本当に「強いチームは接戦に強い」のか。 状況別の勝率、投打の数字から分析

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2019.9.11(水) 18:00

福岡ソフトバンクホークス・千賀滉大投手(C)パーソル パ・リーグTV
福岡ソフトバンクホークス・千賀滉大投手(C)パーソル パ・リーグTV

 よく、「強いチームは接戦に強い」と言われる。大差のついた試合ではリリーフ陣や守備が多少不安定でもそのまま逃げ切れる可能性が高いが、僅差の試合を確実にものにするリリーフ陣や守備の堅さ、緊迫した場面でチャンスを得点に結びつけるための勝負強さといった要素が、長いシーズンで安定して勝星を積み重ねていくためには必要という考え方によるものかもしれない。

 そこで、今回は今季の順位と接戦時の勝率に、どの程度の相関性があるのかについて調べていきたい。ここでは3点差以内の試合を僅差と定義し、最終結果が3点差以内の試合と、4点以上の差がついた試合における各球団の勝率を紹介する。(成績は9月9日時点)

首位のチームは“セオリー通り”となっている一方で……

北海道日本ハム(リーグ5位)
3点差以内:79試合 36勝43敗 勝率.456
4点差以上:45試合 23勝22敗 勝率.511
通算:129試合 59勝65敗5分 勝率.480

楽天(リーグ4位)
3点差以内:90試合 43勝47敗 勝率.478
4点差以上:36試合 20勝16敗 勝率.556
通算:130試合 63勝63敗4分 勝率.500

埼玉西武(リーグ2位)
3点差以内:70試合 37勝33敗 勝率.529
4点差以上:58試合 34勝24敗 勝率.586
通算:129試合 71勝57敗1分 勝率.560

千葉ロッテ(リーグ3位)
3点差以内:81試合 36勝45敗 勝率.444
4点差以上:46試合 28勝18敗 勝率.609
通算:131試合 64勝63敗4分 勝率.500

オリックス(リーグ6位)
3点差以内:75試合 41勝34敗 勝率.547
4点差以上:47試合 14勝33敗 勝率.298
通算:128試合 55勝67敗6分 勝率.450

福岡ソフトバンク(リーグ1位)
3点差以内:86試合 53勝33敗 勝率.616
4点差以上:39試合 17勝22敗 勝率.436
通算:129試合 70勝55敗4分 勝率.560

 福岡ソフトバンクは接戦時の勝率がリーグ内で唯一.600を超えており、まさに接戦に強いチームといえる。その一方で、4点差以上での勝率はリーグ5位。僅差の試合における抜群の強さこそが、リーグ首位に立っている理由だろうか。一方、埼玉西武は看板の強力打線が猛威を振るって不振の投手陣をカバーしている印象が強いが、4点差以上の試合だけでなく接戦時の勝率も優れており、大差時と接戦時で共に.500以上の勝率を記録している唯一のチームとなっている。

 楽天と千葉ロッテはどちらも大差となった試合では優れた勝率を記録しているものの、接戦の試合ではやや脆いという数字が出ている。現在両者は熾烈なAクラス争いを繰り広げているが、この数字を改善することが3位以上を狙うにあたって重要になってくるか。5位の北海道日本ハムは3点差以内の勝率がリーグ5位で、大差が開いた試合の成績も1つの勝ち越しにとどまっている。苦しい戦いが続いている理由の一端は、このあたりにあるのかもしれない。

 一方、オリックスは3点差以内の試合での勝率は福岡ソフトバンクに次ぐリーグ2位ながら、4点差以上の試合の勝率は極端に低くなっている。接戦に強いという要素を備えながら現在リーグ最下位と波に乗り切れておらず、僅差の試合を勝ちきれるというだけでは上位に進出できないという事実もまた浮かび上がってくる。

首位に立つ福岡ソフトバンク、その投手力はやはり盤石か

 接戦の試合を確実に勝利へと繋げるためには、勝ちパターンで投げる投手たちのピッチングが重要になってくることは言うまでもない。そこで、ここからは各球団の投手陣の成績を先発とリリーフに分け、その中から今回の記事の趣旨に沿った3つの数字をピックアップしていきたい。

北海道日本ハム
先発 平均投球回4.65 平均投球数75.51 防御率4.02
リリーフ 平均投球回4.27 平均投球数70.16 防御率3.59

楽天
先発 平均投球回5.45 平均投球数91.82 防御率4.28
リリーフ 平均投球回3.65 平均投球数62.03 防御率3.21

埼玉西武
先発 平均投球回5.58 平均投球数97.14 防御率4.88
リリーフ 平均投球回3.46 平均投球数61.47 防御率3.73

千葉ロッテ
先発 平均投球回5.62 平均投球数96.31 防御率4.04
リリーフ 平均投球回3.45 平均投球数57.67 防御率3.60

オリックス
先発 平均投球回5.65 平均投球数94.73 防御率3.87
リリーフ 平均投球回3.44 平均投球数61.14 防御率4.44

福岡ソフトバンク
先発 平均投球回5.54 平均投球数95.96 防御率3.89
リリーフ 平均投球回3.5 平均投球数62.68 防御率3.17

 北海道日本ハムはショートスターターやオープナーを積極的に導入していることもあり、先発の平均投球回と平均投球数が他球団と比較すると目に見えて少なくなっている。平均投球回が5回に到達していないのも、平均投球数が90未満となっているのもパ・リーグでは1チームだけだ。

 また、先発とリリーフの両方で防御率3点台を記録しているのは福岡ソフトバンクだけ。投手陣にも故障者が続出しながらこれだけの数字を残せている層の厚さが、接戦で素晴らしい強さを発揮できている理由か。一方、埼玉西武は先発投手の防御率がリーグ最下位、リリーフ陣もリーグ5位と、投手陣は安定感を欠いている。強力打線がそれを補って余りある働きを見せていることが、チームの高い勝率へとつながっているのだろうか。

 楽天はリリーフ防御率がリーグ2位、千葉ロッテは3位と0.01差の4位と十分な数字を残しているが、それぞれ接戦時の勝率は楽天が4位、千葉ロッテが最下位と芳しくない。リリーフ防御率がリーグワーストとなったオリックスが接戦に強く、リリーフ防御率リーグ3位の北海道日本ハムは接戦時の勝率がリーグ5位に沈んでいることを考えると、必ずしも救援陣の強さが接戦での勝利に直結するわけではないとも言えそうだ。

僅差の試合で高い勝率を残しているオリックスだが……

 前のパラグラフでは投手についての分析を行ったので、次は打撃面にも目を向けていきたい。接戦時と大差時での打撃成績の違いを、チームごとに紹介していく。なお、本塁打率は本塁打を1本放つのに何打数かかるのかを示す指標であるため、数字が小さいほうが優れた数字となる点にはご留意いただきたい。

北海道日本ハム
3点差以内:3384打数862安打 69本塁打380打点 打率.255 本塁打率49.04
4点差以上:943打数236安打 19本塁打114打点 打率.250 本塁打率49.63

楽天
3点差以内:3718打数929安打 107本塁打440打点 打率.250 本塁打率34.75
4点差以上:641打数166安打 23本塁打96打点 打率.259 本塁打率27.87

埼玉西武
3点差以内:3402打数931安打 124本塁打521打点 打率.274 本塁打率27.44
4点差以上:1035打数251安打 39本塁打142打点 打率.243 本塁打率26.54

千葉ロッテ
3点差以内:3527打数874安打 117本塁打443打点 打率.248 本塁打率30.15
4点差以上:856打数209安打 33本塁打117打点 打率.244 本塁打率25.94

オリックス
3点差以内:3562打数862安打 70本塁打370打点 打率.242 本塁打率50.89
4点差以上:728打数187安打 22本塁打95打点 打率.257 本塁打率33.09

福岡ソフトバンク
3点差以内:3428打数871安打 137本塁打416打点 打率.254 本塁打率25.02
4点差以上:891打数216安打 33本塁打104打点 打率.242 本塁打率27.00

 大差の試合での勝率が高く、僅差での勝率は低かった楽天は、4点差以上での打撃成績のほうが3点差以内の時よりも良くなっていた。同様の傾向を示していた千葉ロッテは、打率こそ僅差時のほうがわずかに高かったものの、本塁打や打点の効率は大差時の方が優れている。逆に、僅差の試合で強さを発揮する福岡ソフトバンクは、3点差以内の際により良い打撃成績を記録。ここまでは勝率通りの結果となっているが、福岡ソフトバンクと同じく接戦に強いオリックスは、4点差以上のほうが打撃成績が優れているという点がやや興味深いところだ。

 そのオリックスの成績の内訳を見てみると、4点差以上で負けているケースでは460打数で打率.246、本塁打率32.86なのに対し、4点差以上でリードしている場合は268打数で打率.276、本塁打率33.5と、打率の面で大量リード時が僅差時を大きく上回っている。一方、打数に目を向けると、ビハインドを背負うケースの方がかなり多くなっており、打撃成績と勝率の食い違いの要因の一つはここにあるとみなせそうだ。

 ビハインドを背負うことが多くなっている理由の一つとして、先ほど確認した救援陣の防御率が挙げられる。オリックスは先発防御率3.87に対し、リリーフ防御率が4.44と大きく悪化しており、リリーフに限ればリーグ唯一の4点台となっている。ディクソン投手、海田智行投手、近藤大亮投手といった面々は安定しているが、防御率が4点台以下の投手も多くなっており、リードされた試合でさらに傷口を広げてしまうケースも少なくなかった。

 数字の面では、やはり3点差以内での打率が.274と、全シチュエーション内でもトップの数字を記録している埼玉西武の猛打が目につく。全体としては、大差がついた試合では相手の勝ちパターンが登板する可能性が低いこともあって、多くのチームが優れた本塁打率を記録している。そんな中でも、埼玉西武を上回る本塁打率を記録している千葉ロッテと、3点差以内時の埼玉西武に次ぐ全体2位の打率を残している楽天の奮闘が光っている。

 一方、北海道日本ハムは3点差以内、4点差以上の双方において、本塁打率がかなり悪い数字となっている。中田翔選手の故障やレアード選手の退団が影響して長打力不足に陥った印象は否めず、やや迫力を欠いた打線の不調がチーム全体の成績にも影響を及ぼしている可能性はありそうだ。

通説通りであるチームと、そうではなかったチーム

 実際に数字を見てみると、リーグ首位の福岡ソフトバンクは接戦での強さが際立っており、「強いチームは接戦が得意」という通説通りの成績を収めているといえる。また、相対的には大差時のほうがより強いという結果となっているものの、僅差と4点差以上の双方で勝率5割を上回る数字を残している埼玉西武も、リーグ連覇を争うに相応しいチーム力の高さを示している。

 しかし、3位の千葉ロッテと4位楽天の2チームは僅差の試合での勝率が.500を割り込んでおり、オリックスは接戦時の成績はリーグ2位ながら、ペナントレースでは最下位へと沈んでいる。このように、必ずしも接戦に強いチームが上位に位置するというわけでもない、ということも同時に見えてきたと言えそうだ。

 なかなかベストメンバーが揃わない中で試合巧者ぶりを見せつけ、僅差の試合を確実に勝利に結び付けてきた福岡ソフトバンクと、圧倒的な打力を武器に、点差を問わずに強さを発揮してきた埼玉西武。大きくチームカラーの異なる2チームによって繰り広げられている優勝争いが“セオリー通り”の結末を迎えるのか否かにも、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。

記事提供:

パ・リーグ インサイト 望月遼太

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