パ・リーグ6球団の共同出資会社であるパシフィックリーグマーケティング株式会社(PLM)がパ・リーグ各球団の職員に向け、11月末から新たな人材育成への取り組みを開始。「パ・リーグ ビジネススクール(PBS)」と名付けられたこの取り組みの第6回目の講師を務めたのはJリーグチェアマン・村井満氏であった。
サッカー界と野球界が人材育成に向けて共に歩む。その意義について村井チェアマンは「野球界と一緒にこのような場が持てることをうれしく思います。結構、画期的なことなのではと感じています。同じプロスポーツを日本の大きな産業に、そして日本をスポーツで牽引しようという志をお持ちの皆さんと協力することは非常に意味があると思います」と語った。
この日は約50人のパ・リーグ全球団の職員が参加し、その中には球団社長の姿もあった。業界内の交流、海外視察などの機会は増えてきているものの、今回はJリーグのトップから貴重な話を聞けるということもあり、各球団スタッフが何かを学ぼうと日本中から集まった。
Jリーグでは人材交流の活発化を狙う
村井氏がチェアマンを務めるJリーグは日本のプロスポーツ界では一足先に「Jリーグヒューマンキャピタル」を立ち上げ、2016年から「スポーツヒューマンキャピタル(SHC)」を新たに独立させた法人組織下で運営している。さまざまな業界からの受講生を受け入れ、サッカー界にとどまらない業界へと送り込むことで人材交流を活発化している。SHCでもスポーツ界、ビジネス界のトップランナーたちが外部講師として参加しており、PLMの根岸友喜代表取締役もそのうちの1人である。
プロ野球界はJリーグと組織的な違いがあるが、PBSは業界発展のための人材育成を重要視し、11月末から始動した。JリーグのSHCと根本的に違うのは、すでに球団で働いている人たちが受講生の対象者であることだ。ゲストスピーカーを受講生たちがアンケートでリクエストしていく流れも作っている。今後は業界全体の人材マネジメントに特化した新たな取り組みも新規事業として計画中だという。
人材を大切に。村井チェアマンが人材への投資を語る
今回の村井チェアマンはJリーグの事業戦略のことだけでなく、両リーグが目指す“人材の育成”についても様々な方向から触れた。自らのことを「初の門外漢チェアマン」と話した村井チェアマンは、現リクルートキャリア社長を務めた経験からも人材に対しての思いは人一倍強く、Jリーグが掲げる5つの要点の中にも経営人材の育成は含まれている。
組織内でもチェアマン発案での人材を大切にした取り組みが行われている。「今月のJリーグありがとう賞」では、スタッフ間で誰かが誰かにありがとうと伝える際にチェアマンを経由する。組織のトップが全社員と交わるのは物理的に難しいが、地道な活動を行いながらも日の当たりにくい職員の努力を知ることで人材を大切に扱うことを心がけている。
「地道に時間が掛かる人材への投資をやっていく以外に特効薬はない」。人事畑を歩んできた村井チェアマンだからこそ、その言葉の重要性が響き渡る。
このような取り組みにより、競技の垣根を超えた人材の交流が増えていくことでまた新たなアイディアや発想につながる。“人材”をキーワードに今後も両リーグの試みから生まれる新たな発展に期待したい。
記事提供: