埼玉西武に12球団最大級の新道場 “練習の鬼”山川の思い継承へ「4番が誰よりも練習する」

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2019.7.19(金) 07:45

室内練習場で素振りをする松井稼頭央2軍監督※写真提供:Full-Count(写真:安藤かなみ)
室内練習場で素振りをする松井稼頭央2軍監督※写真提供:Full-Count(写真:安藤かなみ)

埼玉西武に新たに室内練習場と選手寮が誕生 松井稼2軍監督「1軍の選手たちが打てば…相乗効果に期待したい」

 メットライフドームの大規模改修に伴い、若獅子寮と室内練習場も取り壊しが決まっている。埼玉西武第二球場の右中間フェンス後方に位置する室内練習場の深緑のトタン屋根には、選手たちが打ち上げた打球が当たって穴が開いた箇所を修理した跡が無数に残る。その隣に、真新しい若獅子寮と室内練習場が建てられた。

 室内練習場は「ライオンズトレーニングセンター」と名前を変え、生まれ変わった。旧室内練習場では打撃練習をする場所に限りがあり、時には打撃用のマシンを待つ選手たちが順番待ちをすることもあった。新しいトレーニングセンターではマシン打撃のレーンが4か所に増えたことに加え、これまでは2軍選手の数のみしか用意されていなかったロッカーが増設され、在籍する全ての選手に十分な数が確保された。報道各社に各施設がお披露目された際には、松井稼頭央2軍監督がこう話した。「1軍の選手たちがここで打っていれば、2軍の選手はそれ以上に打たないといけない。相乗効果に期待をしたい」。

 まだ新施設が稼働する前のことだ。夜のとばりが降りたころ、室内練習場からカツンカツンとボールを叩く音が聞こえてくる。ナイトゲームを終えた山川の姿がそこにあった。試合終了後、ほどなくしてバットを担いで室内練習場に向かい、打った日も、打たなかった日も、同じように振り込み続ける。昨季優勝チームの4番を任されるプレッシャーもある中、「50本」というとてつもない数字を口にし、その実現のために練習を怠ることはない。もともと「野球に関しては“鬼の心配性”」と自称する山川には、練習に対してのぶれない思いがある。

山川を駆り立てるきっかけになった上本1軍ブルペン捕手の言葉

「練習したら打てる。しなかったら打てない。そう決めないと、練習できないんです。『練習しても打てない』と分かれば練習しないし、逆に『練習しなくても打てる』と分かっても、練習しない。だから練習したら打てないとだめだと思うんです。練習をたくさんすれば、試合に割り切って入ることができる。それで打てなかったら、また練習して、今度は打てるって考えるんです」

 山川を駆り立てるきっかけになったのは、現在は1軍ブルペン捕手を務める上本氏の一言だった。2017年限りで現役を引退した上本氏は、現役時代には試合が終わると必ず室内練習場に足を運びバッティング練習を行っていた。2017年の真夏のある日、試合後の練習に現れた山川に上本氏は声をかけた。

「お前は練習しなくても打てるけど、練習すれば誰もお前に勝てなくなるよ」

 この言葉が、当時1軍の座をつかみかけていた山川の心に火をつけた。上本氏はこうも言う。

「彼が練習しようがしまいが、打てば誰も文句を言わなくなる。そういうところも含めて言って。『4番を打っているやつが誰よりも練習をしている』というのが後世に繋がっていって、いい伝統になればいいなと思います」

 埼玉西武は施設が古いなんて、よく言われたものだ。だが、ここにしかないものもたくさんある。1軍本拠地のメットライフドームから、2軍の使用する各施設までは歩いて5分と他球団にはない近さを誇る。だからこそ、上本氏が山川に声をかけることもできた。そしてその姿を、また次の世代の若獅子たちが目に焼き付け、奮起する。新しい設備が導入されても変わらない関係がそこにはある。松井2軍監督の期待する“相乗効果”は、これからさらに加速するに違いない。

(安藤かなみ / Kanami Ando)

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