2万人を動員した「YOKOSO 桃猿」。チアが見た台湾野球とパ・リーグの未来

パ・リーグ インサイト 藤原明日美

2019.6.25(火) 11:00

(C)PLM
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高い人気を誇る「YOKOSO 桃猿」

 5月11日・12日に台湾のプロ野球リーグ中華職棒大聯盟・Lamigoモンキーズの試合イベント「YOKOSO桃猿」が桃園国際棒球場で行われた。パシフィックリーグマーケティング株式会社(以下PLM)は昨年に引き続きリーグプロモーションを実施し、台湾の野球ファンへ向けてパ・リーグ各球場への来訪を呼びかけた。

 今回パ・リーグから台湾へと派遣されたのは、昨年に続いて2回目の参加となったクラッチ(楽天)、謎の魚(千葉ロッテ)、ファイターズガール(北海道日本ハム)に加え、ハニーズ、マッチくん、トッシーさん(以上福岡ソフトバンク)、MCこなつさん(千葉ロッテ)、Pacific League Girls(PLMのチアチーム)が新たに参加。華やかなパフォーマンスで球場を盛り上げた。

 また、先行来場者プレゼントとしてオリックスのグッズが配布されたほか、ラッキー7のジェット風船の演出では、埼玉西武とオリックスが実際のラッキー7で使用している音源をそれぞれ使用。さらにはこなつさんや各チアが日本語での場内アナウンスを担当するなど、台湾にいながらもパ・リーグ全6球団それぞれのカラー、そして日本プロ野球の雰囲気を楽しむことができる、特別な2日間となった。

 チアやマスコットによるパフォーマンスだけでなく、パ・リーグに所属する台湾出身選手を中心とした選手メッセージ動画の放映、さらには日本食の屋台など、日本のプロ野球の多様な要素がふんだんに盛り込まれた本イベントは、現地のファンも心待ちにしているという。実際、今回PLMが独自で行ったアンケート調査では、回答者のうち実に82%の観客が本イベントの開催が来場の動機になったと答えており、2日間の来場者数も約2万人。台湾プロ野球の平均観客動員数(5~6千人)を大きく上回った。

「チア目線」で感じる台湾野球の魅力

 今回筆者は、PLM発のチアチーム「Pacific League Girls」として球場を訪れた。昨年は北海道日本ハムのファイターズガールとして訪台しており、今回が2度目のイベント参加となった。

 桃園棒球場でパフォーマンスを行う上で常々感じることは、チアに対するファンの注目度の高さである。普段、自分たちが普段踊る機会のない場所で行うパフォーマンスというものは、どうしても「アウェー状態」になってしまうものだが、桃園棒球場のステージに限っては全くの例外だ。ステージに立った瞬間から、大勢のファンからの期待に満ちた視線と声援が痛いほど感じられ、今までに味わったことがないほど強烈な「ホーム感」を味わうことができる、非常に珍しい場所なのである。これは「チア」という存在がチームの一員として広く受け入れられており、また多くのファンから注目されている証だろう。

 応援のスタイルも日本と台湾では大きな違いがある。筆者が昨年まで活動の場としてきた札幌ドームにも、桃園棒球場と同じく1・3塁側スタンドに応援ステージがあり、レフトスタンドと連動して内野からも応援を行うスタイルが定着してきた。だが一般的に日本のプロ野球では主に応援席が外野に設けられており、内野席でチアと共に汗を流しながら応援をしてくれるファンは決して多くはない(内野席での立っての応援が禁止されている球場もある)。

 一方、桃園棒球場は内野のLamigoファンが総立ちで、チアの動きを完全にコピーし、歌い踊りながら目の前にいる選手たちへと声援を送る。スタンドが一体となり熱狂的なエールを送る様子はまさに鳥肌ものであり、何度体験しても、言葉では言い表せない感動がこみ上げるのだ。

 応援の形はそれぞれであり、正解や不正解はないが、Lamigoファンの情熱的な応援は台湾野球の大きな魅力のひとつと言えるだろう。そして、その応援は間違いなくチームの活躍に直結しており、選手一人ひとりにとって必要不可欠なものであると自信を持って言える。

 実際に、Lamigoの応援を見てその魅力に取りつかれてしまう日本人は多い。特に今年はキャンプからオープン戦期間にかけてLamigoとパ・リーグ球団の交流試合が多く開催され、そこで初めて目にしたLamigoの応援に対する驚きや感動の声はSNSでも散見されている。

 そして本イベントでも多数の日本人ファンが桃園棒球場に駆け付け、現地のファンに混じって楽しそうに応援をする姿を幾度も目の当たりにし、形容しがたいうれしさで胸がいっぱいになった。国が違えど、野球に対する思い、応援する心は同じなのだと実感することができた大変貴重な2日間であった。

(C)PLM
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イベントを通して見えた未来

 昨年、そして今年とこのイベントに参加し、最も強く感じたのはこのイベントを通して見えたパ・リーグと台湾の未来だ。

 昨年は初の試みということもあり、普段は目にすることがないパフォーマンスや、自分たちの知らないキャラクターとの交流を楽しんでいる様子がうかがえた。しかし今年は謎の魚やクラッチのグッズを身に着けて写真撮影を楽しんだり、チアの名前を覚えて日本語で話しかけて下さったりする方も非常に多く、まさに「YOKOSO 桃猿」の名の通り、Lamigoファンの方々が我々の想像をはるかに超えた強い愛情をもって迎え入れてくれた。

 我々パ・リーグが台湾のファンに歩み寄っていると同時に、たくさんの台湾のファンもまたこのイベントを通してパ・リーグや日本のプロ野球というものに歩み寄り、台湾と日本の距離は確実に近づき始めているのだ。

 いつかこのイベントの規模がより大きなものになり、パ・リーグのエンタメ全てが集結したら、よりパ・リーグを深く知ってもらえるだけでなく、日本からも来場者が増え、より多くの方に台湾の野球の面白さを知ってもらうことができるだろう。あるいは、いっそのこと選手たちのようにチアだって国を越えた移籍があってもいいのでは……などと、夢は膨らむばかりだ。

記事提供:

パ・リーグ インサイト 藤原明日美

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