3位で埼玉西武に入団した。ルーキーイヤーから開幕一軍を勝ち取ると、34試合に登板して2勝2敗2ホールド、防御率4.54という数字を残す。
しかし、2015年は故障に悩まされてわずか3試合の登板にとどまってしまう。翌年もケガとの戦いは続き、回復した後は6試合に登板して防御率1.50と好投したものの、一軍再定着を果たすまでには至らなかった。
昨季は二軍で安定した成績を残すが、一軍から声はかからず。プロ入り後初めて一軍の登板機会を得られなかったシーズンとなり、オフには背番号も「19」から「49」へ変更。30歳という年齢に到達したこともあり、徐々に厳しい立場に追い込まれつつあった。
だが、新シーズンに向けた今年のオープン戦で、豊田投手は与えられた登板機会においてその実力を発揮。5試合に登板して失点0、4回1/3を投げて6奪三振と、三振を奪える中継ぎ投手としての価値を証明し、開幕一軍入りに向けて猛アピールを見せた。
「西武の豊田」の再来なるか
「埼玉西武の豊田」といえば、かつて西武で活躍した豊田清氏を思い起こす。クローザーを務めていた時代の安定感は特筆もので、2002年には57試合で6勝1敗38セーブ、防御率0.78という圧倒的な成績を収めて最優秀救援投手の座に輝いている。
翌2003年も、58試合で2勝3敗38セーブ、防御率1.24で2年連続となる最優秀救援を受賞。球界を代表する守護神として、豊田氏が放っていた存在感は抜群だった。
豊田清氏は、150キロを超える速球と切れ味鋭いフォークを武器としていたが、それ以外にもカーブやスライダーを持ち球としていた。実は、これらの球種は豊田拓矢投手の持ち球にも共通するものだ。
清氏が投げていたカットボールの代わりに、拓矢投手はチェンジアップを投じる。清氏の決め球だったフォークの威力も含めて、当然ながら差異も見受けられるが、オールドファンのみならずとも「豊田の再来」に期待してしまうところだ。
充実する埼玉西武ブルペン、そのハイレベルな競争の先に
現在の埼玉西武では、増田投手がクローザーとして確固たる地位を築いており、豊田投手にとってはシーズンを通じて中継ぎとしての信頼を得ていくことが先決となるだろう。
平井投手や大石投手に加え、新加入の伊藤投手にワグナー投手と、埼玉西武で右の中継ぎとして枠を争うライバルは数多い。しかし、オープン戦の投球を見る限りでは、豊田投手がこの一角に食い込んでくる可能性も決して低くはないはずだ。
豊田投手は長きにわたって苦しめられた故障と決別し、今季こそ名実ともに「豊田2世」となれるか。26歳でドラフト指名を受けた遅咲きの右腕は、苦難の末に咲いた大輪の花を、日本中の野球ファンに見せることができるだろうか。
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