心機一転を図った登録名変更から2年。かつて遊撃手として一世を風靡した男が、当時とは異なる立場で新たな自分を確立しつつある。オリックスの中島宏之内野手が、昨年、日本球界復帰後3年目のシーズンを終えた。埼玉西武時代ほどの派手さはなくとも、持ち前の柔軟なバッティングと勝負強さで、リーグ7位の打率.285を記録している。
兵庫県の伊丹北高校出身の中島選手。2000年ドラフトで西武(現・埼玉西武)から5位指名を受けると、松井稼頭央選手がメジャーリーグに挑戦した2004年にチャンスをつかむ。全133試合出場、144安打27本塁打90打点、打率.287という成績を残してチームの日本一に大きく貢献し、リーグを代表する「華のある」好打者として君臨した。
2012年オフに渡米。2014年のオフに日本球界に復帰してオリックスに入団したが、故障の影響もあって苦しい結果に終わってしまう。しかし、登録名を本名の「裕之」から「宏之」に変更した2016年が1つの転機となった。96試合の出場にとどまったが、夏場は打率3割超をマークし、最終的に91安打8本塁打47打点、打率.290という好成績。復活の兆しを見せる1年とした。
2017年も、6月以降はほぼ2割8分以上の打率をキープする安定した打棒を披露し、不振からの脱却を強く印象付ける。124試合123安打9本塁打49打点、打率.285という数字に埼玉西武時代ほどのインパクトはなくても、規定に到達した3割打者が2人だけというパ・リーグにあっては、非常に優秀な数字。かつてリーグ屈指のヒットメーカーとして鳴らした男の、復活ののろしと見ることもできるだろう。
相次ぐ故障の影響で、近年は一塁や三塁を守る機会も多い。渡米までに141個積み上げた盗塁もオリックス入団後は2個にとどまり、かつての「中島裕之」とは異なるスタイルで日々戦っている中島選手。だが、真摯にファンサービスへ取り組み、豊富な経験をチームに還元する「中島宏之」も、現在のオリックスにとっては大きな存在である。
若くして主力として活躍してきた中島選手が、これまで一軍で積み上げた安打数は1694。このまま活躍を続ければ、通算2000本の大台も決して非現実的な数字ではない。入団以来経験していないオリックスのAクラス入りに向け、今年も中島選手はそのプレーで、その背中で、チームを引っ張っていってくれるはずだ。
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