メダルは通行手形。大浦征也×太田雄貴「スポーツビジネス」トークセッション

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2019.7.2(火) 11:00

スポーツキャリアフォーラム
スポーツキャリアフォーラム

スポーツ業界の「働く」に迫る「スポーツキャリアフォーラム」

 6月14日、転職を考えるビジネスパーソンの方々に、ビジネスとしてのスポーツをより知ってもらうための中途採用イベント「スポーツキャリアフォーラム」がベルサール飯田橋ファーストにて開催された。

 当イベントは、パシフィックリーグマーケティング株式会社(PLM)が主催となり、パ・リーグ6球団やスポーツクラブチームなど、スポーツ関連企業27社が出展した。その中でメインコンテンツとして行われた、公益財団法人日本フェンシング協会会長の太田雄貴氏と、転職サービス「doda(デューダ)」編集長の大浦征也氏による「スポーツビジネス」をテーマにしたトークセッションの模様をお届けする。

公益財団法人日本フェンシング協会会長の太田雄貴氏
公益財団法人日本フェンシング協会会長の太田雄貴氏

スポーツとビジネスの共通点とは……

 かつてはオリンピックで銀メダルを2枚獲得されるなど、選手として活躍されていた太田雄貴氏。引退後は、森永製菓で勤務したのち、全日本フェンシング協会会長の職を引き受けたという。「企業が合わなかったんですよね。自由奔放な性格なので。そこで会長としての職を引き受けて改革をし始めた。でも、フェンシング界のためだけにやるのはこの何年間かだけと決めています」と意外な事実を口にした。

 「何年間かだけ」と決意した中で、現在おもしろいと注目しているのは「いわゆるマイナースポーツの団体が補助金や税金などに頼りすぎないで運営できたら」ということだという。「いままでなかったことをやろうと。一種のケーススタディになるなと思って」と明かした。

 ここで大浦氏から、「幼少期からずっとフェンシングをやっていて、どうやってそのようなビジネススキルを身に付けたのか」と、会場が不思議に思っていた鋭い質問が飛んだ。

 これに対し太田氏は、「方法は同じだと思う」と切り出すと「フェンシングは戦略系の競技。複合的にどう15点を積み重ねる。そういう感覚はフェンシングもビジネスも同じだと思います」と満面の笑みで返した。

 会場が感嘆に包まれたのは太田氏の「掛け算」という言葉を含んだ話題だった。「メダルを取ったときに通行手形だと言い切ったんです。メダルはあくまで手段だと思ってて、メダルを持って次の町に行くみたいな。フェンシングをやってました、集客できます、メダルを取りましたって掛け算をしていく。そうすると唯一無二になれるんです」と今の自身の価値観を明かすと、これには大浦氏も

「今はキャリアの時代からスキルの時代になって、スキルの掛け合わせが必要な時代になった。人生100年時代と言われる今、大事なことが自然発生的にできているんですね」と納得の表情で頷いた。

転職サービス「doda」編集長の大浦征也氏
転職サービス「doda」編集長の大浦征也氏

スポーツ業界が求める人物像とは

 ここから話題は「フェンシングの改革」へと移った。「僕、超左脳型なんでアイデアがすぐに出てこないんです。でも、課題抽出能力は人より長けていると思うで競技の足りないところを埋めていくようにしている」と、現在の活動の軸を語った太田氏。

「メジャーになりづらいスポーツの掛け算として『ルールの複雑性』と『顔が見えるか』があると思ってます。フェンシングはその点で運営からしたら負け試合です」と会場の笑いを誘うと、「会場のお客さんに共感してもらうために選手のハートレートを出してモニターに出したんです。心拍で語れって。それでも飽き足りずに審判の心拍数も出したんです」と、大胆な改革内容を語り、会場の度肝を抜いた。「こういうところでひとつでもおもしろかったポイントを作れれば勝ちなんです」と、してやったりの笑顔で語った。

 イベントが終盤に差し掛かると、「スポーツ業界に求められる人」というテーマに。大浦氏からの「どのような人にビジネス界から入ってきて欲しいですか」という問いを投げかけられた太田氏は、一瞬考え口を開いた。

「フェンシングが財政規模が小さいんです。簡単に言えばお金がない。その解決方法に兼業・副業を見つけて、協会の4部門で募集をかけたら1127人が応募してくれました。そういう人たちと仕事をしていると、『自分事のようにできる』というのは大切だと思います。そういう人は貴重です」と太田氏がスポーツ業界の求める人材について語ると、参加者たちはペンを走らせた。「手段にこだわる人よりも達成したいミッションを見れる人が良い」と続け、トークセッションを締めた。

最後はアスリートのセカンドキャリアについて熱弁

 トークセッションが終了し、質疑応答へ。ここで太田氏が熱く語ったのは「セカンドキャリア」についてだった。

「多くのアスリートが指導者を選ぶのに今の道を選んだのはなぜか、フェンシングの期間を終えたらどうしたいのか」という質問に対し太田氏は、「コーチになる人は専門性が必要。外部人材は代えが利く。でも、日本における問題点はコーチしか選択肢がないこと。他の分野に行けないと親御さんは子どもにスポーツをさせづらくなる。どんな領域でも活躍できる人を増やさないと」と回答した。

 さらに今後については、「なんも考えてないといえば考えてないんですよ」と切り出し、「スポーツはおなか一杯なんですよ。ちゃんと学び直しをしないとなと思っています。ここまで我流でやってきたので、グローバルな視点を学びたいですね」と今後の展望の一部を明かした。

 転職を考えるビジネスパーソンの方々にビジネスとしてのスポーツを、より知ってもらうために開催された「スポーツキャリアフォーラム」。短い時間ではあったが、太田雄貴氏と大浦征也氏の「スポーツビジネス」をテーマにしたトークセッションが終わり、イベントは大盛況で幕を閉じた。

文・須之内海

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