パ・リーグ球団の若手職員が熱弁。『どうしたら、新たなファンを増やせるか?』

パ・リーグ インサイト 武山智史

2018.3.15(木) 15:13

「若手社員トークセッション」の様子【撮影:武山智史】
「若手社員トークセッション」の様子【撮影:武山智史】

登壇者の若手球団職員3人「仕事が楽しい」

2月20日、東京・渋谷にてパ・リーグ6球団とPLM(パシフィックリーグマーケティング)による合同イベント「PACIFIC LEAGUE BUSINESS CAMP 2018」が行われた。このイベントはプロ野球界の就職を考える大学生、大学院生などを対象に、各球団とPLMが個別ブースで業務内容や球団方針について説明する「仕事研究・体験イベント」だ。

昼、夜の2部制で行われた中、昼の部で開催されたのがパ・リーグ球団の若手職員が自らの仕事について語る「若手社員トークセッション」だ。登壇したのは北海道日本ハムの藤野功氏、楽天の武石真氏、福岡ソフトバンクの川原啓司氏。3人とも20代で入社4年目以内、チケット販売を取り扱う部署で勤務している。

3人が自己紹介、入社の志望動機を話した後、話題となったのは「入社前と入社後のギャップについて」だった。この話題に関して3人が共通して答えたのは「仕事が楽しい」という点だった。

「チケットの売り上げや観客動員といった野球事業の根幹に携わらせていただいていますが、やりがいを感じていて『社会人は思った以上に面白いな』と感じています。1年目は大変な部分もありましたけど、そこを乗り越えるとどんどんステージが上がり楽しくなってきました」(川原氏)

「組織が縦割りされているイメージがあったのですが、良い意味でそんなことはなかったです。自分の意思や思いがあれば、様々なものにチャレンジできる。自由度の高い環境でやらせてもらっていますね」(武石氏)

「自分で考えて行動してみれば、どんどんビジネスの領域は広がると思います。入社後に自分の仕事内容は広いなと気付かされました。さらに仕事を作っていける楽しみがありますね」(藤野氏)

トークセッションの本題「どうしたら、新たなファンを増やせるか?」

そして、トークセッションの本題である「どうしたら、新たなファンを増やせるか?」という話題に突入。藤野氏は北海道日本ハムの取り組みをこう紹介する。

「今来て頂いているお客様の情報を収集・分析し仮説を立て、新たな戦略を練っています。球団ではチケット、グッズなどの購買状況を一元管理するシステムが整い始めました。これから進めていく状況です」

ここで藤野氏が「情報分析・収集はどのようにされているのでしょうか?」と川原氏に福岡ソフトバンクの取り組みについて質問する場面も。川原氏はその質問に「一元管理するシステムは昨年から導入しました。それまでは感覚値で仮説を立てていましたが、データで裏付けが取れるようになった。顧客のデータ分析をすることで、買う可能性の高い層にだけ情報を送る取り組みをしています。その効果はとても大きいです」と説明した。それに対し藤野氏が「いろいろ教えてもらってありがとうございます」と笑顔で返し、壇上で球団間の情報交換が行われる一幕もあった。

新しいファンを取り込む…。そのために北海道日本ハムが行っているのは、他のスポーツとの連携だ。

「全く野球と関係ないコンテンツと組んで、新しいファンを増やそうと取り組んでいます。例えば先日、北海道にあるBリーグのチーム・レバンガ北海道さんの試合を北海道日本ハムが主催しました。そこではファイターズは見に行くけど、レバンガは行ったことがない、あるいはその逆のファンをお互いが新しく取り込む意図があります」

川原氏は女性を取り込む方法として、福岡ソフトバンクが行っている「タカガールプロジェクト」の事例を挙げた。

「女性3万人が来場し、球場がピンク一色に染まるイベント『タカガールデー』もありますし、野球と関係ないイベントを球場外で行い野球とセットで楽しんでもらう企画を提案してきました。女性の方が友達を連れて来たりして促進しやすいんですね。そこで女性2、3名掛けのソファー席『タカガールシート』を設置しました。インスタ映えするデザインにして、写真を撮ってSNSに発信して広めてほしい思いはありますね」

本拠地・楽天生命パーク宮城のレフトスタンドに観覧車やメリーゴーラウンドのある「スマイルグリコパーク」を有する楽天は、ファミリー層を意識して新たなファン獲得を狙っている。武石氏が言う。

「野球を見に来るだけではない場所、家族で休日に遊びに行きたい空間を作り上げる意図があります。それによって野球に興味がなかったお客様が球場へ行く理由が生まれてきますよね。また、最近は野球以外の他のコンテンツと一緒に組む試みもやっています。例えば、球場周辺でColor Me Rad(カラーラン)を開催した後、参加者が野球を見に行く。そのようなことが最近の楽天の強みだと思います」

一方、藤野氏はそのキーワードの一つとして「地域に愛されること」を挙げた。

「たくさんのお客様が来てもらうのに大切なのは、地域の方々に愛される球団が近道だと感じます。例えば以前、企画チケットで夕張メロン付チケットを販売しました。地域に還元する、地域のお客様を大切にする企画を積み重ねることで、球場に来てもらう状況を作り出すのが大切ではないでしょうか」

球団職員として働く”やりがい”とは

最後に参加者へのメッセージとして3氏は次のようなメッセージを送った。

「自分が企画したサービスを、お客様が楽しんでいるのを間近で見られるのが一番うれしいこと。やりがいを感じる職業でもあるので、ぜひ一緒に仕事ができればと思います」(藤野氏)

「社会に対して影響力の高い仕事をさせて頂いていると思います。高いマインドで一緒に働ける方とやっていけたらいいですね」(武石氏)

「『野球が好きだ』という思いがダイレクトに生かせて、思いがあるからその魅力を伝えたいという心がある仕事だと日々感じます。思いを持ってアイディアを出す熱量のある人が入ってきてくださると、こちらも影響を受けてより頑張らなきゃなと感じると思います。ぜひお待ちしております」(川原氏)

トークセッションを終えた川原氏は「藤野さん、武石さんとは壇上だけでなく色々情報交換することができました。下の世代の方々が入ってきて、刺激を受けながら働きたい気持ちと負けないように頑張らなくてはという気持ちが湧いてきましたね」と新しい刺激を受けた様子だった。

新しいファンの獲得、そして球団が多くのファンに愛されるために…。各球団の若手職員は既存の概念に囚われない、新たな企画やアイディアをその“若い力"で生み出していく。

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パ・リーグ インサイト 武山智史

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