母国で豪速球を連発する元楽天ルーク・ファンミルの現在。彼が活躍するヨーロッパ最強クラブに迫る【前編】

パ・リーグ インサイト 大森雄貴

216cmの長身から投げ下ろされるストレートを武器に、元楽天のルーク・ファンミル投手は2017年シーズンを母国オランダのキュラソーネプチューンズでプレーした。

キュラソーネプチューンズは「欧州チャンピオンズカップ2017」で優勝を果たした欧州王者だ。オランダ国内でも抜群の強さを誇り、オランダ国内リーグ「フーフトクラッセ」でも、2013年から5年連続で優勝を果たしている。なぜ、キュラソーネプチューンズが急成長を遂げ、WBCで2大会連続ベスト4入りを果たしたのか、その理由を探るべく、現地に赴きインタビューを行った。

取材当日はオランダシリーズ第1戦(日本でいう日本シリーズ)であった。本拠地ネプチューンズ・ファミリースタディオンにて、現役時代はAAAでも活躍し、2016年まで監督を務めたのち、現在はU18のアカデミー育成を担当するEvert-Jan‘s Hoen氏(以下:エバート氏)にインタビューを行った。

ヨーロッパのクラブは、各球団がアカデミーを所有し、選手を育成。ネプチューンズも例外ではなく、基本的にはアカデミー出身の選手で構成されている。過去には「ミスター独立リーグ」根鈴雄次氏も在籍するなど、多少の外国人選手も在籍している。

エバート氏に外国人選手の獲得方針について尋ねると「過去には現地にスカウトを派遣していることもあったが、お金もかかるし、近年では、ネット上でも公開されているようなスタッツ(成績)を分析し、重視している」と語り、「現代ではOPSなどのスタッツを見れば、その選手がどの程度活躍できるかは把握できる。その方が人件費も削げるし、ヨーロッパやアメリカ、日本はスタッツをまとめてくれるサイトさえあるため便利」と続けた。

キュラソーネプチューンズは、キュラソーに本拠地を置くグッド・インテンション・ファウンデーション社と命名権契約を交わしており、それ以外にも大会の優勝賞金などを多く手にしているため、フーフトクラッセの中では「お金持ち球団」の部類に入る。そんな球団の選手との契約事情などについて、現状を尋ねてみた。

プロ野球選手はチーム在籍全体の19人中7人。非プロ野球選手(12名)は消防士、自営業などでの稼ぎを主とし、プロ契約を目指している。プロ野球選手7人を含むフーフトクラッセに属する全プロ選手はオランダオリンピック協会から給与が支払われている、いわば「国家公務員」である。内訳として、26歳までの給与は一律支給、26歳以降は年齢給が支払われるシステムになっている。加えて、各所属チームによる、成績によった「インセンティブ」や個人スポンサーからのサラリーが支払われる。ファンミル投手も当然、リーグを代表するプロ選手である。

5連覇を果たしているキュラソーネプチューンズの強さに迫るべく、エバートに練習内容やシーズンの日程を尋ねると、次のような答えが返ってきた。

「オランダ内は年間として気温が低いため、なかなかシートノック等をすることが難しく、打撃練習やトレーニングが中心の練習となる。1月に選手が集合し、筋力トレーニングを中心に始動。2月はキャンプで技術的練習を行い、3月に実践練習を開始する。4月からフーフトクラッセは始まるが、欧州チャンピオンズカップが4月後半よりスタートするため、うまくローテーションさせ、選手起用を考えなければならない。シーズンが終わる10月以降は練習及びセレクションを行い、11月よりオフシーズンとなる」

さらに、シーズン中の日程については「リーグ戦が主に木曜日、土曜日と日曜日(金曜日は予備日)に行われるため、月曜日がオフで、練習は火曜日のみとなっている。他国とは異なる特筆すべきこととしては、毎週水曜日にオランダ代表チームのナショナル練習デーを設けていて、適宜選ばれた選手を派遣する」というから驚きだ。

毎週水曜日にリーグ戦を止めてまで代表の練習を行う。このような結束やルールが、国際大会で毎回のように上位に名を連ねる代表チームの強さの秘訣なのかもしれない。


母国で豪速球を連発する元楽天ルーク・ファンミルの現在。オランダトップリーグ「フーフトクラッセ」に迫る【後編】に続く

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パ・リーグ インサイト 大森雄貴

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