現在、一軍は交流戦の真っ只中にあるが、二軍では若手、中堅、ベテランがそれぞれの目的を持ってグラウンドで汗を流している。「ファーム」という名の通りに育成の場でもある二軍では、若手選手の出番がより優先されることも少なくはない。だが、二軍には実績ある選手を復調に導くための調整の場としての側面も存在している。
そこで、今回は過去に一軍で十分な実績を上げており、今季の二軍で活躍が期待できる成績を残している選手たちを各球団から1名ずつ紹介。これまでの経歴と今季置かれた状況について解説し、復活への期待感を述べていきたい。
浦野博司投手(北海道日本ハム)
2019年成績(二軍):9試合 1勝0敗5セーブ 11.1回 14奪三振 防御率1.59
セガサミーから2013年のドラフト2位で入団した浦野投手は、プロ1年目から先発として7勝を挙げる活躍を見せる。2016年に発覚した、利き腕である右肩の骨が壊死するインピンジメント症候群という難病を乗り越えて、2018年にはリリーフとして36試合に登板。一時は抑えを務めるなど適性の高さを示し、2勝2敗9ホールド7セーブ、防御率2.16という好成績を収めた。
しかし、2019年は4月に入ってから不安定な投球が散見されるようになり、2失点した4月29日の福岡ソフトバンク戦を最後に二軍での再調整を余儀なくされる。それでも二軍ではイニング数を上回る奪三振数を記録するなど格の違いを見せており、安定した防御率を維持して復調をアピールしている。難病を克服して蘇った右腕が、再び一軍で重要なピースとなれる可能性は十分にあるはずだ。
久保裕也投手(楽天)
2019年成績(二軍):16試合 2勝0敗3セーブ 15.2回 20奪三振 防御率1.15
東海大学から2002年にドラフト自由枠で巨人に入団した久保投手は、2010年に40ホールドポイント、2011年に21ホールド20セーブを記録するなど主力投手として活躍。ケガの影響で一軍登板なしに終わった2015年オフに横浜DeNAに移籍したが、ここでも9試合の登板にとどまって2年連続で戦力外に。2017年からは、自身3球団目となる楽天に移籍した。
新天地でも久保投手はケガに苦しみ、一時は育成落ちも経験したが、2017年に27試合で防御率3.60、2018年に25試合で防御率1.71とその実力は健在。2019年はここまで一軍での登板機会こそないが、二軍では15.2回で20奪三振と抜群の投球を続けており、準備は万端といえそうだ。通算500試合登板の偉業まであと21試合に迫っている百戦錬磨の右腕は、優勝を争うチームの強力ブルペン陣にさらなる厚みをもたらしうる存在だ。
大石達也投手(埼玉西武)
2019年成績(二軍):12試合 1勝0敗3セーブ 12回 12奪三振 防御率2.25
早稲田大学から2010年のドラフト1位で入団した大石投手は、相次ぐケガに悩まされながらも2016年に一軍での36試合で防御率1.71という成績を残す。翌2017年にも20試合で防御率0.93という素晴らしい安定感で、速球とフォークを武器にリリーフとして活躍した。しかし、2018年は10試合で防御率7.00と調子を崩し、チームのリーグ制覇にもほとんど貢献できなかった。
続く2019年もここまで一軍での登板はないが、二軍では背中の張りで戦列を離れる時期こそあったものの、リリーフとして優秀な投球を見せている。チーム防御率がリーグ最下位と苦しむ埼玉西武にとって、完調ならば抜群の安定感を誇る大石投手が復活すれば大きな追い風となりうる。昨年10月に30歳となった剛腕は、再びファンの前でその快速球を見せてくれるだろうか。
大谷智久投手(千葉ロッテ)
2019年成績(二軍):20試合 2勝1敗1セーブ 20.1回 20奪三振 防御率1.33
大谷投手は報徳学園高校、早稲田大学、トヨタ自動車とアマチュア球界の名門を渡り歩き、2009年のドラフト2位で入団。当初は先発と中継ぎの双方をこなしていたが、ほぼリリーフに専念した2014年に49試合で23ホールド、防御率1.94と大活躍。続く2015年も56試合で32ホールド、防御率2.39という数字を残し、セットアッパーとしての地位を確立した。
その後も勝ちパターンで登板を重ねていたが、2018年は7月中旬以降に不振に陥り、45試合で防御率5.40と調子を崩してしまう。2019年はまだ一軍での登板機会を一度も得られていないが、二軍ではさすがの投球内容で格の違いを見せている。かつては「8回・大谷、9回・西野」という盤石の継投をともに構成していた西野勇士投手が復活を果たしているだけに、通算120ホールドを積み上げてきたベテラン右腕もそれに続きたいところだ。
西野真弘選手(オリックス)
2019年成績(二軍):30試合 93打数29安打 0本塁打5打点 打率.312 出塁率.402
JR東日本から2014年のドラフト7位で入団した西野選手は、ルーキーイヤーの2015年に打率.304と巧打力を発揮して二塁のレギュラーを獲得。この年はケガの影響で57試合の出場にとどまったが、翌2016年には全143試合に出場し、打率.264、出塁率.335、16盗塁という成績でチャンスメーカーとして奮闘。だが、2017年は打率.234と苦戦し、セカンドの定位置も明け渡してしまう。
しかし、続く2018年には打率.293と持ち前のシュアな打撃が復活。三塁手にポジションを変えてレギュラーへと返り咲いたかと思われたが、守備練習中に打球が直撃して前頭骨を骨折。またしても不運な形でシーズンを棒に振ると、再起を期した2019年も一軍での16試合で打率.150と苦戦が続いている。それでも二軍では.300を超える打率をマークしており、出塁率も.400超。俊足巧打の内野手は、今季こそ完全復活とケガの克服を果たせるか。
長谷川勇也選手(福岡ソフトバンク)
2019年成績(二軍):20試合 55打数16安打 2本塁打7打点 打率.291 出塁率.391
専修大学から2006年の大学生・社会人ドラフト5巡目で入団した長谷川選手は、プロ3年目の2009年に143試合で打率.312と台頭して定位置を獲得。2013年には全144試合に出場して198安打を放ち、19本塁打、83打点、打率.341の好成績で首位打者にも輝いた。卓越したバットコントロールを武器に活躍を続けたが、2015年以降は度重なるケガの影響で出場機会を減らしてしまう。
2018年には55試合の出場ながら5本塁打、打率.287と復活の兆しを見せたが、2019年は昇格直後にアキレス腱を痛める不運もあり、ここまで一軍での出場は1試合のみ。それでも5月末に戦列復帰を果たし、一軍復帰に向けて調整を続けている最中だ。通算出塁率.365と優れた選球眼を備えるベテランにとって、二軍での出塁率.391は持ち味の一つを発揮し始めている証拠か。負傷者続出のチームにとって、かつての首位打者の打棒は頼もしいものになるかもしれない。
今季は公文克彦投手(北海道日本ハム)や塩見貴洋投手(楽天)が二軍での調整を経て、一軍の舞台でも活躍を見せている。また、長きにわたってケガに悩まされてきた和田毅投手(福岡ソフトバンク)も実戦を経て徐々に状態を上げていき、交流戦からは一軍に合流予定だ。これらの選手は二軍調整が奏功した例と言えそうだが、長いシーズンにおいて、選手層に厚みをもたらす彼らのような存在は、どのチームにあっても待望されるところだ。
今回取り上げた選手たち、あるいは現在はまだ状態が上がり切っていない選手たちの中から、苦しい時期に一軍の助けとなってくれる存在は現れるだろうか。ファームの公式戦では球団の未来を担う若手たちのみならず、今日を担う中堅やベテランたちに対しても注目する価値が大いにありそうだ。
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https://tv.pacificleague.jp/page/smp/service/
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